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左京、先祖に諭される
御徒町一族は光源氏の君の血を引く由緒正しき家柄で、美人揃いでもあります。
その夜、またしても左京は順番を無視して、司の部屋に行きました。
(左京様……)
事情を知っている龍子は悔しいより先に悲しさがこみ上げてきて、涙を流していました。
(父上、どうか左京様をお救いくだされ)
龍子は亡き父である明石入道に祈りました。
左京は、また司の操る式神と交わっています。
更に痩せ衰えていく左京を見て、司はニヤリとしました。
(もう長くはない。父上様のご無念、今少しで晴らせます)
司のおぞましい策略とも知らず、そして自分が抱いているのが式神とも知らず、痩せ細った左京は至福の時を感じていました。
『左京、何を血迷うておるのだ? 其方の抱いているは式神ぞ』
以前、左京に道を示した亡き祖父の世京の霊が現れ、左京を諭しました。
しかし、左京には聞こえていません。
世京は悲しそうな顔で消えました。