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抜け出せない左京
御徒町一族は光源氏の君の血を引く由緒正しき家柄で、美人揃いでもあります。
樹里の不甲斐ない夫の左京は、亡き後黒河院の末姫の司の陰謀により、彼女の式神と交わり、生気を吸い取られています。
樹里の母親である由里はその事を突き止めましたが、どうする事もできません。
「左京ちゃん自身が気づいて、式神との交わりをやめるしか、助かる方法はないわ」
由里は深刻な顔で樹里に告げました。
「そうなんですか」
左京が司を側室に決める事を聞いてから、樹里はずっと笑顔半開でしたが、今度は真顔全開です。
樹里の顔から笑顔が消失したのを見て、侍女の茜と紅母娘は驚愕しました。
「左京ちゃん、酷くやつれてしまってもう長くないと思うから、瑠里と冴里に戻るように言って」
由里が茜に言いました。
「はい……」
つらい役目を言い渡され、茜は喜色満面になりました。
「そんな訳ないでしょ!」
感情を捏造した地の文に切れる茜です。