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司の企み
御徒町一族は光源氏の君の血を引く由緒正しき家柄で、美女揃いでもあります。
実は左京を亡き父である後黒河院の仇と思っている司は左京を亡き者にしようと考えていました。
早く亡き者にしてくれないかと思っている地の文ですが、この声は左京には聞こえていません。
「私は早く左京様の御子を産みとう存じます」
俯き加減で微笑み、司が告げると、左京は有頂天になってしまいました。
(この女子に私の子を産んでもらえたら……)
左京はどんどん司に取り込まれています。
(お香の力が味方してくれている)
司は部屋の中を香の煙で満たしました。それもまた、左京を陥れるためです。
「お情けをくださいませ」
司が言いました。
「うむ」
左京は虚ろな目で応じ、衣を脱ぎ捨てました。
司はそんな左京を蔑んだ目で見て、袂から呪符を取り出しました。
(其方は式神と交われ)
司は狡猾な笑みを浮かべました。