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左京、動く
御徒町一族は光源氏の君の血を引く由緒正しき家柄で、美女揃いです。
大村の御息所が激怒しているのを伝え聞いた左京は、
(樹里様に危害が及ばぬようにしよう)
側室の一件で樹里に負担をかけていると思い、御息所に会う事にしました。
ところが、
「御方様は左府様にはお会いにならないそうです」
侍女の美咲が気まずそうな顔で告げました。
「そうなんですか」
思わず樹里の口癖で応じてしまう左京です。
(こうなったら致し方なし)
左京は意を決して先の関白である藤原道典に会いに行きました。
「お久しぶりにございます」
左京は会うなり、深々と頭を下げました。すると道典は苦笑いして、
「私は今は無位無官です。顔をお上げくだされ」
左京は道典の言葉にハッとしました。
「お義母上の事ですね?」
道典も御息所の事は聞いていました。
「私が説き伏せますので、お案じなさいますな」
道典が言ったので、左京はホッとしました。