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太政大臣、麻耶と約束する
御徒町一族は光源氏の君の血を引く由緒正しき家柄で、美人揃いです。
愛娘の麻耶の剣幕に気圧された太政大臣は、
「わかった、わかった。左京には何をおいても麻耶を先にするように命じておく故」
「ありがとうございます、父上」
麻耶は鬼の形相から菩薩様のような笑顔になりました。
(女子は恐ろしい)
顔を引きつらせて思う太政大臣です。
その頃、左京は仕事部屋に龍子に押しかけられていました。
「な、何かな?」
顔を引きつらせて左京が尋ねると、龍子は微笑んで、
「司様より私を先にご寵愛くださりますようお願い申し上げます」
でも目が笑っていないのを瞬時に見抜いた左京は、
「もちろんだ。其方は一番の女子であるからな」
明らかに見え透いたお世辞を言いました。
「や、やめろ!」
真実を直視した地の文の発言に非常に動揺して切れる左京です。
「ありがとうございます」
龍子は頭を下げてニヤリとしました。