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麻耶、激怒する
御徒町一族は光源氏の君の血を引く由緒正しき家柄で、美人揃いでもあります。
太政大臣は大急ぎで樹里の邸に行きました。
驚いたのは、使用人達です。
「そうなんですか」
それにも関わらず、樹里は笑顔全開で出迎えました。
「樹里殿、麻耶は息災かな?」
顔を引きつらせて尋ねる太政大臣です。
「父上にはご機嫌麗しく」
樹里が答えるよりも早く、暗い表情の麻耶が登場しました。
「ひっ!」
思わず悲鳴をあげてしまう太政大臣です。
「麻耶、親子水入らずで話そうか」
太政大臣は麻耶を引っ張って彼女の部屋へ急ぎました。
「父上、一体どういうおつもりです!?」
部屋に入るなり、麻耶は鬼の形相で父を問い質しました。
「そのな……」
言い訳をしようとする太政大臣ですが、麻耶は、
「あのような幼い子を左京様に押し付けるなど、酷いではありませぬか!」
聞く耳を持つ状態ではありません。
「私は父上を許しませぬ!」
麻耶の凄まじい剣幕に二の句が継げない太政大臣です。