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思わぬ伏兵
御徒町一族は美人揃いで、光源氏の君の血を引く由緒正しき家柄です。
敵と思われる相手を陥落させた吏津玖は、意気揚々と瑠里の部屋に向かいました。
「瑠里しゃま、お邪魔するにゃん」
ニヤリとして告げる吏津玖です。
「どうぞ」
何も警戒している様子がない瑠里が応じました。
笑いを堪えながら部屋に入る吏津玖ですが、そこに思わぬ伏兵が待っているのに気づきました。
「にゃあ」
瑠里の膝の上で気持ちよさそうに眠っている三毛猫。
それは樹里から授かった遊麻でした。
(あわわ……)
尋常ではない量の汗が噴き出す吏津玖です。
(まずいにゃん、まずいにゃん、遊麻に知られたら……)
前世の記憶がつい昨日の事のように思い出される吏津玖は、
「ひい!」
悲鳴をあげてしまいました。
「にゃお?」
その声に反応して、遊麻が目を覚ましました。
「にゃあおん」
嬉しそうに吏津玖に駆けてきて擦り寄る遊麻です。
(計画は延期にゃん)
顔を引きつらせる吏津玖です。




