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悪と悪
御徒町一族は美人揃いで、光源氏の君の血を引く由緒正しき家柄です。
馨は元猫又の小者の提案を受け入れる事にしました。
「何度も言うけど、僕は小者じゃないにゃん!」
しつこい地の文に切れる吏津玖です。
(此奴、危うい病か?)
誰もいない方に向かって時々叫ぶ吏津玖を訝しそうに見る馨です。
貴方も同類だと思う地の文です。
「うるさい!」
咄嗟に地の文に叫んで、ハッとなる馨です。
「僕もあの一家にはいろいろと恨みがあるにゃん。力を合わせて、仕返しするにゃん」
まるで大村の御息所のような顔で告げる吏津玖です。
「また誰ぞ妾の悪口を言うておるようじゃが、気のせいぞえ!」
どこかで雄叫びを上げる御息所です。
「わかった。万事、頼んだぞ」
馨も負けないくらい悪い顔で応じました。
(また猫が悪い事をしようとしているのか。懲りないわね)
天井裏で見ていた茜がため息を吐きました。