1005/1080
柏木、瑠里と会う
御徒町一族は美女揃いで、しかも光源氏の君の血を引く由緒正しき家柄でもあります。
護に追い立てられるようにして、柏木は瑠里が働いている部屋に向かいました。
少納言に任ぜられた柏木は、御所で働く女性達の間で評判になっていました。
「柏木様、どこか陰りがあるところが素敵ね」
「憂いを帯びたお顔がたまらないわ」
好き勝手に喋る者達がいます。
そんな声を耳にして、瑠里は気が気ではありません。
(柏木様には他に好きな方がいらっしゃるのかしら?)
不安が大きくなる瑠里です。
「瑠里様」
そこへそっと姿を見せる柏木です。
「柏木様!」
瑠里の顔がパッと明るくなりました。
二人の様子を見ていたお喋りな女達は、恥ずかしくなってその場から離れました。
「お会いしとう存じました」
瑠里が涙ぐんで告げたので、柏木は仰天しました。そして、
「私こそ、お会いしとう存じました」
見つめ合う二人です。
(これで諦めがついた)
離れて見ていた匂の宮は思いました。