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柏木、匂の宮と会う
御徒町一族は美人揃いで、光源氏の君の血を引く由緒正しき家柄です。
翌日の事です。
参内した柏木は、匂の宮がいる部屋に行きました。
「柏木殿」
元気そうな友の顔を見て微笑む匂の宮です。
「ご迷惑をおかけしました」
お互いが相手にそう言ったので、顔を見合わせて苦笑いです。
「柏木殿」
匂の宮が真顔で言いました。柏木はハッとして匂の宮を見ました。
「瑠里様がお待ちです。早くお会いください」
その言葉に柏木は顔が綻びそうになりましたが、
「如何なる理由があろうとも、私は勝負に負けたのです。瑠里様にお会いすれば、未練が残ります」
「何を言っているのです? 瑠里様は貴方に会いたがっていらっしゃるのですよ?」
匂の宮は頑固な柏木に呆れて告げました。
「しかし……」
柏木が煮え切らない態度でいると、
「まだそのような事を申しているのか?」
護が顔を出しました。柏木はビクッとして、
「畏まりました」
慌てて部屋を出てきました。