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左京の君、樹里に恋焦がれる
いつの時代か定かではありませんが、帝にお仕えする者のなかでとりわけ美しい女性がいました。
名は御徒町の樹里。あの有名な光源氏の君の血を引く高貴な身分の美女です。
但し、ローラースケートはしません。
「今日こそ樹里姫にこの思いのたけを打ち明けて夫婦になってもらおう」
位も低く家も貧乏な貴族の左京の君は思いました。今回は晴れて人間の役で気合が入っています。
「嫌な記憶を呼び起こすな!」
左京の君は前世の話をした地の文に切れました。
「ああ、樹里姫……」
左京の君は樹里の美しい顔を妄想し、涎を垂らしました。
危険なので警察に通報しましょう。
「この時代に警察があるか!」
左京は時代考証を無視した地の文に切れました。
「どなたですか?」
邸の外が騒がしので、樹里の侍女であるはるなが出て来ました。
「わわ!」
つい逃げてしまう左京です。
「何だ、あの人?」
はるなは首を傾げました。