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裏庭に集まる無組生

『裏庭』


――裏庭に着いた瞬間に空気が重くなったのを感じた

周りを見てみると、そこにいたのはかつて自分が出会って、苦労してきた人物ばかり…

それを見て纏めるのが大変そうだと頭を抱えそうになった時、後ろから近付く気配に気付き刺死は溜め息を吐く


「……また、追いかけてきたのか‥? 殺音。」


その言葉を聞き、後ろから近付いていた殺音は一度止まり、そして顔に笑みを浮かべながらゆっくりと刺死に近付く


「…やぁ、刺死……当然だね、僕は何時でも君を追いかけるよ! 僕が君を愛している限り、君が僕を拒絶しなくなるまで。」


まるで愛しい者へ愛の告白をするような口調で殺音は(うそぶ)


殺音の意図に気付いているが、刺死は気付いていないふりをして彼と話を続ける


「…そうか……聞く必要も無いだろうが殺音も無組なのか?」


その言葉を聞いて、まるで悲劇だというように刺死の手を握り、両目から涙を流す


「…もちろん、そうに決まってるよ! 刺死と同じ学校なのにクラスが違うなんて…」


そこまで言うと、急に目を細くさせ低い声で殺音は告げた


「そこまで僕は甘くない。」


殺音の目から出された痛いほどの殺気に刺死はさも当然だと言わんばかりに口元を上げ、笑う


そして強くなる彼の殺気に笑みを消し、無表情で答える


「…分かった。殺音には他に用はない。‥話しかけないように。」


殺気に全く動じない刺死に苛立ちながら、殺音は拗ねたような表情で握っていた手を離し数歩下がる


「‥酷いなー、刺死は」


そして拗ねたような表情から満面の笑みに変え


「……まぁ、そこが好きなんだけどね!」


と笑いながら体育館の方に足を進める


その、見方を変えれば『お前が嫌いだ』ともとれる発言に溜め息をつきながら、隙を見せたら危ないな…と思い更に頭を抱えそうになるのを堪えて殺音に話しかける


「…先に体育館に行け、殺音。」


刺死の面倒そうな顔を見て満足したのか、殺音は素直に背を向けて再び歩き出す


「…うん、そうするよ。君に気に入って欲しいからね。‥じゃあ、後で。」


何時になったらあいつは離れてくれるんだと考えながら近くで体育館に向かっていく殺音を睨むように見ている少女に話しかける


「‥緑。お前も来てくれたのか? ……それとも、偶然か?」


その声を聞いて、嬉しそうに笑いながら刺死の方を向く


「…美姫。また、会えるとは思っていなかったよ‥久しぶり。」


その意外な言葉に一瞬驚きながらも刺死は緑に近付く


「……何だ、偶然なのか?」


刺死が近くにきてくれたことに嬉しそうな笑みを深めながらその問いを否定する


「…いや、違う。ここの理事長にこの学校に転入を勧められていた時に美姫の名前があったから、入ろうと思ったんだ」


そして、手を差し出し真面目な表情で


「‥これからもよろしく、美姫。」


と言った


言われ慣れないその言葉に何と返そうか迷いながら、結局彼女と同じ言葉を緑に返す


「…よろしく‥。」


いつもと違って、少し俯きながら言ったことに違和感を覚えた緑は、刺死の目線に合わせるように目を覗き込み、心配そうに聞く


「……どうかした? ‥美姫、さっきいたのって美姫の兄だよね? まさか…蹴られたとか殴られたとかそう言う事で?」


目に怒りを浮かべながら殺音を追いかけていこうとする緑の肩を持ち止めて、納得させるために嘘をつく


「…いや、違う‥ちょっと珍しく目眩がしただけだから気にしなくていいよ。」


その言葉が嘘だと緑は気付いていたが、殺音を庇ってるわけではないと判断し溜め息をつきながら笑顔で体育館の方に足を進める


「………なら、良いけど…。じゃあ、体育館に行ってるね。」


でもとりあえずあいつは殴っておこうと密かに殺音への考えを隠しながら緑は走っていった


「‥あぁ、後で。」


そんな緑の思考には気付かずに、刺死は緑が自分を心配してくれた時に感じた嬉しいと思うような感情に戸惑っていた


そして後ろから聞こえる騒がしい声に目を向けてそこにいた少年達に微笑む


「‥優月、加月。……中学生だったよな‥? 何してる?」


言葉遣いとは裏腹にとても優しい声色をした刺死の声に、二人は刺死の存在に気付く


薄い茶色の髪をした優しそうな少年――優月が刺死に近付いてくる


「‥! 刺死お姉ちゃん!!」


そしてそんな弟の行動に気付いた、焦げ茶色の髪をした優月によく似た少年――加月も刺死の側にやってくる


「…久しぶりだねっ! ……あれっ? 知らないの?」


兄の口調に少し怯えながら優月は刺死に教える


「…ここの学校には中等部があるんだよ!!」


その表情に複雑そうな顔をしながら刺死は優月の頭を撫でる


「…そうか。……中等部には無組ってあるのか?」


いきなり撫でられたことに驚きながらも嬉しそうに笑い、説明をする


「‥!……うん、ちょっと名前が違うけど、僕達がいるクラスの『害察組ガイサツクラス』の優秀成績の生徒が無組‥別名『破壊学級』の代表生徒による試験を受けて、より優秀だと思った生徒を無組に入れることになってるんだ!」


弟の様子に、面白くなさそうな顔をしながら刺死を見て、わざとらしいくらいに笑顔で足りない説明を加える


「…と言っても気に入った生徒がいなければ誰も入れないんだけどねっ!!」


二人の様子を見た刺死は、これ以上優月と話していたら面倒なことになりそうだと考え、優月の頭から手を離す


「……そうか、なら後でまた会おうな。」


手が離れたことに少し寂しそうな顔をしながら笑って優月が手を振る


「うん、また後でね!!」


そんな弟に我慢が出来なくなったのか、加月は優月の手を半ば強引に引っ張り笑顔で刺死に


「…刺死お姉ちゃんも頑張ってねっ!」


と言い、立ち去る


おそらく加月は無組に合格するな…と何となく思いながら、隅の方でずっと殺音が行った方ばかり見ている知らない男に話しかける



「……おい‥光の名前は?」


想定していたかのように刺死の方を向き、男は話し出す


「…殺音君の妹さんですね? 僕は、魔界・桜子と言います。覚えて下さいね。僕は殺音君の影何ですから。」


あの殺音が気に入るような人間がいたことに驚きながら彼を観察する


「…殺音が影にした人物か‥かなり強いんだろうな…?」


その言葉に男は目を細めながら肩を竦めるような仕草をしてみせる


「‥それなりに強いと思いますが、殺音君には敵いませんね。…きっと、あなたもそうですね。」


その少し警戒を見せる動きに殺音から自分のことを聞いていると確信しながら、刺死は彼に頼む


「……殺音の影なら、なるべく殺音を支えてくれ‥。精神的には弱い奴だからな。」


彼は予想もしていなかったその言葉に一瞬目を見開き、そして僅かに微笑む


「…分かりました。‥でも、意外ですね、あなたが殺音君を心配するとは。」


それでも僅かに不審な者を見るような目で刺死に聞く


「………死をどういうように見ているかは知らないが、殺音はあれでも死の兄だからな‥とりあえず多少は気にするだろう。」


間違った認識を植え付けられていると思いながら兄について話をし、そしてそれを聞く彼の表情から彼はちゃんと信用出来る人物であると判断した刺死は目線を彼と合わせ、微笑んで手を差し出した


「……あと、死は刺死と言う。よろしく、桜子。」


その好意的な顔に殺音と似たものを感じた桜子は彼女と同じように微笑み、刺死の手を握った


「…そうですか‥フッ……刺死ちゃんとも仲良くなれそうですね‥よろしくお願いします。」


そして手を離し、他の生徒に声をかけるため少し後ろに下がり、桜子に告げる


「…じゃあな‥体育館で待っててくれ…。」


「…はい、また今度。」


それに微笑み、お辞儀をしてから体育館に向かった桜子を見ながら殺音とバランスが良い人が影になったと少し嬉しく思い微笑みながら周りを見渡す


そして見つけたわざとらしいくらいの満面の笑みを浮かべ、体育館の方を見つめながら片手で髪を弄っている黒髪の美少女に近付き声をかける


「…舞花ちゃん。………また会ったな」


その声に髪を弄っていた手を下ろし、驚いたような表情で舞花は刺死の方を向く


「…あっ!刺死ちゃんっ!また会えるなんて、舞花…運が良いのかな~?」


わざとらしいほどにハキハキ喋りながら刺死に近付き両手で刺死の両手を掴む舞花に頬が引き攣りそうになるのを堪え、返事をする


「…また、強くなったみたいだな…殺音からまだ逃げ続けていたのか…?」


それを聞くと両手を離し、口元だけで笑いながら髪を耳にかける


「…うん!当たり前にそうだよっ!……というか、殺音君…しつこいよね~」


言葉と目付きが全く違う舞花に一瞬背中に走った悪寒に気付きながらも刺死は気付かないフリをして少し下を見る


「………」


そんな刺死の変化に気付いた舞花は顔に満面の笑みを浮かべ刺死にもう一度近付き、刺死の顔を覗き込む


「……?あれっ?どうしたの~?何か変なこと言ったかな~」


そして目だけではなく口元からも笑みを消し、舞花は刺死と目線を合わせる


「それとも…弱くなったのかな、刺死ちゃん?」


その痛いほどの殺気に、殺音から感じたものにちかいものを感じながら口元に笑みを浮かべ、話しかける


「……性格に変化は無い様だな…今度は影になる気はあるのか?」


そう言うと舞花は再び満面の笑みを浮かべ一歩後ろに下がる


「…うん、今回から…舞花は刺死ちゃんの影として毎日を過ごそうって決めてるからよろしくねっ」


そして体育館の方を向き、顔だけ刺死の方に向け一瞬目を細めてから笑い、刺死に話しかけながら歩き出す


「………じゃあ、後でね~」


何でこんなに問題ばかりのメンバーを集めたのかと考えながら、少し先でこちらを見ている懐かしい少年に近付く


「…誓斗。……殺音にでも連れて来られたか?」



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