9月3日/沙耶eyes 私に出来ること
ー君の魂に抱かれてー(きみのこころにだかれて)
この作品はフィクションです。
登場する人物・団体・地名・事件・世界設定などは全て架空の物であり、
実際の物とは一切関係ありません。
初めて読む方は、本編からご覧ください。
ーboy and girls' aspectsとは?ー
このモードは主人公の視点ではなく、
君の魂に抱かれての主人公以外の登場人物の視点です。
これにより、より世界観がわかりやすくなります。
※目次の場合、下に行くほど時間が最新です。
9話 この世界の真意~
「幸運あれ!」
私は道路を右に曲がり、
戦場へ駆け抜けて行った。
仲間の無事を心から祈った。
中沢くんは『異能』を持っている。
その能力は結界を生じさせることができる。
私も聞いたことがない能力だ。
中沢くんにはその能力がある
その結界を生じれば、仲間の安全は確保できる。
これで私も、心置きなく戦える。
爆発音がした。
ということは、状況は悪い。
急がなければ――!
私はその場まで駆け抜ける。
◇◆◇◆◇◆◇◇◆◇◆◇◆◇
「こ、これは……」
その場に着いたが、状況は最悪だった。
建物は崩壊し、この場は炎に包まれていた。
異常なまでに燃えている。
炎で先が見えない。
爆弾を使ってもこうまではならない。
「自動車を爆発させたのか……」
なんらかの方法で自動車を爆発させた。
自動車にはガソリンが入っている。
その自動車が爆発すれば、凄まじい威力を持つ。
その爆発により、次々と引火し周りは火の海になったのだ。
「間に合わなかったか……」
先ほどまでは戦闘が行われていたのだろうか?
それすらも分からない状況。
この先に進むことすら出来ない。
確かめることすら出来ない。
私はゆっくりと炎へ近づく。
眼が焼ける程、激しく音を立てて燃えていた。
火の粉が顔を掠める。
『ドカ―――――ンッ!!!!!』
この炎の中で、再びなにかに引火し爆発を起こす。
爆風で私の髪がなびいた。そして、さらに火の粉の勢いは増す。
私には視ることしか出来ない。
中にまだ人がいるかもしれない。
なのに、私は立ち荒むだけ。
私は腰に差してある一振、
『三日月宗近』を視る。
この刀なら、この炎を打破できるかもしれない。
私は空を見上げる。
まだ、明るい景色。
この刀に必要な‘月明かり’はない。
「……………」
私はいつも刀に頼っている……。
現に今がそうだ。"月明かり"がない以上、三日月宗近の力は発揮できない。
私は刀がなければなにも出来ない。
それが、『桜夜 沙耶』という人物だ。
この三振の刀のお陰で、今を生きている。
「考えるんだ……"桜夜 沙耶"にできることを……」
何故だ……何故なにも思いつかない……。
周りは炎。
この炎を消す術は"私"にはないのか……?
「雷切……力を貸してくれ」
千鳥の柄を握り、鞘から抜く。
私はまた、刀に頼る。
「千鳥に宿われし雷魂よ、再び、生ずことを請う」
呪を唱えた瞬間、千鳥の刃に電気が走った。
「今、此処に雷魂を開放する」
『ゴロロロロロロロッ!!!!!』
激しく音を立てて帯電し、表面は剥離する。
「我が剣よ請え。全ての雷魂を飲み込み、正法を生じよ」
その呪に雷切が反応し、更に帯電を増す。
「雷神正法。雷光!」
ブンッと全力で雷切を左から右へ振る。
『ゴロロロロロロロッ!!!!!』
雷切を振った瞬間、雷切の刃から電撃が溢れる。
閃光のような電撃が障壁と化して、私の眼の前全てに広がる。
『ゴロロロロロロロッ!!!!!』
炎と雷魂がぶつかり合い、周囲の空間ごと震えるような大爆響音。
残響が消えるのと同時に、巻き上がった土埃が落ちていく……。
「…………」
雷切によって生み出した雷障壁が、炎を消滅させた。
また、刀の力に頼った。いつもそうだ……。"桜夜 沙耶"は何もしていない。
"桜夜 沙耶"はただ立ち頻くだけだった。