9月3日/侑eyes 自転車狩り実行
ー君の魂に抱かれてー(きみのこころにだかれて)
この作品はフィクションです。
登場する人物・団体・地名・事件・世界設定などは全て架空の物であり、
実際の物とは一切関係ありません。
初めて読む方は、本編からご覧ください。
ーboy and girls' aspectsとは?ー
このモードは主人公の視点ではなく、
君の魂に抱かれての主人公以外の登場人物の視点です。
これにより、より世界観がわかりやすくなります。
※目次の場合、下に行くほど時間が最新です。
遂に、自転車狩りが実行へと移された。
自転車狩りのリミットは、早く桜凛市から出れること。
デメリットは目立って攻撃の的になること。
だが、どんな状況だって良い点と悪い点は付き物だ。
どんなことだってメリットもあれば、デメリットもある。
メリットだけってのはありえない。
◇◆◇◆◇◆◇◇◆◇◆◇◆◇
てな訳で、ようやく忌々しい森から脱出できた。
蒼生先輩のお陰で。
「太陽が眩しいぜ!」
聖夜は右手をおでこに当て、
光を遮る。
「うわぁ~と、溶けるぅ~」
いくらなんでも、溶けはしない。
奏笑は両手で太陽の光を遮断している。
「さぁ!光合成でも始めるか!」
聖夜が人外なことを言い始める。
「こ、光合成!?」
あまりのバカっぷりに菜月は驚愕する。
「おおよ!」
聖夜は逞しく意思を表し、深呼吸を始める。
見た目はただの呼吸だ。
いや、実は二酸化炭素を吸って酸素を出しているのか?
「まぁ、光合成に必要な条件は揃っている。あとは聖夜に葉緑体があればな……」
蒼生先輩は恐ろしいことをいう。
まぁ、確かに葉緑体があれば聖夜の身体は緑色のはず。
……。……。……。
想像するだけで気持ち悪い。
緑色だったら、全身の血が抜かれたみたいじゃん……。
「遊んでないで行くぞ!」
粢先輩を先頭に歩き始める。
これが、一番の不安材料だ。
蒼生先輩の方がいいんじゃないか……?
……。……。……。
此処は郊外のようだ。
あまり家がない。
いってみれば、田舎のような感じだ。
俺達はいつのまにかこんなに歩いたのだろうか……。
「随分田舎じゃない?」
緋咲と同感だ……。俺も思った……。
こんな所に自転車があったら逆に不自然だ。
「いいじゃないか、趣があって」
粢先輩は完璧に風景を楽しんでいる。
俺達が来たのは風景を楽しむ為じゃない。
「粢先輩、俺達は自転車を狩りに来たんですよ」
目的はあくまで自転車。
だが、たしかにここは趣がある。
戦闘なんて起こらなそうな所だ。
唐突に、先輩は歩みを止めた。
それに伴い、俺達も歩みを止める
「…………」
そして、粢先輩は黙して一点を見つめている。
不安が脳内に過ぎった。
ま、まさか敵っ!?
「どうしたんですか?」
不思議に思った俺は粢先輩に問いかける。
「あれ、自転車じゃないか?」
『えっ!?』
全員驚愕の声を上げる。
俺達は粢先輩が見つめていた一点を見つめる。
100mぐらいあったが、確かに自転車ぽかった。
「おいおい……マジかよ……何なんだよこの世界は……。銃で撃たれるは、自転車は不自然に置いてあるは……」
聖夜は両腕を組みながら、文句を垂らす。
俺にも分からない……。
こんな田舎に自転車はミスマッチだ。
「善は急げ―――――!!!!」
粢先輩が誰よりも速く駆け出す!
これって善なのか……?
粢先輩は疾走し、自転車の方へ……。
「My going!!!!!Yeeeee―――――!!!!! 」
妙なことを言い残し、聖夜も走り出す。
「駆けっこなら負けないよ!」
何故か、闘心に火がついた菜月。
菜月も走り出す。
「菜月ちゃ~ん~!まって~~~~~!」
奏笑も菜月を追い、駆け出す
……。……。……。
「はぁ!ガキみたい……」
緋咲は嘲笑うように、腕を組み短く鼻で笑った。
結局ここに残っているのは、俺も入れて3人。
「自分が勝てないからって、自己満足な言い訳をするんじゃない」
蒼生先輩が緋咲を挑発する。
「な、なんだって……!!」
即座に緋咲も対抗する。
「ああ、いいんだぞ。無理に走らないで。どうせお前は、あいつらには勝てない」
『ブチッ!』
音は聞こえないが、完璧に緋咲の心に火がついた。
「……やってやろうじゃない……!!見てろよ―――――!!!!!」
緋咲も猛スピードで走り出す。
見事に緋咲を乗せた蒼生先輩。
お見事。
「俺達はゆっくりと大地を踏もう!」
「そうですね……」
俺と蒼生先輩はゆっくり歩きながら、
その場へ向かった。
◇◆◇◆◇◆◇◇◆◇◆◇◆◇
当然だが、俺達が最後に付いた。
俺は置いてある自転車を凝視する。
「ひとつ、ふたつ、みっつ、よっつ、いつつ、むっつ、ななつ……?」
自転車は綺麗に七台綺麗に並べてあった。
しかも、見る限り全て新品。
「あまりにも不気味すぎないか?」
蒼生先輩は警戒を始める。
此処までくると、なにか『仕掛け』があるとしか思えない。
しかも、自転車の近くに看板が立ってある。
「看板……?」
蒼生先輩は看板へと近づく。
この看板は決して、大きいものではなく、
地面に刺さっている看板だ。
「えっと……」
蒼生先輩は看板の文字を読み始める。
『諸君!今までご苦労だった!
そんな君達にご褒美を送ろう。
せいぜいこれで頑張るといい!
さらばだ! by朝倉』
……。……。……。
はぁ?
「おのれ!朝倉の差し金か!?」
蒼生先輩は声を張り上げる。
朝倉?
朝倉という人物がこれを……?
「朝倉ってあの戦術科のか?」
朝倉という言葉に、粢先輩も反応する。
戦術科!?
ってことは、桜凛武装高校の生徒なのか?
「ああ、あの朝倉だ……」
何故か蒼生先輩の拳はブルブルと震えていた。
あの朝倉っていってわれても、どの朝倉か分からない。
「アイツのことだ!またろくでもない事でも考えているんだろう!」
『チャリンチャリン』
蒼生先輩の言葉を横目に、独特なあの自転車の音が響き渡った。
「よし!行くぞ!」
既に粢先輩は自転車に跨っていた。
「おい!これは罠かもしれないんだぞ!」
そんな蒼生先輩の言葉も聞かず、先輩は走り始める。
「Good bye!!」
妙な事を言い残し、聖夜も自転車で去っていく。
よっし、俺も行くか。
俺は自転車の方へ行く。
「残念だな……君だけはまともな人間かと信じていたのに……」
「俺って結構まともじゃないですよ」
見事に自転車狩りは成功した……?
後は、桜凛市から出るだけだ。
俺達『ファーセストクンパニアン』は自転車を手に入れ、桜凛市からの脱出を目指した。