4話-(1) 確信
ー君の魂に抱かれてー(きみのこころにだかれて)
この作品はフィクションです。
登場する人物・団体・地名・事件・世界設定などは全て架空の物であり、
実際の物とは一切関係ありません。
「君の魂に抱かれて」は本編とboy and girls' aspects
で構成されています。
初めて読む方は、本編からご覧ください。
ー9月2日ー
俺達は異世界でその日を迎えた。
原因不明の異世界。
いつ死んでもおかしくない。
人間が殺し合っている異世界に今、俺達はいる。
昨日のことが夢であると信じたい。
此処が現実世界であると信じたい。
が、此処は異世界。
俺達は一晩をこの林が広がっている広場で過ごした。
「う……ん……」
俺は眼を開けた。
いつの間にか寝てしまっていた。
俺は周りを見渡した。
そこには美唯が死んだように寝ている。
寝てるというか、気絶の方が近いかもしれない。
起こした方がいいかもな……。
「美唯!朝だぞ!」
美唯の肩を揺らす。
「…………」
だが美唯は無反応。
本当に死んでいるんじゃないか!?
焦りのあまり、俺は強く肩を揺らしてみる。
「美唯ッ!!起きろッ!!」
俺は大音響で叫ぶ。
「……うにゅ……?」
ようやく反応があった。
良かった。生きてた。
「起きろッ!」
美唯は二度寝をよくする。
だから、身体が起き上がるまで、起こさなければならい。
「うぅ……」
美唯が声を漏らしながら起きる。
なんだか、その表情からするに心痛しているようだった。
「おはよおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ……」
かなり眠そうだ。
『ぉ』がかすれていて、かなり長くのばしている。
しかも未だに伸ばしている。
まぁ、仕方ないな。こんな世界なんだから。
「おはよう!!」
俺は爽やかに挨拶をする。
美唯はまだ覚醒していない。
後は桜夜先輩か……。
あの人は起きているのだろうか?
案外、朝に弱い性質かもしれない。
ぞくにいう、低血圧だ。
俺は朝は滅法強い。
前世は何だったんだろうか?
俺は周りを見渡す。
あ、いた。
どうやら、起きているようだ
何をしているのだろう?
気になった俺は、先輩の方へ駆け寄る。
そして先輩は振り返って……。
「ハァッ!!!」
先輩の気迫に満ちた声が俺の耳へ届く。
しかも、その声と共に俺の目の前に光り輝く物が接近してくる――!
いや、これは刀だ――!
「うわぁぁあああああああああッ!?」
いきなり刀を首目掛けて切りつけてきた。
この瞬間、俺の人生の最期を悟った……。
やっぱり、昨日の先輩は全て演技だったのか……。
俺達はまんまと騙されていたのか……。
全ては……俺達を……。愉しんで殺すため……。
まさか最期は首を切断されるとはな……。
想像もしていなかった、クライマックスだ……。
美唯……逃げろ……。
俺は首を切断されるから声が出ないはず。つまり叫ぶことは出来ない。
こんな俺を赦してくれ……美唯……。
が、刀は皮膚に触れず止まった。
「何だ君か?驚かさないでくれ」
先輩が刀を首もとから離す。
一歩間違ええれば、首は切断されていた所だった。
先輩の判断力は恐ろしいものだ。
「いや……俺の方が驚きましたけど……」
お陰で目が覚めた。
覚めたってもんじゃない。
朝の目覚めとしては強烈過ぎる……。
「そうなのか?君はこういうのには慣れていないのかね?」
こういうの……。
つまりは、他人に刃先を向けられること。
俺は今ので初体験だ。
「あたりまえですよ!」
俺は普通の高校生。
刃物を向けられるような日常は送ってない。
それが普通の学生。
の、はず……。
「桜夜先輩は慣れているんですか?」
恐ろしい質問だが、聞いてみる。
「ああ、毎日向けられているからな」
……。……。……。
うわぁぁ~~~!
何て危ない高校なんだよ……。
そんな高校に俺達は狙われているのか!?
これは話を変えよう。
「ところで先輩は何をしていたんですか?」
駆け寄るなら、刀を向けられたから、
何をしていたのか分からない。
「ああ、鍛錬だ」
……。……。……。
「ん?どうかしたかね?」
つい黙ってしまった。
鍛錬……?
「何で鍛錬なんか……」
考えてみれば、先輩は桜凛武装高校だったな……。
忘れてた……。
「日課だからだ」
日課……。
先輩は毎日鍛錬をしているのか……。
偉いな……。
「桜夜先輩~~~!おはようございます!」
美唯が小走りで駆け寄ってくる。
どうやら覚醒したようだ。
俺の方が遥かに覚醒してるけど。
「ああ、あはよう」
全員起きた。
全員って言っても3人か……。
で、これからが問題だ。
俺達はこれからどうすればいいんだ?
「これれからどうするんですか?桜夜先輩」
俺には検討が付かない。
なにからすればいいのか分からない。
「そうだな……。まぁ、座りたまえ」
先輩が腰を下ろした。
それに続き、俺たちも座った。
これからは重大な話し合いだ。
「これからどうするかだが……」
先輩が話し始めた。
先輩は既に、これからの行動を決めていたのだろうか?
「共にこの異世界から脱出しないか?」
共に脱出……!?
ってことは一緒に行動してくれるのか!?
俺の胸中で光が渦巻く。
「え!良いんですか!?」
夢のような言葉。
俺も早くこんな異世界からは出たい。
早くいつもの日常に戻りたい。
「ああ、もちろんだ」
先輩は笑顔を俺達に返した。
嘘なんかじゃない……。
俺達を騙してなんてもいない……。
先輩に対する信頼は、昨日の出来事で既に得ていた。
さっきので、ちょっと減ったけど……。
「でも、どうやって脱出するんですか?」
美唯が疑問を投げ出す。
それが一番の疑問。
俺は一般人だから、検討がつかない。
例えば、何かの条件を満たすとか……。
それぐらいしか思いつかない。
「それを共に探す」
共に探す……。
この人がいれば脱出できるんじゃないか……?
そう思えてしまう。
それほど、先輩の存在は大きい。
「では、まずは可能性のある所からだな」
先輩が立ち上がる。
俺も足手まといにはなりたくない。
頑張らないとな。
「はい!行きましょう」
美唯は威勢のいい声を上げる。
「よーしッ!!」
美唯も立ち上がった。
俺達は先輩の後に続く。
こうして、この異世界の脱出方法の探索が始まった。
◇◆◇◆◇◆◇◇◆◇◆◇◆◇
「どこに行くんですか?」
俺達は歩いている。
何処に行くかは知らない。
今いるところは、林の中。
「まず、この異世界のことを知らなくてはならない」
確かにそうだ。
何も知らなければ、何も出来ない。
……。……。……。
俺達は市街地に出た。
周りを見渡すが、誰もいない。
どうやら、桜凛武装生徒の生徒もいないようだ。
「とはいえ、まずはこの空腹をどうにかしなければな」
先輩は表情ではわからないが、相当お腹が減っているのだろう。
「そうですよね!お腹が減ってはなにも出来ませんからね!?」
美唯はとても嬉しそうだ。
お腹が減っているのだろう。
俺も減ってはいるが、耐えられないほどではない。
と、先輩の足が止まった。
「デパート……?」
着いたのはデパートだった。
駅前にある巨大なデパートだ。
ということは、此処は駅前……。
「…………」
桜夜先輩は正面入り口を見つめる。
「先客か……」
「え……?」
俺も正面入り口を見つめる。
入り口のガラスは割れていた。
誰かが侵入のために割ったのだろか?
「行くぞ」
先輩がその割れたガラスから入っていく。
「先輩!?大丈夫なんですか!?」
中には先客がいるかもしれない。
鉢合わせたら、戦闘は避けられない可能性もある。
「何、弱気でいるの!?行くよ潤ッ!!」
美唯も入っていく。
空腹が恐怖を勝ったのだろう。
なら、俺も行くしかない。
「俺も行くか……」
俺達も先輩に続き、キャンバスへ入っていった。