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2話-(1) この世界の中で

ー君の魂に抱かれてー(きみのこころにだかれて)


この作品はフィクションです。

登場する人物・団体・地名・事件・世界設定などは全て架空の物であり、

実際の物とは一切関係ありません。


「君の魂に抱かれて」は本編とboy and girls' aspects

で構成されています。

初めて読む方は、本編からご覧ください。



俺は何をしたのだろう?

そう自分に問いかけてみる。

だが、答えは返ってこない。


俺は……。

何かが変わってしまった世界の中で……。



「確かに変よっ!! 1この世界!!」


美唯は驚愕の声をあげる。

そう……なにかが変なんだ……この世界は……。


俺達は桜凛高校に向かって走っている。


走る意味は見つからないのだが、本能が『走ろ』と命令してくる。

あるいは直感。


ここは何処なんだろう――?


見た目は"まったく変わらない"

だが、此処は"静寂に包まれている"

考えてみると、こんなに走っているのに"人と一人も会わない"


此処まで異変が重なると、完全に今までの世界とは違うと考えてしまう。

だけど、そんなことはありえない。


「美唯!アレを見ろ!!」


俺は道路に人差し指をさす。

眼を疑うような、おかしいな光景だ。


「車が止まってるっ!?」


車が道路に停車していた。

あまりにも不自然に、駐車場でもない道路に。

車が停止している。


まるで、さっきまで走っていたように。


誰もいない光景に、人類の消滅を思わせられる。


運転手もいない。

その運転手は何処に消えてしまったのだろう?


「電力が使えないのかッ!?」


俺は咄嗟に思った。

ここまで来ると嫌でもそう思う。


――確かにこれなら辻褄が合う。


インタホンが"鳴らない"ことも、

テレビが"映らない"ことも、

携帯の"電源が入らない"ことも、


全て辻褄が合ってしまう。


だが、俺は信じたくはなかった。

いや、信じられなかった。


あまりにも常識離れしている出来事。

それを信じるというのは誰だって抵抗がある。


「電力が使えないッ!?」


美唯は驚愕の色を隠しきれないようだ。

俺達があたりまえのように使っている電気。

それが、この世界では絶たれているのか……?


誰だって信じ難いし驚愕する。こんな状況なら誰だって。


「ああ、インターホンが鳴らない、テレビも映らない、携帯の電源が入らない、その理由は電力が使えないからだ!!」


地域の停電とも考えられるが、これは明らかな間違い。

携帯の電源がつかないからだ。


「そんな事がありえるの!?」


俺の常識から導き出すには"ありえない"

俺達の"知っている世界"ではありえないだろう。


なら、これは夢なのか……?

いや、紛れもなく現実だ。

いや、現実だという証拠はどこにある?


自分の発想一つ一つで、頭が混沌する。


「わからない!俺にもさっぱり!」


一般人である俺には、考え難い出来事。

じゃぁ、これは幻想なのか?

いや、幻想ってなんだ?


「じゃぁ!何で人がいないの!?」


人がいない……。

俺はしばらく黙り込んでしまった。

この世界に俺と美唯しかいなっくなってしまったのか?

じゃぁ、他の皆は?

侑は?菜月は?聖夜は?


本当に人類は消滅したのか……?

俺達は唯一の人類の生き残り……なのか?


「とりあえず、学校に行こう!!この時間帯は絶対人はいる筈はずだ!」


先生方はこんな早い時間には帰らない。

あと、部活動の生徒もいるだろう。


「もしも、いなかたら!?」


いなかったら……。

それは、俺と美唯しかいないということになる。


「この状況を信じるしかないってことになる!」


「――ッ!?」


こんな状況を信じろっていうのか……?

"俺達以外の人間"はいない。

"電力も使えない"

こんな世界に俺と美唯は二人っきりなのか……?


ここは何処なんだろう?

 

その言葉を連発する。


音も無い世界。

不確かだらけな世界。

なにかがおかしい世界。


俺達は、そんな"世界に堕ちてしまった"のだろうか?


それとも、いつも通りの世界なんだろうか?

まだ、核心には至ってない。


だが、希望も立ち昇った。


「美唯!人がいるぞ!!」


学校が近くなると、桜凛高校の生徒が確かにこの世界に存在していた。


「人!?じゃぁ、この世界は私達だけじゃないってこと?」


暗い表情から一変し、美唯の顔がパッと明るくなる。


「そういうことになるっ!」


俺達だけじゃない……!!

やはり人と会わなかったのはただの偶然だったのだろうか?

いや、なら車が道路に停車しているはずが無い。

いや、きっとそれも偶然だ。

俺は自分に言い聞かせた。


俺はこの世界を認められないでいた。


「ハァ……ハァ……ハァ……」


俺達は息を整える。

そして、周りを見渡す。


「桜凛高校の生徒は存在している!!」


俺は高らかにそう叫んだ。

普通なら相当恥ずかしい事なんだろうが、

嬉しとい気持ちが、恥ずかしさを勝っていた。


「よかった……」


美唯は安息の息を漏らす。


生徒は普通通りに過ごしている。

だが、周りを見回している生徒もいる。


だけど、何かがおかしいっていうことは解決しない。

電力が使えないからだ。


「侑達のところに行こう!!」


桜凛高校の生徒はいる。

ということは侑達もいるといる。


「うんっ!」


俺達はいつもの待ち合わせの裏庭に行く。

そこはいつも静かだった。


俺の視野に侑達が見えた。


「侑ッ!!」


「菜月ッ!!」


「聖夜ッ!!」


俺達は声を大にして叫んだ。

やはり桜凛高校の生徒は存在している!!

俺は疾走して侑の所へ走る。


「おお!潤か?元気いいな」


「よぉッ!!」


「どうしたの美唯?そんなに慌てて……」


三人ともいる。これで一安心は出来る。

だが、侑達は世界の異変に気付いていないようだ。

あまりにも、いつも通り過ぎる。


「侑!携帯を開いてみろ!!」


俺は侑に命令口調で言う。

俺と美唯だけが電気が使えないっていうことは、ありえないはずだ。

まず、それを確かめないと……。


「なんだよ、潤?」


侑が聞き返す。

少し、失笑も浮かべていた。


「開いてみろッ!!」


軽蔑していた侑に俺は強く言葉を伝えた。


「ああ……そこまで言うなら……」


侑は携帯を開いた。

これで事実を知ることになる。


侑は携帯を何度も電源を入れようと試みている。


「くそ!この暴力女!俺の携帯壊しやがったな!!」


「誰が暴力女よ!!」


『ズバシ―――――ン!!!!!』


菜月のチョップが侑の頭に直撃。

侑は痛さのあまり、頭を抱きかかえる


「……反応している時点で……お前だろ……」


侑は痛そうに頭を押さえている。

やはり、電源がつかないようだった。


「菜月!聖夜!携帯を開いて!!」


二人とも困惑していたが、

携帯を開く。


「……え……?」


「フゥ……アハハハハハッ!!」


菜月は困惑した様子だが、聖夜は笑っている。


「また壊れたのか?これで何台目だ!?俺の携帯は!!」


侑達は、電力が使えないと言う発想まで辿り着かなかったようだ。

というか、聖夜は何台変えてるんだよ……。


「壊れたんじゃないッ!!電力が使えないんだッ!!」


俺は声を張り上げる。

俺は今までのことを侑達に話した。




◇◆◇◆◇◆◇◇◆◇◆◇◆◇




そして長い間、静寂が訪れる。

最初に侑が口を開く。


「……なるほど……だからコンビニに入れなかったのか……」


納得した口調で、一人で頷いている。

何か心当たりがあるのか?


「何か心当たりはあるのか?」


やはり、侑達も何かあったようだ。


「ああ、サバゲーに備えてコンビニで買出しに行った。だが、自動ドアが開かず、俺はそのまま歩みを進めてしまった」


……。……。……。


痛かったろうに……。

だが、それは当然だ。

電気が使えなければ、自動ドアも開かない。

笑うべきところだろうが、笑っている場合じゃない。


「……痛かっただろう……?」


「可哀相に……」


俺と美唯とも侑に同情する。

確かに、開くべきものが開かなかったら……。

激突は避けられないよな……。


「ああ、ありがとう。だが、菜月や聖夜はその俺の姿を見て、獣のように笑っていた……ケッケケケケ……ケーーー!!!!!って!!」


菜月の笑い方を真似しているのか……?

人というよりも、妖怪に近い感じだ。


「だれが獣よ!!その前に私はそんな笑いかたじゃないでしょうッ!!」


『ズバシ―――ン!!!』


今日何度めのチョップだろう?

しかもいつも通りの頭。

侑の頭は丈夫だな……。

侑を褒めてあげたい。


「……そういうところが……獣なんだよ……」


侑の場合は、コンビニに入る為に自動ドアに行く。

だが、その自動ドアは開かず、ドアに直撃。


と言う流れらしい。


「とにかく、電気は使えないんだ」


改まって原点に戻る。

少し話がずれていってしまていた。


「だから、車も不自然に道路に止まっていたのか……」


侑もそれには気付いていたようだ。

なら、不思議に思えよ……。

運転手もいないんだぞ……?

誰だって不思議に思うだろう?


「あと、人もいない」


俺は桜凛高校の生徒以外、誰も会っていない。

単なる偶然だと思いたいが、考えれば間違いだ。

美唯の母さんだっていなかった。

これは、偶然なんかじゃない……。


「いや、いるだろうッ!?」


侑は自分に指をさす。

確かに人はいる。

だが、なぜ車に人が乗っていないのか?

なぜ、美唯の母さんはいなかったのか?

答えは簡単だ。


「俺達、桜凛高校の生徒しかいないんだ!!」


再び俺は声を主張した。

また、沈黙が訪れる。


「……う……嘘でしょう……?」


菜月は失笑を浮かべ、疑い深い表情を浮かべている。

やはり、信じてくれない。

俺も同じだ。

だが、受け入れるしかない。


「なら考えてみろよ!菜月!」


聖夜が菜月の前にでる。

こういうときの聖夜はなんだかすごく頼れる。


「え……?」


その聖夜の言葉に、菜月は視線を聖夜に向ける。


「なぜ、お前の母さんはいなかった!」


「――ッ!?」


菜月は声にならない悲鳴を上げている

菜月の親もいないなら……。

もう、俺もこの不確かに満ちている世界を信じるしかないようだ。


「桜凛高校の生徒しかいないからだ」


聖夜は既に理解していた。

いや、現実を受け止めていた。


一方の俺は、まだ受け止められないでいた。

どうしても嘘だと心の片隅で思ってしまう。


「…………」


菜月は黙り込んでいる。

その身体は、小刻みに震えていた。


「俺達がここに来るまでに、桜凛高校の生徒以外の人と会ったか!?」


侑達も誰も会っていないのか……。

此処まで偶然は重なるものではない。


「……う……嘘よ……」


菜月は信じられないという表情と声を漏らす。


「これは、サバゲーどころじゃないな……」


侑の顔には苦笑いを浮かべながらも、

侑はこの世界を受け入れた……。


やっぱりお前すごいよ……。


「これからどうする……?」


俺は全員の眼を視て、深刻にそういう。

これが、一番の問題だろう。

此処が何処なのかわからない以上、下手には動けない。


「まず、この世界のことを知らないといけないだろう?」


侑が冷静な意見を上げる。

俺もそれが最善の行動だと思う。

だが、どうやって調べるのか……?

俺には考えもつかない。


「俺も賛成だ」


何を言おうと、これが最善だな。

だから俺は賛成することにした。


「私も」


美唯も侑の意見に賛成。

まず、俺達はこの世界のことを知らないといけない。


なぜ、電気は使えないのか……。

なぜ、桜凛高校の生徒以外いないのか……。


「とんでもないことになったな……」


聖夜のはマジだった。

こんな聖夜は初めて見るかもしれない。

それぐらいの真剣さだ。


「…………」


だが、菜月はまだ受け入れられないでいた。

いづれは受け入れざるを得ないときがくるだろう。

俺はそう思う。


「とりあえす、校舎に入ってみよう」


此処にいても何もならない。

桜凛高校の生徒しかいないなら、桜凛高校のキャンバスに何かあるかもしれない。


「そうだな」


侑の顔には笑顔が消え、真剣顔になっていた。

そして、俺達は歩き始めた。



◇◆◇◆◇◆◇◇◆◇◆◇◆◇



俺達は裏入り口から校舎に入った。

校舎の電気はついてなく、薄暗かった。

太陽の光だけが照らしている。


「……学校なのに電気がついてない……」


菜月の声が弱々しい。

その身体は、小刻みにブルブルと震えている。


俺達は学校の中を歩いてみる。

特に変わった様子はない。

放課後の学校ってのはこんな感じだ。


俺達は職員室の前に着いた。


「職員室か……」


侑は勢い良く職員室のドアを開ける。

ガコンッと大きな音を立てながらドアが開く。


「ちょっとッ!!」


菜月は侑の大胆な行為に驚いている。

驚くと言うことは、まだ受け入れてないということ。

なぜなら……。


「大丈夫だ、怒られる筈がない」


職員室には誰もいないからだ。

侑はやはり理解している。


「この時間帯に先生がいないなんてなぁ……」


聖夜も首を傾げている。

失笑にも良く似た笑いをする。


「……本当に桜凛高校の生徒しかいないの……?」


菜月も疑い始めた。

ここまで来れば信じるしかない。

そう思うが、心では理解してくれない。


「まだ、詳細はわからないが……」


俺がそう言いかけたとき……。


『ズド―――――ンッ!!!!!』


不意に、大響音が響く。

俺は反射的に音のした方向へ身体を向ける。


う、嘘だろッ!?

外から銃声!?


さっきの音は間違いなく銃声だった。


「キァッ!!」


美唯がその強烈な音に反応し、バランスを崩す。

俺は反射的に美唯に駆け寄った。


「美唯!!大丈夫か!?」


俺はバランスを崩した美唯を、半ば抱き支えた。


一体この世界はなんなんだ……。


電気や人がいないだけじゃなくて……。

なんで銃声まで……。


「あ、ありがとう……」


美唯は立ち上がって、制服をポンポンと手で叩く。


「銃声ッ!?」


侑はエアガンを取り出す。

そうか……。

俺達はサバゲーをするつもりだったんだ。


「おいおい、マジかよ……随分と本格的なサバゲーじゃないか……」


聖夜もエアガンを取り出す。


「ちょっとッ!?侑!?聖夜!?」


菜月は二人の行動に驚愕している。


銃声……。


今、確かに銃声が聞こえた……。

これはどういうことなんだ……?

ただのお遊びなのか……?

いや、遊びには性質が悪い。


「侑!そのエアガン使えるのか!?」


この世界は電力が使えない。

なら、エアガンも使えないんじゃないのか?


「電気を使うものが全てじゃないさ」


侑のエアガンは電力を使わない物だった。

なら、この世界でも使える。


「……その前になんで銃声が聞こえるんだッ!?」


まさか、俺達以外の別の人間がいるのか……?

それとも桜凛高校の生徒が発砲したのか……!?

疑問は膨らむばかりだ。


「わからない。今から見に行く。潤達は此処で待ってろッ!!」


侑はエアガンを構えながらそう言う。

俺にはその侑の姿は、逞しく見えた。


「ああ、頼む。無事でな」


俺は侑のその瞳に懸けた。

真っ直ぐで、曇りも無く、仲間を守る。その瞳に……。


「ああ、菜月は大人しくするんだぞ」


やっぱり、侑は菜月のことが心配のようだ。

それもそうだ。侑のたった一人の幼馴染だからな。


「私も行くッ!!エアガン渡しなさいよ!!」


菜月は何を思ったか、侑に向かって手の平を出す。

きっと、侑と聖夜だけじゃ心配なんだろう。


「……まったくしょうがないな……行くぞ!菜月!」


迷う状況ではないと判断した侑は、菜月にエアガンを渡す。


そして侑、聖夜、菜月、は銃声があった外へ向かう。


俺はその姿を眼に焼き付けた。

俺の役目は――美唯を守ること。

この命に代えてでも……。


「美唯?大丈夫か?」


桜凛高校のキャンバスに残った俺と美唯は身を隠せそうな所に移動し、

そこから皆の無事を祈る。


「あ、うん……」


「侑、聖夜、菜月、無事でな……」


俺には祈るしかなかった。

無事に帰れよ……みんな……。



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