表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
48/136

23話-(2)

ー君の魂に抱かれてー(きみのこころにだかれて)


この作品はフィクションです。

登場する人物・団体・地名・事件・世界設定などは全て架空の物であり、

実際の物とは一切関係ありません。


「君の魂に抱かれて」は本編とboy and girls' aspects

で構成されています。

初めて読む方は、本編からご覧ください。



桜舞い散る校門を駆け抜け、ついに虹陵橋に差し掛かった。

幅もかなり広い虹陵橋。

戦闘を行うには十分な広さだ。

これが吉と出るか凶と出るか……。


「千鳥に宿われし雷魂よ。再び生ずことを請う」


先頭を疾走しながら桜夜先輩は呪を唱えはじめる――!

呪を唱え終わった刹那、千鳥の刃には電流が奔り始めた――


「今、此処に雷魂を開放する!」


その瞬間、激しい雷音を轟かせながら千鳥の刃身は雷神の如く帯電し始める――!


「立花道雪! 雷切―――ッ!!!」


――虹陵橋の半分まで駆け抜けた。

残り約500メートル。

ここまで来ると敵の数や動きも解かる。

その相手は――横に一列に並んで一人一人が銃口をこちらへ向けている。

あれは恐らく軽機関銃ライトマシンガン

侑から無理やり教えられた銃知識によると、ベルトが繋がっている限り装弾数の制限が無く、無限に撃ち続ける事ができる銃。

それが一つではなく一列に並んでいる……。

10人は少なくとも構えているだろう。

――恐らく相手は射程内。

なら、俺の結界で防御すれば――!

俺が左眼を見開こうとした瞬間――


「中沢くん! ここは私に任せたまえ――!」


桜夜先輩が俺を止めて、疾走する中、雷切の刃先を相手に向けた。


「我が剣よ請え。全ての雷魂を飲み込み、正法を生じよ」


高速に唱えた桜夜先輩の呪に雷切は反応し、雷切から放たれる閃光で前方が見えなくなるぐらいに――雷切は雷光を増す!


「雷神正法! 解き放てっ!!!先導せんどう―――――ッ!!!!!」


先輩の呪とほぼ同時に、軽機関銃が無数に連射する――!

だが、その銃声は桜夜先輩の雷切の雷音で掻き消された――!

俺は反射で眼を閉じる。

雷から漏れる閃光で眼が焼けそうだ……。

俺たちは反射的に全員が立ち止まった。


俺たちは――どうなったんだ?


あれだけ相手の軽機関銃が俺たちに発砲したんだ。

無傷の筈がない……。


だが、いつになっても予想していた痛みは訪れなかった。

俺は腕で覆っている眼をゆっくりと開ける。


「――ッ!!」


思わず声が出てしまった。

倒れているのは俺たちではなく――相手全員だった。


「桜夜先輩っ!? 何をしたんですか!?」


「雷で銃弾を誘導させた」


「じゅ、銃弾を誘導――ッ!?」


「私たちに発砲した全ての銃弾を雷で誘導させ、逆に相手の防弾制服に返しただけだ」


「そ、そんなことが……!」


俺は桜夜先輩の言葉に耳を疑った。

だが、現に相手の武装高生徒は悶絶し苦しんでいる。

防弾制服は、銃弾を弾く事が出来る。

だが、当たると死ぬほど痛い。

そうガイから耳にした。

つまり桜夜先輩は、誰も犠牲者を出さずにこの場を乗り切ったんだ――!


「誅伐――」


清王さんが悶絶する生徒に銃を構える。

だが、すぐにその銃口を桜夜先輩は手で塞いだ。


「誰も犠牲者を出してはならない。君なら解かるはずだ」


「なぜ? あいつ等はまた私たちを殺しにくる。誅伐できる時に誅伐する」


「誰も殺さずにそれぞれの日常へ還るんだ! 一人でも殺してしまえば私たちの日常へは戻れないっ!」


誰かを殺してしまえば、元の日常にはもう還れない。

例え異世界から脱せても誰かを殺してしまえば、元の日常へ戻れない。

桜夜先輩の志でもあり、俺たちの志でもある。

だが清王さんはその言葉を聞き、少なからず表情を変えた。


「……私に戻りたい日常なんてない」


小さく震える声で、清王さんはそういった。

過去の記憶が身体をも震わせて、銃身が少し音を立てて震えていた。

その光景は過去に苦しみ悲哀する……普通の女の子の姿だった。

清王さんの今までにない姿を見て、今度は桜夜先輩が少しだけ表情を変えた。


「大丈夫だ。翠華くんには私たちがいる。全員で新しい日常へ還ろう」


清王翠華「魔弾の誅伐人」の過去が少し解かった気がする。

清王さんは元の世界でも誅伐をする事が日常だったのだろう。

その日常には、もう清王さんは戻りたくない。

清王さんも……人を殺したくなんてないんだ。

あと、それ以外にも解かったことがある。

清王さんは……あの時見せたように、可愛いものが好きな普通の女の子なんだ。

今までたった一つの揺ぎもなかった清王さんは今、過去を、そして日常を思い出して震えているんだ。


「あたらしい……にちじょう……」


清王さんはゆっくりと銃口を下ろした。

相変わらず無表情だが、その無表情の中には微かな希望が宿っていた。


「じゅん」


力強く、そして優しい声で美唯は俺の名を呼んだ。


「ああ、絶対に還ろう」


俺は力強く美唯の手を握った。

この温もりは……絶対に離さない。

今度こそ――絶対に。


「桜月導! この時を逃すな!」


「ああ、解かっている。行くぞっ!!!」


ガイに返答しながら桜夜先輩は先頭を弾丸のように駆け抜ける。

その桜夜先輩の背中を守るように、ガイが走る。

当然、俺たちは桜夜先輩の弾丸のようなスピードには追いつかない。

だが、そんな俺たちを守る人影が一人いた。


「「翠華ちゃんっ!」」


美唯と月守さんは見事合っている声で清王さんを歓迎した。

だが清王さんは険悪そうな表情は見せず、小さく微笑んだ。


「私が、貴方たちを守る――」



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
投票は終了しました。多くの投票ありがとうございました。
君の魂に抱かれて キャラクター人気投票
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ