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22話-(2)

ー君の魂に抱かれてー(きみのこころにだかれて)


この作品はフィクションです。

登場する人物・団体・地名・事件・世界設定などは全て架空の物であり、

実際の物とは一切関係ありません。


「君の魂に抱かれて」は本編とboy and girls' aspects

で構成されています。

初めて読む方は、本編からご覧ください。



「あさくらぁ―――――ッ!!!!!」


扉を開け放った瞬間、心地よい秋風が俺の肌を撫でる。

俺と美唯は屋上に出た――

桜凛市の山々を一望出来る絶景。

一瞬、景色に眼をとられたが、すぐに正面を凝視した。


「ふぅ、良くここまで辿り着いたな」


俺たちの遥か前――屋上のフェンスの前に朝倉はいた。

長方形に広がる屋上の端から端の距離。

その距離が――長く果てしなく一つの線上に見える。


「朝倉、この世界はなんなんだ!」


俺の言葉とは裏腹に、朝倉は黒々と輝くものを俺たちに向ける。

それは――


「10秒後に発砲する」


この距離からでも解る、紛れもない銃だった。

今までの罠は直接死に関わるような罠ではなかった。

ここに来て銃を取り出すとは……。


「9、8、7、6……」


不適な笑みを浮かべながら、朝倉はカウントして行く。

数字が減るにつれて、俺の手を握る美唯の力が強くなる。

俺は――絶対に美唯を守らないといけない。

あの時の俺を美唯が助けてくれたように、今度は俺が美唯を――!


「はぁ――!」


俺は左眼を見開く――!

その動作に反応し、左眼が熱く滾る――!

刹那、俺と美唯を囲む最小限の半円形の結界を創りだす――


その結界を見て、朝倉が初めて驚愕の表情を作った。

だが、何かに気が付いたように、再び不適な笑みを浮かべる。

その表情はまるで核心に至ったような――


「これでお前は攻撃出来ない!」


朝倉には聞こえないが、俺は声を上げた。

この結界は、外部からの侵入が不可能。

防御としては至高の域に達している。

だが、欠点もある。

進入不可能ゆえに、結界外の人物と会話が出来ない。

つまり、朝倉と会話が出来ない。

あの朝倉の表情からすると、朝倉はこの能力の事は知らなかったらしい。

だが、どうする……。

防御をし続ければ会話は出来ない。

結界を解除すれば、朝倉に発砲される。

背に腹は変えられないか……。

暫く睨み合いが続く中、朝倉は懐から何かを取り出し、それ頭上に構える。

まずい……何かする気だ!

朝倉が親指で取り出したものを押した――


「スイッチかっ!?」


朝倉の取り出したものは何らかを発動させるスイッチ――

それは恐らく落とし床を発動させる為のスイッチ。

だが、回避方法はある。

結界で地面を創ればいい。

だが、それをした所で、朝倉と話すことは出来ない。

ただ屋上に立ち尽くすだけになってしまう。

なら、もう一度作戦を立ててから再び朝倉と対峙するべきか……。


「美唯! ここは素直に堕ちるぞ!」


「ええぇッ!? 素直に堕ちるってどういう……」


その瞬間、屋上の半分以上の面積を占める床が開く――!

朝倉の立っている床はもちろん開いていない。


「美唯っ!」


「じゅ、じゅん……!」


握っている手を引き寄せ、俺は美唯を抱きしめる。

無事に……着地出来ますように……。

俺は祈ることしか出来なかった。


俺は最後に朝倉の顔を見る。

自ら落とし床を発動させたにも関わらず――

その表情はまるで、獲物を獲り逃がしたような――悔しげな表情だった。




朝倉eyes




俺は二人の堕ちた先を見下ろす。

その先は闇のように真っ暗で堕ちた二人どころか先すら見えない。


「まさか……あの男も偽神の……」


あの能力……あれは紛れもなく偽神の――

まさかこの世界に偽神が二人・・・・・もいるとは……。

これは流石に予想も出来なかった。

偽神の魂が引かれ合ったのか……。


「ということは、アイツがこの世界の――」




潤eyes




「うぉおおおおおおッ!?」


俺は美唯を胸に抱きながら堕ちて行くと、柔らかいものに直撃し落下の勢いは止まる。


「ぐはああっ!?」


美唯ではない――女の子の悲鳴が聞こえる。

ああ、この声は――


「ば、馬鹿者! 何をする!」


その声は俺たちの探していた――桜夜先輩の声だった。

なんで桜夜先輩の声がするんだろう……。

まさか――ここは噂に聞くお花畑が一杯な所なのだろうか。

俺は眼を開けてみる。


「うぉおおおおお! 何も見えない!」


眼も見えないが俺の声も篭ってる。

なんか夢のように柔らかいものが顔にあるような……。

ああ、これが噂に聞くお花畑か。

お花畑って柔らかいんだな……。


「じゅ、じゅんっ! 桜夜先輩のどこに頭突っ込んでるのよ!」


これは美唯の声だ。

美唯の声もするって事は俺はまだ生きてるのか……?

ん……? 桜夜先輩?

ってことはこの水まんじゅうのような柔らかいものは……。

お花畑じゃなくて……!!!


「こ、この馬鹿者―――――ッ!!!!!」


バシーンッ!と流星のようなスピードで何かが俺の頬に炸裂する。


「うぉおおおおおおおッ!?」


俺はその勢いで度派手に飛ばされ何度もバウンドし、うつ伏せでようやく静止する。

ああ、この床は硬くて冷たい。

まるで天国から地獄へ突き堕とされたみたいだ。


「中沢くん……君も遂に本性を現したか……」


桜夜先輩がそっとするような口調で俺に近づいてくるのが、足音で解る。

ああ、なんてことだ。

俺はようやく自分の置かれた立場を理解する。


朝倉の落とし床に堕ちて、堕ちた先が偶然桜夜先輩の頭上で……。

桜夜先輩が俺たちのクッションになってくれて……。

俺は偶然ながらこんな痴態を露にしてしまって……。

そして俺は……桜夜先輩に天誅を受けようとしているのか……。


「ち、違います……全部偶然なんです……信じてください……」


「ほぉ……私の胸部を的確に射抜くような偶然が本当にあるのか?」


桜夜先輩のぞっとするような声で俺の身体はガクガクと振るえ始める。

ああ、これが戦慄っていうんだな……。


「違うんです……違うんです……違うんです……」


俺は震える声を振り絞り、呪文のように何度も繰り返す……。

もう頭の中は真っ白……何も考えられない。


「ふぅ……はっはは!」


いきなり桜夜先輩が笑い出した。

予想外の反応に俺の脳は目覚め、上体を起こす。


「良くここまで助けに来てくれた。ありがとう」


桜夜先輩は優しい口調で俺に手を差し伸べた。

その動作に俺の頭は蒼白になり、差し出された桜夜先輩の手を見つめる。


「い、慰謝料請求……?」


「違うっ! 手を取りたまえという意味だ!」


「ああ、そっちでしたか……」


俺は桜夜先輩の手を握り立ち上がる。

すると、タッタと足音を立てて誰かが近づいてくる。


「潤先輩っ! はいっ!」


俺に近づいて来た人は、いきなり右手を差し出す。

いきなり慰謝料請求なんて、どこまで世間知らずで身の程知らずな人物だろう。


「月守さん……お前には何もしてないだろ?」


「ええぇ~!?」


そこにいたのは――月守さんだった。

ああ、桜夜先輩と月守さんはこの部屋に閉じ込められていたんだ。

見る限りに二人は元気そうだ。

すると、タッタと足音を立てて誰かが近づいてくる。


「潤っ! はいっ!」


俺に近づいて来た人は、いきなり右手を差し出す。


「美唯……お前生命線みじ……」


「きゃぁああああああああああああ―――――ッ!!!!!」


美唯は自分の手を超高速で引き戻し、絶叫で規制音をかける。

ああ、耳が……。

もちろん生命線なんて見てもいないのに……。

その光景に、全員が無事に再開出来た事もあって、俺たちはその後もあはは、はははっと笑うのであった。




◇◆◇◆◇◆◇◇◆◇◆◇◆◇




「さぁ、ここからどのように脱するか……」


桜夜先輩が腕組みをし、険しい表情で考えている。


俺と美唯が堕ちた先は、桜夜先輩と月守さんが入れられている部屋だった。

この部屋を見たのは、これが初めてではなかった。

この部屋の作りは、まったく架瀬さんと出合った部屋と同じなのだ。

つまり桜夜先輩と月守さんは――手厚い保護を受けていたのだ。

……朝倉は本当に何をやりたいんだろう?


「桜夜先輩、刀はないんですか?」


「押収されてしまった」


桜夜先輩の刀が押収された……!?

刀がないってことは……今後の活動からしてもかなりの致命傷じゃないか!?


「だが臆することはない。私の刀には呪を刻んである。呪を唱えれば還ってくるんだが……」


「どうやらこの空間は術の類が使えないらしい。いや、異能の類というべきか」


その桜夜先輩の言葉を耳にして、俺は無意識に左眼に手を置く。

術の類が使えない……異能の類が使えない……?

あの時……架瀬さんと出会った部屋で落とし床に嵌ったとき――

俺は結界を発動させ地面を創ろうとした。

だが、不発に終わった。

まさか……それが原因だったのか?


「……どうすれば」


俺は周りを見渡しそう呟いた。

桜夜先輩もいるのにこの部屋から脱することが出来ないのか……?

そうか……今まで桜夜先輩が脱さなかったという事は桜夜先輩でも駄目だったんだ……。

桜夜先輩が黙って助けを待っているとは思えない。


「まさか……私たち閉じ込められたのっ!?」


と声を上げた美唯に――


「どうやらそのようだな」


桜夜先輩は流暢に答えた。

俺は脱する為の術を見つける為に、頭上を見る。


「あ、灯りがついてるっ!?」


天井には豪華なシャンデリアつり下げてあり、そのシャンデリアからは灯りが溢れている。

その灯りは本当に久しぶりに見る灯りで……。


「そうだ。どうやらこの部屋では電気も使えるらしい」


桜夜先輩が補足を入れる。


「電気が何故使えるが気掛かりだが、今は脱出方法を模索しよう」


「そうですね……」


窓もない。

出れるような所は一切見当たらない。


「恐らくここは地下だろう。壁を壊した所で無意味だ」


「そ、そうなんですか……」


俺は反射的に壁を見る。

シミ一つなく高級感溢れる純白色。

本当に一流ホテルみたいなところだな……。


「武器になりそうな物はこれぐらいだな……」


桜夜先輩は大理石のテーブルの上に包丁、ナイフ、主に料理で使う道具を並べていく。


「桜夜先輩! これはどうですか!?」


美唯が持ってきたのは、これまた高級な匂いを漂わせている皿。

これ、一枚万はするな……。


「おおっ! 使えそうだな」


桜夜先輩は美唯から皿を受け取り、テーブルに並べていく。


「楽しそう! あたしも探そう!」


月守さんは宝探しのような感じで探し始める。

俺も探すか……。




◇◆◇◆◇◆◇◇◆◇◆◇◆◇




「武器になりそうな物はこれぐらいか……」


テーブルには所狭しに物騒な物ばかり並んである。


「これであの金属製の扉を壊せるとは考え難いが……やるしかない」


桜夜先輩がまずは何も持たずに扉の前に立つ。


「…………」


桜夜先輩は扉の隙間を凝視する。

ドアはやはり、どんな物でも隙間が存在する。

だけどこの隙間……包丁とか入らなさそうだな……。


「私も何度か試したが傷一つつかなかった」


桜夜先輩も俺たちが来る前に、何度も脱出しようとしていたようだ。

だが、その功績もこの扉からは見当たらない。

どれだけ頑丈な扉なんだよ……。


「最善を尽くそう。少し離れたまえ」


桜夜先輩が包丁を手に持ち、離れろと指示を出す。

これは離れよう。

本当に危なさそうだ。


「はぁぁぁぁああああああ―――――ッ!!!!!」


桜夜先輩は息を止めているかのように、包丁を振るう――!

横薙ぎに一撃、その薙ぎに続いて扉を上下に一刀両断する勢いで斬り下げ、流れるように下から上へ居合い斬りのように包丁を奔らせ、再び横薙ぎの一撃――

その動きを桜夜先輩は流星のような速さで何度も繰り返す――!

金属同士が激しく交差し合い、大音響と共に火花が派手に散る。

扉が俺だったら……今頃俺は……。

……そんな恐ろしい事を考えるのは止めよう。


「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!」


桜夜先輩は乾坤一擲の気迫で一心不乱に包丁を振るう。

この包丁……なんて耐久力だ!

あの桜夜先輩の動きについてきてるのかッ!?

すると桜夜先輩は刹那、扉を蹴り間合いを取った。

そして包丁を下段構えに直して、弾丸のように駆け出した――!


桜夜繚乱流さくらよりょうらんりゅう―――――!!!!!」


包丁を下段から居合いのように上げ、切っ先を扉へ向ける――!


「突き―――――ッ!!!!!」


扉に体当たりするような桜夜先輩の一撃――!

ものすごい衝撃波が起こっている――そんな気がした。

桜夜先輩の決死の突きは――扉を貫いていた――!

だが、その包丁は終に刃元から折れ、刃身のみが扉へ減り込んでいる。

刃身が失われ、桜夜先輩の握る包丁は柄のみになってしまった。


「駄目か……」


桜夜先輩は深く扉へ突き刺さっている刃身を見下ろす。

そして柄だけになった包丁を手からゆっくりと落とした。


「すごい……! あの扉を貫きましたよ!」


俺は桜夜先輩に近づく。

見事に、そして綺麗に刃身が減り込んでいる。

こんな硬い金属でも……桜夜先輩は斬る事が出来るんだな……。


「貫いたが駄目だ。扉は開かない」


桜夜先輩が口惜しそうに扉を見る。


「もう……包丁はあれで最後だったんだ……」


「そ、そうでしたか……」


もう包丁という武器は消えてしまった。

恐らく、最初は複数あったのだろう。

俺たちが来る前に、桜夜先輩が脱出の為に使って折れたのだろう。

だから最後の切り札にとって置いていたのか……。


桜剣おうけんが成せれば……」


桜夜先輩は珍しく歯を食いしばる。

桜剣……。

見たことはないが、恐らく術の類なのだろうか?

俺もこの左眼が使えれば……ここから脱出出来るのに……。


「万策朽ち果てたか……」


桜夜先輩はテーブルの武器を見つめながらそう呟いた。

確かに包丁の上を行くような武器はない。

なら――最後の手だ。


「美唯っ! お前ならいける!!」


俺は世界チャンピオンですら、膝を屈するほどの攻撃力を持つ猛者、美唯に全てを託す。


「え、ええぇッ!?」


美唯は『何で私っ!?』と言いたげな顔をする。


「世界チャンピオンですら、膝を屈するほどの攻撃力があるだろっ!? お前には―――!!!」


「なにそんなに熱く語ってるんじゃぁぁぁあああああああ―――――!!!!!」


『ズバシ―――――ンッ!!!!!』


「ちょぉわぁぁあおおおおッ―――――ッ!!!!!」


美唯の右ストレートが俺の腹部に炸裂する……。

俺は口から出る血を手の甲で軽く拭いて、不適な笑みを浮かべる。


「くははは……右ストレートが五臓を圧し潰すこの感触……久しぶりだと思えば恍惚と感じられるわ……!」


「あんたはどこのドМ魔女よっ!!!」


俺は確信した。

これだけの威力があればあの扉も圧し潰せるんじゃないか?

だが、失敗すれば美唯の拳は……。

やっぱ止めておこう。


「くそ! もう方法はないのか!?」


桜夜先輩が珍しく口語を荒げる。

あの扉を破壊する方法は……。

くそ! どうしても視線が美唯にいってしまう!




その瞬間――




ガコンッ!という音を出して、天井が開いた――!

その天井から、猛スピードで二人の人影が落下してくる――!


「はぁ――!」


「誅伐あるのみ――!」


落下して来た二人は――ガイと清王さんだった――!

俺らとは違って、膝を上手く使って衝撃を和らげて着地している。

良く落とし床に嵌って着地出来るな……。

俺なんて三回も落ちたのに……。

三度目の正直どころか、何度やっても無理だろう。


「「翠華ちゃん!」」


「だから翠華ちゃんと……」


美唯と月守さんの呼び名に少し赤くなる清王さん。

赤面する翠華ちゃ……清王さんは女の子らしくて可愛かった。


「河坂くん! 清王くん!」


桜夜先輩は突如、天井から現れた救世主を歓迎する。


「桜月導……こんな所にいたのか?」


ガイは桜夜先輩を見て少し苦笑いをする。

まさか……この部屋に全員が閉じ込められるとは――

朝倉恐るべし……。


「誰でもいい! 早くこの扉を破壊してくれ―――ッ!!!」


桜夜先輩は自分の目の前にある扉を指差し、全ての望みをこの二人に賭ける。

その言葉を聞いた刹那、清王さんが太もものホルスターからグレネード・ランチャーを取り出した――!

取り出したグレネード・ランチャーの銃口をそのまま扉へ向けて――


「ま、待て清王くん! まだ私が――!」


唯一、扉の眼の前にいる桜夜先輩が恐慌しだす。

だが、清王さんは――


『ズドォ―――――ンッ!!!!!』


躊躇なく発砲した――!


「――ッ!?」


桜夜先輩は発砲するよりも早く初動し、飛び込み前転の要領で回避する――!


『ドカァァァァァアアアアアアアアンッ!!!!!』


比喩ではなく、天地を揺らす大爆音――

俺たち――桜夜先輩以外は大理石のテーブルを立ててそれをカードにする。


「ぐはああっ!?」


桜夜先輩の悲鳴がこの大爆音の中しっかりと聞こえる――

そうだ……! あの扉の前に桜夜先輩がいたんだ!

だけど、桜夜先輩なら大丈夫だ。


「誅伐――」


そう決め台詞を吐き、清王さんはグレネード・ランチャーをホルスターへ戻す。


「き、貴様っ! 私ごと破壊する気かっ!?」


「至高の桜月導。あなたはこのぐらいでは死なない」


「だからといって野蛮過ぎやしないか!?」


「ふぅ……」


清王さんは珍しく微笑で桜夜先輩を流した。

俺は大理石のテーブルからちょこっと眼を出した。


「う、うわぁ~」


思わず声が漏れる程の大惨事。

扉どころかソファーや食器棚、リビングまで後形もない。

嵐と竜巻と地震とモンスター……あらゆる天災が同時に来たようだ。

……モンスターて天災なのか?

一方、まだ部屋にはモクモクと白い白煙も立ち昇っている。


「よっし、早く脱出しよう」


逸早くガイが立ち上がり、ドアへ向かう。

俺も立ち上がり、両サイドのお二人に手を差し伸べる。


「あ、ありがと」


同じ言葉を返して、美唯と月守さんは俺の手を握って立ち上がった。


「清王くん。授業で習わなかったのか? 味方がいる所にグレネード・ランチャーを撃つなと」


「授業に参加してないあなたに言われたくない」


「な、なぜその事を……!」


「ふぅ……」


まだ桜夜先輩と清王さんは言い争っていた。

架瀬さんから教えて貰ったけど、桜夜先輩は授業に参加してないって言ってたな……。

本当だったんだ……。


「だが、扉を破壊してくれた事には感謝している」


そう感謝の言葉を告げられた清王さんは、どこか嬉しげな表情をしていた。

清王さんも……出会った頃に比べれば随分と緩くなったな……。

良い事だ。


「行くぞ―――ッ!!!」


久しぶりに聞く桜夜先輩のその言葉で――俺たちはこの部屋から脱出した。



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