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19話-(1) 独りの少女との出会い

ー君の魂に抱かれてー(きみのこころにだかれて)


この作品はフィクションです。

登場する人物・団体・地名・事件・世界設定などは全て架空の物であり、

実際の物とは一切関係ありません。


「君の魂に抱かれて」は本編とboy and girls' aspects

で構成されています。

初めて読む方は、本編からご覧ください。



「はぁ……はぁ……はぁ……」


変な月守さんの妄想により、胸が妙に熱くなった俺は何故だが走りだしていた。


「じゅんっ!いきなりどうしたのよ!」


走りが止まり、肩で呼吸していた俺に美唯が話しかけてきた。


「いや……俺も分からない」


「じゃぁ、何で走り出したのよ!」


その問いに言葉を失った俺は、ただひたすらに呼吸を整える。

呼吸が整ってきた時に月守さんが俺の元まで辿り着いた。

どうやら、悠々と歩いて着たようだ。


「よっし……」


俺は小さく頷き、下げていた頭を上げる。

と、そこには三階へ続く階段があった。


「三階に行くか」


俺の言葉を聞き、美唯はコクリと頷いた。


「そうだね。ここにも朝倉はいなかったから」


「一体、どこにいるんだか……」


「本当ね……」


「やっぱり沙耶先輩は朝倉に……!」


「月守さんは少し黙っててくれ!」


不満を呟きながら、俺達は階段を上がった。



◇◆◇◆◇◆◇◇◆◇◆◇◆◇



桜凛武装高校三階



「さぁ、朝倉はどこだ……」


俺達は足元や左右の壁、更には前後にも注意を払う。


「呼んで出てくるとは思えないけど……」


「美唯、そんなのは分かってる」


警戒しながら歩くというのはやはり体力、更に気力まで消費する。

だが、油断した時に隙が生じる。


「ああ、そうだ!」


月守さんは何か良い名案が思いついたのか、手をポンと叩く。


「朝倉を呼んでみようよ!」


月守さん……。

俺達が「呼んで出てくるとは思えない」といったばかりだぞ?


「そうだよね!やってみないと分からないよね!?」


なぜか美唯が賛同した……!

何が「そうだね」だ。

さっきと言ってることが違うぞ。


「美唯、さっき呼んで出てくるとは思えないって……」


「そんなのやってみないと分からないでしょう!」


なぜか一喝されてしまった。

もう、こうなったらヤケクソだ。


「じゃぁ、呼んでみるか……?」


なんて幼稚的な発想だろう。

出てこないとは思うけど……。


「せ~の~!」


美唯が音頭を取り始める。

俺はおもっきり酸素を取り入れる。



「「「あさくらぁ!さくんんっ!!」」」



……。……。……。


惨劇なまでに、俺達の発した言葉は一人一人ことごとく違った。


俺が発した言葉は「あさくらぁ!」

美唯が「あさくらさん!」

月守さんが「あさくらくん!」


そして、意味の分からない言葉が虚しく桜凛高校に響き渡る。


「………………」


俺達は黙ることしか出来なかった。


「もう一回やろう……このまま止めるのはあんまりだよぉ……」


美唯の沈んだ言葉が俺の耳に入ってくる。


「今度は統一しような……」


俺は哀しくため息を漏らし、苦笑いを浮かべる。


「じゃぁ、もう呼び捨てでいいよね?」


月守さんの表情だけが妙に明るい。

その明るさが妙に腹が立つ。


「ああ、もうなんでもいいよ。美唯もそれでいいよな?」


「そろって言えるならなんでも……」


美唯えらくテンションが落ちたようだ。

それもそのはずだ。

自分が音頭をとって、ことごとく合わなかったからな。


「じゃぁ、今度はあたしが音頭をとるね!」


今度は月守さんが音頭をとるようだ。


「せ~の!」


スゥ!と今度は息ぴったりに、三人同時に深く呼吸をする。

おおっ!これは期待出来るかも!?



「「「あさくらぁ―――――!!!!!!」」」



完璧だっ!!

今度は見事にハモったぞ!


そして、三人の声を乗せた言葉は桜凛武装高校に響き渡る。


その途端――


『ガコンッ!』


真下から何かが開く音がした。

その音を聞いた瞬間には、既に立っている感覚は失われていた。

これは……。

真下が開いたということは……。

落とし穴だ!!

いや、穴じゃないから落とし床だ!!


「「「うわぁぁぁあああああああああああああああああああ!!!!!」」」」


俺達は重力に従い、真下へ急降下していく……。

もう、逃げる術はどこにもなかった。

その途端、俺の目の前に何かが重なる――!


「うおっ!前が見えない!」


俺が顔を動かした瞬間、むにゅっと柔らかい感触が顔に伝わる。

ま、まさか……これは……。これは……。


「きゃぁ!じゅ、じゅんのへんた―――――いっ!!!」


やっぱり美唯の胸だった――!

俺の顔は、美唯の胸の間にすっぽりと収まっていた。


「ってか、月守さん!呼び出し逆効果じゃん!!」


「あ、あはははは……」


「笑って誤魔化すな!」


「きゃぁ!じゅん!喋らないでよ!」


「結局、一階に逆戻りだね?潤先輩!」


「あんたのせいでしょうがぁあああああああああああああ!!!」


俺と美唯は重なり合うようにして、地面へ向かって落ちていく。

俺が下でよかった。これなら美唯を落ちた時の衝撃から守れる。



『ドスッ!!』



サンドバックを床に叩き付けたような鈍い音がした。

この音で俺達は地面まで落下したと理解できた。

そして、重なり合う俺と美唯はトランポリンのように激しくバウンドした。


「きゃふっ!」


美唯の悲鳴と同時に、俺の顔の左右にあるやわらかいものが暴れだす。

ああ、そうか……。

地面に当たってバウンドしたんだな……。だから美唯の胸が衝撃で暴れて……。

俺と美唯はその体勢のまま、軽く3mはバウンドした。


「うわぁあああ!?美唯先輩!危ない!!」


下から月守さんが向かってくる……?

なぜ下から……?

しかも、なんでこんなにバウンドしてるんだ……?


不確かだらけのことばかり起こる。

だが、ようやく合点がいった。


「ああ、なるほど!俺達が落ちたのはトランポリンなんだ!だから凄いバウンドして、バウンドした月守さんが下から向かってくるんだ!」


だが、俺の声は篭る。


「ああぁ……!だから喋らないでよ!」


あ、そうだった……。

これ以上、美唯に色々とする訳にはいかない。

だが、あまりにも密着した胸部からは美唯の匂いがする。

香水の匂いではない。多分、ボディーソープやシャンプーで付いた自然な匂いだろう。


『ドスッ!』


下から何かが、もの凄いスピードで直撃した――!

しかも空中でだ。


「うわぁ!?」


その主は月守さんだった。

ああ、そういうばさっき危ないとか言ってたよな……。

月守さんを助けようと俺は手を伸ばす。


「あ……!」


ザラッとした布地のようなものに俺の手は触れる。

ん……?なんだこれは?

気になった俺は、更に指をなぞるように動かした。


「んぁあ!?じゅ、じゅんせんぱい!どこさわって……!?あたしまだそんな……!!」


なんだ?この禁断のものに触れたような月守さんの反応は……。

ってことはまさか――!!

触ったものの正体が分かった瞬間、俺の頭の中心に血が集まるようにして熱くなる。


「…………」


もう、俺は何も喋れなかった。

そして、ただ早く床に着きたいと心から祈った。



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