18話-(2)
ー君の魂に抱かれてー(きみのこころにだかれて)
この作品はフィクションです。
登場する人物・団体・地名・事件・世界設定などは全て架空の物であり、
実際の物とは一切関係ありません。
「君の魂に抱かれて」は本編とboy and girls' aspects
で構成されています。
初めて読む方は、本編からご覧ください。
「行っちゃたね……」
美唯が深奥な趣で、ガイと清王さんが行った廊下を視る。
「ああ、そうだな……。よっし!俺達も行くぞっ!」
俺はガイ達が行った反対側を向く。
「潤先輩じゃ、なんだか不安だなぁ~」
月守さんは俺に薄ら笑いをする。
不安とは失礼な真似を……。
「心配するな。此処には世界チャンピオンですら膝を屈する程の威力を持つ女がいる」
そう言い、俺は美唯の顔を視る。
「な、何で私の方を視るのよっ!」
「はははっ」
笑って誤魔化すと、俺の足は歩みだす。
「ああっ!じゅ~んっ!待ってよ!」
美唯が空いた距離を小走りで埋める。
それに釣られて、月守さんも走りだした。
◇◆◇◆◇◆◇◇◆◇◆◇◆◇
「さてと、先ずは的を絞らないとな」
この学校は広すぎる。
しかも、右か左かも分からない状態。
当然、俺達がどこに向かってるかも解からない。
と、美唯は、
「桜夜先輩……。どこに連れて行かれちゃったんだろ……」
「それを見つけないとな……俺達で」
でも、本当に検討が付かない。
こうなったら、手当たり次第に教室を物色するしかないのか?
「こうなったら、もう適当に教室を探るしか……!」
月守さんが俺の思考を読むように唱えた。
「俺も同じこと考えてた」
この方法は効率が悪すぎる。
しかし、これ以外方法が思い付かない。
「でも、沙耶先輩……。どんなことされてるんだろ……」
月守さんは下を向き、淡々と喋りだす。
「大丈夫だ!桜夜先輩なら」
無事という根拠もないが、俺は桜夜先輩を信じる。
そして、ハァっと勢い良く月守さんが顔を上げる。
「ま、まさか……!!!」
◇◆◇◆◇◆◇◇◆◇◆◇◆◇
「こ、ここは……」
私が眼を覚ましたのは、薄暗く気味の悪い所。
しかし、すぐにそこが礼拝堂だと解かった。
赤、青、緑、黄色……。様々な色の光が、貼り付けられているガラスから漏れている。
「そうか……。私は朝倉に浚われて……」
その時私は、両手首に違和感を覚える。
そして、視線を下ろす。
「なぁ……!」
十字架。
私は今、十字架に架けられてる。
両手は翼のように大きく広げられ、両足も地から離れて束縛されている。
「くぅ……!」
いくらもがいて抵抗しても、私が自由になることはなかった。
「十字架に架けられている気分はどうだい?桜夜沙耶」
その声は私の前方から聞こえてきた。
罪人を痛みつけるような、その声。
「あさくらぁ……」
足音と共に、朝倉がゆっくりと近づいてくる。
「ふぅ……」
小さく口元を歪ませた朝倉は、手に持っている細長い竹の棒のようなモノを地面に叩き付けた。
『バシンッ!』
閑静な礼拝堂に響き渡る高音。
この音はムチだ……。
「それで何をする気だ……?」
距離が1メートル程に縮まり、そこで朝倉は歩みを止めた。
「まだそんな口を利けるとは……」
朝倉は歪ませた口元を変えず、私の眼を直視する。
「貴様は違反者だ。それ相当の贖罪をしなければな」
「ふぅ……」
私は小さく嘲笑い、視線を落とす。
「今からでも心を入れ替えるのなら、免除してもいいが?」
「断固拒否する。私は貴様等のような事は絶対にしない」
今度は、ふんっと朝倉が鼻で笑った。
「悪い子だな……」
私は視線を落としたまま、眼を閉じる。
「悪い子には何が必要だ?」
『バシンッ!』
「ぐはぁぁあああっ!?」
右の脇腹に激痛が走る。
ムチの高音の残響が礼拝堂に響く。
そのムチ威力は、制服を破くぐらいの威力。
私は堪らずに声を発してしまった。
『バシンッ!バシンッ!バシンッ!』
「はぁぁ……っ!!! はぁ……ぐっぅ!……ぐああぁぁああ……!!!」
ムチが何度も眼にも止まらぬ速さで往復し、私の身体全体を痛みで覆うように激痛が走る。
「はぁ……はぁ……はぁ……」
眼を開けると、私の制服が所々、ムチの軌跡通りに破れているのが見える。
「もう服の役割が果たされてないな?」
「…………」
が、私は何も語らなかった。
すると、朝倉がムチを地面に投げ捨てる。
「ふぅ……。この程度に仕置きでは生温い」
そう言い、朝倉は私に近づいてくる。
まるで、何か愉しい玩具を見つけたような表情。
「な、何をする気だ!」
「なに、ちょっとした快楽だよ」
気が付けば、手を伸ばせば触れれる程に朝倉接近していた。
「なぁ……!何を破廉恥な真似を!私がそんなこと……!」
力一杯両腕を動かすが、拘束は解けない。
その私の姿を視て、朝倉は楽しんでいるようにも視える。
「あまり暴れると……」
「ふはぁっ!? ど、どこを触っているっ!?」
私の鎖骨の下の膨らみに……その朝倉の手は置かれていた。
そして、朝倉は私の反応を見ると、更にその手を脈を打つかのように何度も動かしてくる。
「や、やめぇ……!!!」
「そ、そんな展開ありえるかぁーーーーー!!!!!」
俺は月守さんの想像という名の妄想を掻き消した。
何だ、この展開は!
何とうらやまし……じゃなくて、ありえないだろ!?
しかも何だ!あの最後の展開は!
「え?違うのかな……?」
月守さんが眉を曲げ、顔を小さく傾げる。
「私も、流石にそれはないと思う……」
美唯も呆れたような表情で、月守さんの想像の可能性を潰す。
「でも、沙耶先輩ってすっごく綺麗な人でしょ!?」
確かに綺麗な人だけど……。
「SMプレイも嗜虐性趣味も朝倉にはないと俺は思う」
「そ、そんなの解かんないでしょ!」
何故か月守さんが猛烈に反発する。
月守さんはそういうプレイが好きなのだろうか?
「でもこんな世界だから、そういう人が居てもおかしくはないはずだよ?」
美唯……。
お前はどっちの味方なんだ。
でも、美唯の言うことは間違いではない。……と思う。
「そりゃ、おかしくはないだろうけど……」
何だか、桜夜先輩が大変な事になっている気がして来た。
「じゃ、じゃぁ……桜夜先輩は朝倉に……!!!」
美唯は頬を紅くし、口全体を両手で覆るように隠している。
「言うなっ!!言ったら負けだ!」
自分で言ってて、意味が解からなかった。
何が負けなんだろうか?
と、月守さんは、
「まさか……。今頃、沙耶先輩の初めては……!!!」
「うおぉぉぉおおおおおおっ!!! 速く桜夜先輩を探しに行くぞっ!!!」
様々な感情が錯綜する中、どの感情か解からないが、迅速に桜夜先輩を見付けないといけない気がした。
気が付けば、俺は駆け出していた。
「えっ!?じゅ、じゅーんっ!!!待ってよ!!」
「潤先輩っ!?いきなりどうしたの!?」
桜夜先輩!
待っていてください!
すぐに……すぐに助けに行きます!!
俺は一心不乱に唯、全力で走って行った。