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15話-(1) 答えを導く為に

ー君の魂に抱かれてー(きみのこころにだかれて)


この作品はフィクションです。

登場する人物・団体・地名・事件・世界設定などは全て架空の物であり、

実際の物とは一切関係ありません。


「君の魂に抱かれて」は本編とboy and girls' aspects

で構成されています。

初めて読む方は、本編からご覧ください。


「受けて立とうッ!!朝倉ッ!!!!」


俺はスピーカーに向かって声を張り上げる。


相手は得体の知れない朝倉っていう奴だ。

しかも、使えないはずの電気までも使っている。

相手の力は計り知れないだろう。


だが、俺達もなめられたものだ。


此処には生徒がいない。

ということは、桜凛武装高校の生徒も自動的にいないということ。

それだけでも、危険性はぐっと減る。


朝倉の言っていた屍っていうのが気になる点だ。

だが、逆に言えば、生徒がいないということは、その屍は人間ではない。

その屍という存在が絞られてくる。


そう。屍はトラップ。即ち罠って意味だ。


それが、どれほどの罠かどうか分からない。


電気が使えないのなら、大したことはないだろうが、

相手は何故か電気が使える。


俺は、敵意を丸出しにスピーカーを見上げている。

いや、睨み付ける。


「じゅ、潤ッ!?」


傍らにいた美唯が、異常な行動を取る俺に対して、肩に強く手を置く。


「本気でいってるのッ!?これは罠だよっ!?」


美唯が俺の肩を強く引き寄せ、強制的に俺と向き合う形にする。

俺も視線を下げ、美唯を見る。


「そ、そうだよ、潤先輩ッ!その朝倉っていう人に踊らされてるんだよッ!?」


そうか……。

俺は、朝倉の頭中に嵌ってるってことか……。

だが、あえて、相手の罠に嵌るのも策略の一つだ。


「じゃぁ、俺達はこのまま逃げるのか?」


俺は抵抗した二人に問いかける。


「そ、それは……」


月守さんが視線を逸らす。

元より危険は覚悟の上だ。


だが、こんな好機も滅多にあるもんじゃない。

桜凛武装高校の生徒は朝倉のみ。

俺には、その朝倉っていう人が、この学校すら動かす程の力があると思う。

でなければ、こんなことはしないし出来ない。


「手荒い祝福だな」


ガイは冷笑を浮かべ、一瞬だけ小さく笑う。


「朝倉には誅伐あるのみ」


少女……いや、清王さんか……。

清王さんは、今は仲間だ。

これからは、清王さんと呼ぼう。


「相手に踊らされるのは好きではないが、致し方あるまい」


桜夜先輩も朝倉の話に乗った。


既に4人が朝倉の挑戦に乗った様子だ。


いいねぇ……。

このゾクゾクとした感じ……。

これが武者震いっていうやつかよ……。


「ふっ!逆にその舞台から引き摺り出してやるわッ!」


俺は嘲笑い、再びスピーカーを見上げる。


朝倉は自信に満々とした声だった。


だが、俺も自信に対しては負けていない。

これが、俺の集大成だ。


「…………」


俺の方に強く置かれていた美唯の手は、滑るように落ちていった。


「み、皆はそれでいいのッ!?」


月守さんは気が進まないのか、俺達を否定する。


「何もしないよりはマシだな」


「朝倉には誅伐あるのみ」


その問いに逸早く答えたのは、ガイと清王さんの二人だった。

ガイの言い分は納得できるが、清王さんの言い分は結構残酷だ。


「始まる前から、怖がってどうする?」


更に桜夜先輩がダメ押しをする。


「…………」


皆からの反発で、月守さんは黙ってしまった。


俺は桜凛武装高校のキャンバスを見渡す。


朝倉のいう通り、人は一人もいない。

朝倉のいっていることは、多分事実と考えて良いだろう。


「……わかった。行こう」


月守さんはうんっと大きく頷いた。


俺は残りの美唯を見つめる。

視線はずっと下を向いていた。


「美唯。行こう」


俺は美唯の目の前まで近づき、手を前に差し出した。


「なんか……嫌な予感がする……」


美唯の視線は低いまま、そう呟いた。

『嫌な予感がする』と。


「なに、心配はないさ。君達は私が守る」


先輩は美唯を横目にしながら、そう力強い言葉を送る。

その瞬間、美唯の顔は、縦にコクリっと頷いた。


「まず、朝倉がいると予測される放送室」


清王さんの視線は、放送室があるであろう場所を向いていた。

視線の先にあったのは、廊下だった。

俺は放送室がどこにあるかは知らないから、そう断言はできない。


「可能性は大だな」


ガイも清王さんと同じ所を見つめる。


俺達は今、+字路にいる。

+字路の下に位置するのが、俺達の居場所だ。

つまり、俺達が進めるのは、右、左、そして前。

後ろに行けば、玄関だ。


清王さんの視線は、前を向いていた。


「前か……」


その廊下は、太陽の光のみが照らしている。

照明はついていない。


そして、先輩が先頭に乗り出した。


くぞッ!!」



◇◆◇◆◇◆◇◇◆◇◆◇◆◇



俺達は先輩が先頭で、その後ろに横へズラッと並ぶ形態だ。

その歩速はゆっくり。

罠が仕掛けられている可能性が高いため、慎重に歩いて行く


「屍とは一体……」


桜夜先輩は疑問を吐いた。

あまり歩いてはいないが、今の所は屍のような物はない。


「罠」


清王さんが短く完結に述べた。

清王さんは表情をまったく変えずに、歩いていく。

その表情は、無表情のまま。


「でも、罠ってどういう……」


月守さんのいう通り、それが味噌だ。

罠とはいうが、まったく予想がつかない。

俺が思いつくのは、落とし穴とか、そういう原始的なものばかりだった。


「さぁな。実際に遭ってみないと分からん」


ガイは恐ろしいことを口にする。


どの程度の威力なのか。

人間を簡単に殺してしまうような威力なのだろうか?


元々、桜凛武装高校の生徒は桜凛高校の生徒を狙っている。

俺達に関わっり、校則に違反した桜夜先輩は、殺害命令を出されている。

つまり、一刻の猶予もないということ。


これらの事から導き出せる答えは、屍という名の罠の威力は相当なものということ。


「じ、実際にあってみないとなんて、そ、そんな恐ろしいこと言わないでよッ!」


月守さんは、恐慌から口調が速くなる。

『試す』という行為なんてできないし、してはいけない。

それは、死に繋がる


「焦っては駄目だぞ。その隙に狙われる」


先輩の忠告に俺たちは従う。

安堵の時間はないってことか……。

俺も必死に床を凝視する。

罠の仕掛けといえば、大抵が床のイメージがあったからだ。


「今の所は、罠らしい罠は見つかりませんね」


どのぐらい歩いてきたかはわからないが、今の所は罠とは遭遇していない。

そこで、俺は気になっていたことをいう。


「朝倉って何者ですか?」


俺はこのことがずっと気懸かりだった。

朝倉という人物は、さっき始めて知ったから、どういう人物か分からない。

だが、さっきの放送からするに、おおよその想像はつく。


「朝倉 佳紀」


俺の問いに桜夜先輩が答えてくれた。

朝倉 佳紀と……。


「朝倉 佳紀?」


俺はオウム返しに繰り返した。

すると、先輩は小さく頷いた。


「戦術科の代表だ」


「え……?」


一瞬、意味が分からなかった。

代表……?

朝倉が……?


って!戦術科!?


「戦術科って……桜凛武装高校の司令塔ですよね……?」


先輩から前にこんな話を聞いた。


『戦術科は桜凛武装高校の司令塔のようなところ』


その代表だと!?

俺は驚愕を隠せなかった。

その代表と俺たちは対峙しているのだから――


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