13話-(2)
ー君の魂に抱かれてー(きみのこころにだかれて)
この作品はフィクションです。
登場する人物・団体・地名・事件・世界設定などは全て架空の物であり、
実際の物とは一切関係ありません。
「君の魂に抱かれて」は本編とboy and girls' aspects
で構成されています。
初めて読む方は、本編からご覧ください。
俺達はビルの中、一階のロビーにいる。
俺達の話し声は一切聞こえない。
ただ、響くのは雨の音だけ。
『ゴロロロロロロロロッ!!!!』
遂に雷も鳴り出した。
雷が響いた方向には、光も視える。
この雷で突き動かされたように先輩が動き始める。
先輩はゆっくりと少年の所へ歩み寄った。
「君の名前は?」
桜夜先輩の一言で俺の気持ちも相当軽くなった。
相手だって心を持つ人間なんだ……。
何を躊躇していたんだろう?
こういうのは、積極性が大事なのにな……。
「俺は、桜凛武装高校射撃科2年Bランクの河坂 ガイ」
彼の背中には、スナイパーライフルが背負われている。
一目で射撃科だと理解できる。
「ガイくんか……私は……」
「知っている。至高の桜月導、桜夜 沙耶」
先輩の自己紹介を語ったのは、先輩ではなく、少年だった。
それに少年は、『知っている』と、
そして再び、『至高の桜月導』と。
気になった俺は、先輩に問いかける。
「至高の桜月導ってなんですか?」
先輩となんらかの関係はあることは分かる。
だけど、それが分からない。
「至高の桜月導。それが私の称号だ」
称号――!?
桜凛武装高校には称号なんてあるのか?
「称号ッ!?」
俺はオウム返しに繰り返す。
「桜凛武装高校の生徒は一人一人に称号が与えられる。そして、その称号はその人物を顕す」
先輩が称号について説明をする。
称号というのは、その人の人柄に沿って付くらしい。
「突然で悪いが、貴方に問いたいことがある」
少年から先輩へ問いかけてきた。
思ってもいなかったことだ。
しかし、かえって好都合だ。
「ん?なにかね?」
先輩も予想外だったようだ。
表情でそれが伺える。
「この世界は何処だ?」
単刀直入に用件のみを言い切る。
この二人は、この世界のことが知らないのか……?
「異世界だ」
その少年の問いかけに、先輩も単刀直入に答える。
だが、異世界と聞いても、少年の表情は変わらない。
「そうか……あと一つ、問いたいことがある」
「なにかね?」
一つってことはこれで最後なのか?
俺は先輩に何度問いかけたか……。
「何故、殺し合いが起きている?」
殺し合い……。
その言葉を聞いたとき、俺の背筋に電撃が走るように凍る。
「戦術科の命令だ。『桜凛高校の生徒を殺せ』と」
先輩は怖いくらい冷静にそういった。
だが、このことを聞いても少年の表情は驚愕どころか、変化すらなかった。
その話の内容は近くにいる少女にも聞こえているだろう。
なのに、少女すら態度を変えない。
なんでなんだ……?
どうして、そこまで冷静でいられるんだ?
俺からすれば、それが一番の驚愕だった。
「それは、確かな事実か?」
少年が追求する。
これは、確かな真実。
俺だって命を狙われた。
美唯だって……。
月守さんは被弾までしたんだぞ……。
「事実だ」
先輩は短くそういった。
少年少女は、疑う素振りすら見せなかった。
「…………」
その事を聞くと、少女はビルから出ようと、
正面入り口へ向かって歩く。
「翠華、何処へ行く?」
だが、少女の歩みは止まることはなかった。
「桜凛武装高校をただ誅伐しに行くだけ」
その瞬間、図ったように雨が止んだ。
どうしてこうもタイミング悪いかな……。
って、桜凛武装高校を誅伐ッ!?
誅伐とは、罪のある者や悪者を殺すという意味。
ということは……桜凛武装高校を殺しに行く……?
「私も行こう」
――ッ!?
桜夜先輩からとんでもない言葉を耳にした。
「桜夜先輩ッ!?」
どういうつもりか全然分からなかった。
何故、先輩がそんなことを……。
「私達の次の目標を思い返してみろ」
俺達の、次の目標……。
一番の目標は、仲間を増やすこと、
そして、次の目標は……。
「桜凛武装高校へ行くこと……」
提案者は俺であるのに関わらず、その存在を忘れていた。
危険を伴うが、それ以上に真実を知らないといけない。
その真実へ近づくため、桜凛武装高校へ行こうと俺が提案した。
「そうだ。"真の理由"を希求するのだろう?」
今が絶好の好機ってことか……。
俺は美唯と月守さんの顔を見る。
「行こう、潤」
「理由がわかるなら行った方がいいと思う。こ、怖いけど……。」
そうだな……。
逃げては何もならない。
逃げてばっかりでは何も得られない。
俺達は真の理由を確かめないとならない。
「よーしッ!」
俺は気合を入れる。
この言葉をいうだけで、相当気合が入る。
「待て!翠華!」
少年が始めて声を高めた。
その強い声に少女は反応し、足が止まる。
振り返りはせず、前を向いたまま。
そして、少年は桜夜先輩の方をみる。
「さっき言ったことは本当か?」
さっき言っていたこと。
それは、俺達も行くということだろう。
目的は違うが、味方は多い方がいい。
これをきっかけに、心を開いてくれるといいけど……。
「嘘は言わんよ」
先輩は真剣な顔を崩さない。
その顔は、誰が見ても疑わないだろう。
「ありがとう。よろしく頼む」
ありがとう……。
その言葉を聞いて、俺の緊張感は解かれた。
「翠華くん!私達も同行させてもらおう!」
その言葉と共に、少女は前へ歩き始めた。
「中沢くん、成沢くん、月守くん、真の理由を確かめに行くぞッ!」
そう言い残し、先輩はビルの外へ出る。
俺の眼は真実を視ることはできるのだろうか?
いや、絶対にその答えに辿り着いてみせる!
「先輩に続けッ!」
俺達はビルに別れを告げ、ビルを後にする。
そして、俺は空を見上げる。
既に夜、周りは閑静に包まれている。
明かりは、月明かりのみ。
そして俺達、6人は桜凛武装高校を目指した。
真の理由、真実を視るために――
ー登場人物ー
清王 翠華(せいおう すいか):(女)
桜凛武装高校射撃科2年でAランク。
称号『魔弾の誅伐人』(まだんのアンピネスト)
彼女の事を「魔弾」と呼ぶ人が多い。
それは戦闘時に見せる戦い方に語源がある。
彼女の銃には迷いがなく、一発で急所を撃つ。
使用銃はフルオートのハンドガンを左右に持っている。装弾数は17発
フルオートのため、連射が可能。
副装備にグレネード・ランチャー、を1丁所持している。
彼女がいつも左右に持っているハンドガンには、銃のフレーム付近にナイフが装備されている。
そのため、接近戦も可能で得意とする。
身長:164cm
体重:47㎏
B.W.H:88.56.90
血液型:A
髪色:白色、ショートカット
誕生日:4月29
河坂 ガイ(こうさか がい):(男)
桜凛武装高校射撃科2年でBランク。
称号は「精鋭の狙撃手」(せいえいのスナイパー)
彼の武器はスナイパーライフル。
マガジンは30発が4個。
副装備にはアサルトライフルを所持している。
マガジンは45弾が2個。
身長:176cm
体重:59㎏
血液型:A
髪色:黒壇色(黒茶系)
誕生日:10月10日
年齢:16
性格はクールで冷静。
その性格上、とても頼れる存在。
状況判断力が高い。




