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12話-(2) 

ー君の魂に抱かれてー(きみのこころにだかれて)


この作品はフィクションです。

登場する人物・団体・地名・事件・世界設定などは全て架空の物であり、

実際の物とは一切関係ありません。


「君の魂に抱かれて」は本編とboy and girls' aspects

で構成されています。

初めて読む方は、本編からご覧ください。


俺の意識が闇へ沈みかける……。

激痛は収まらないまま……。


深い深い闇の中へ……。


「潤!結界を消して!」


美唯の叫び声が俺に響く。


結界を消す……。


結界を消せば、美唯、月守さんを守る術はなくなる。

それだけはしたくなかった。

俺の命に代えても守ると誓った仲間。


声に出したいが、声にならない……。


「潤……お願い……」


美唯の雫が俺の顔に落ちる。


俺は――


また、美唯を泣かせている――


俺は残されていた力を振り絞り、左眼を見開く――!


「うおぉぉぉ――――――――!!!!!」


左眼が熱く滾る――!

この激痛の中でも、はっきりとわかる感覚。


その瞬間、俺の身体を蝕んでいた激痛が痛みが退いた。

その代償として、俺の前から結界が消える。


「はぁはぁはぁ……」


全身は汗で湿っていた。

あの激痛が嘘のように今は痛まない。


なんだったんだ……。


左眼の激痛……。


全身を蝕む激痛は……。


「潤!」


美唯が俺の胸に飛び込んできた。

俺はその美唯を両手でしっかりと受け止めた。


「美唯……ごめん……もう大丈夫だ」


胸が跳ね上がって鼓動を打つ。

額にも汗が滲む。


「よかった……潤……」


俺は美唯を抱きしめた。


もう今は何処も痛くない。


本当になんだったのだろう……。

さっきの激痛が幻のように思えた。


『ズド―――ン!!!』


「――ッ!?」


俺は銃声の方を見る。


そうだ……。


此処は戦場だったんだ……。

安息なんて許されない場所なんだった。


「沙耶先輩は!?」


桜夜先輩……。

俺は周りを見渡すが、先輩の姿はなかった。


「桜夜先輩……」


俺達をいつも守ってくれる先輩がいない。


だけど……俺が絶対に守る……。


俺は両手を広げる。

俺の手には、何も握られていない。

守るための武器も……。

今回ばかりはなかった。


「とにかく、この場からは離れるぞ!」


俺は二人の手を握り、

走り出す。


少しでも安全な所に行かないと……。


俺達は疾走する!


『ズド―――――ンッ!!!!!』


「はぁッ!?」


前方から銃声が鳴り響いた。

前方でも戦闘が……。


「こっちだ!」


俺は美唯と月守さんの手を握り、

右に右折する!


「潤……」


前方、後方は敵がいる。

なら、左右に曲がるしかない。


『ズド―――――ンッ!!!!!』


「くっそ……!!」


俺は右に曲がった。

近い!敵はもう目の前だ。


俺達の目の前に……俺の視野に……。


銃をもった女生徒が現れた。


「まずは、3人か……」


『カチャッ!』


銃を構える音がする。

左眼を見開くが、結界ができない。

熱く滾らない……。


「まずは、お前だ」


その冷たい声の主の視線は、月守さんを向いていた。

まるでこの状況を楽しんでいるかのようだった。


「――ッ!?」


狙いは月守さんか!?


『ズド―――――ンッ!!!!!』


俺が狙いは月守さんであると認識して間もなく、すぐに発砲された。

俺は何も出来ずに……。


「りんか――――――――――!!!!!」


俺には叫ぶことしか出来なかった。


その瞬間、俺の世界がコマ送りのようにスローで流れ始めた。

銃弾の狙いは頭だった。


「おゎわぁあッ!?」


だが、月守さんの持ち前の運動神経で頭を右に傾げ、間一髪で銃弾を避けた。


「避けたか……」


『カチャッ』


銃を再び構える金属音がする。

明らかにコイツはこの状況を愉しんでいる……。


『ズド―――――ン!!!!!』


今度は誰をターゲットにしたのかさえ分からない速さで発砲した。


俺は……所詮……何も出来ないのか?

俺は桜夜先輩の背中に隠れるしかないのか?


だが、俺達には銃弾は来なかった。


俺は顔をゆっくりと上げ、女生徒の顔を凝視する。


「――ッ!?」


女生徒は驚愕の表情を顔に貼り付けたまま頭から大量に血を流していた。


あまりの惨劇に、俺の胃が噎せ返えってくる。

俺は慌てて手を口元に当てた。


俺達の前に女生徒がばたっと音を出して倒れ、その後ろに人影が現れた。

その人影は銃を構えていた。

構えていた銃口は、倒れるまえに女生徒の頭があった場所だった。


つまりは、この女生徒を撃った本人……。


俺の脳裏に、あの惨劇な光景が蘇る。

俺の顔から血の気が引く……。

死体を見るのは初めてじゃない……。

だけど……あまりにも生生し過ぎて、残酷すぎる……。


「人を殺めし者には、法より重いばつを」


女生徒の死体の後ろで、少女の声がした。

俺は顔を上げて少女の顔を見る。


その少女は、白いショートヘヤーで赤い瞳をしていた。


『カチャッ!』


その少女が、俺達に銃口を向ける。


「止めろ……」


俺は美唯と月守さんを守るために両手を広げ、少女を睨みつける。


「…………」


少女は真っ直ぐな瞳で俺達を凝視する。

銃口はこっちを向けている。

その銃は俺の見たことがない銃だった。

フレーム付近には、大型のナイフが付いていた。


しばらく睨み合いが続いた。


「翠華、止めておけ」


その少女の後ろから少年の声がする。

少年の声は陽気なものではなく、クールなものだった。


「…………」


少女は構えていた銃を下ろした。

それと同時に少年が俺達の前に歩み寄る。


「桜凛高校の生徒か……」


桜凛高校の生徒……。

そう少年は呟いた。


この少年少女は俺達とは制服が違う。

つまりは、桜凛武装高校。


「安心しろ。お前らを殺すつもりはない」


殺すつもりはない……。

確かに殺意は感じられない。

少年は大きな銃。スナイパーライフルを背負っていた。


だが、明らかに雰囲気が桜夜先輩とは違う。

重たい感じの雰囲気だ。


「貴方達は……?」


その重たい雰囲気の中、美唯は口を開いた。


「俺は、桜凛武装高校射撃科2年Bランクの河坂 ガイ。あの女は清王 翠華」


あの少年は「河坂 ガイ」

あの少女は「清王 翠華」

そして、二人とも桜凛武装高校の射撃科だろう。

少女の武器は銃だったからだ。


「俺は、桜凛高校2年の中沢潤。コイツは成沢美唯。この娘は1年の月守りんか」


俺も自己紹介を済ます。


「覚えておこう」


その後は沈黙が続く。

何を話せば分からない。


『ゴロロロロロロロッ!!!!!』


雷!?

俺の後方から雷の音が聞こえた。


振り返ると、青く光っているのが見える。


「雷……」


少女も俺と同じ所を視る。


「ああっ!!桜夜先輩だよ!きっと!」


この世界は電気は使えない。

だが、先輩の刀『雷切』は雷魂が宿っている。


至高しこう桜月導おうつきどうか……」


少年はなにかを呟いた。


「行くぞ、翠華」


少年は雷のした方向に向かって歩き始めた。


「…………」


少女も歩き始めた。


「潤先輩……」


月守さんが俺の裾を引っ張ってくる。


「俺達も行くぞ」


俺達も桜夜先輩のいる方向へ歩いて行った。



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