12話-(1) 対応を失った瞳
ー君の魂に抱かれてー(きみのこころにだかれて)
この作品はフィクションです。
登場する人物・団体・地名・事件・世界設定などは全て架空の物であり、
実際の物とは一切関係ありません。
「君の魂に抱かれて」は本編とboy and girls' aspects
で構成されています。
初めて読む方は、本編からご覧ください。
ー9月4日ー
この日もまた、この世界で迎えた。
初めてこの世界に堕ちたのは9月1日だった。
だが、未だにこの異世界から脱する方法が掴めない。
今日から行動が本格的になるだろう。
俺達は、あれから近くにあった公園で一晩を過ごした。
もちろん結界を発動させた。
そのため、夜中に襲撃にあっても無事。
その安全感もあって、昨日は結構寝れた。
が、何故か左眼が痛い……。
何でだろう?
◇◆◇◆◇◆◇◇◆◇◆◇◆◇
早速、俺達は仲間を探しに行動を始めた。
「人もいませんね……」
此処は市街地。
桜凛市で最も栄えている所。
此処なら誰かいるかもしれない。
希望を持って行ったが、この有様だ。
「随分と発展している所だな……」
桜夜先輩は周りの高い建物を見上げている。
「先輩はお買い物とかしないんですか?」
建物を見上げている桜夜先輩に美唯がそんな質問をする。
先輩の行動からするに、此処には初めて来たという感じだった。
「そうだな……あまりしないな……」
懐かしむようにそういう先輩。
太陽が照らしていて眩しい。
今日も良い天気だ。
「じゃぁ!普通の世界に戻れたら買い物しませんか!?」
ハイテンションな美唯。
『普通の世界に戻れたら』っか……。
「おお!それはいいな!」
先輩が笑みを漏らす。
「ああ!あたしもいい!?」
月守さんも話しに加わる。
俺は加わらないでその話を聞く。
「ああ、もちろんとも」
なんだか楽しそうに話ている。
その内容は現代世界に戻れたら……という話。
皆、目を輝かせて話している。
笑い声も聞こえる。
話を聞いている俺も楽しい気持ちになれた。
「潤は普通の世界に戻れたらなにがしたい?」
いきなり、美唯に話を振られた。
「そうだな……」
普通の世界に戻れたら……。
俺は何をやりたいのだろう?
俺は考え込む。
「また学校に行きたいかな……」
再び、あの日常に戻りたい。
それが俺の望み。
「そうだね潤……また戻れるといいね?」
「ああ、もちろん全員でな」
全員。
俺だけ戻ったて、俺の日常は取り戻せない。
誰一人欠けたら駄目なんだ……。
「りんかは?」
話を月守さんに振る。
「あたしは、妹に会いたい」
妹……。
月守さんに妹なんていたんだ……。
知らなかった……。
「え?妹いるの?」
美唯も初耳のようだ。
「うん。今、中3」
中学3年生ってことは、
月守さんとは一つ違いか……。
「そう……ちょうど受験生か……」
でも、どんな妹なんだろう……。
月守さんが可愛いから、妹も可愛いと思うんだけどな……。
俺は想像を膨らませた。
「桜夜先輩は何をやりたいですか?」
次は先輩に話しを振る。
何も考えていなかった先輩は考え込む。
「そうだな……君達と買い物がしたいな」
先輩は微笑みながらそういってみせる。
「そうですね!楽しみですね!」
お互いに笑い合う。
買い物か……。
確かに楽しみだな。
なんか、とってもいい光景だな……。
「じゃぁ、美唯先輩は?」
残りの一人、美唯に問いかける月守さん。
「秘密です」
美唯が即答した。
はて、何をする気なんだろうか……?美唯は……。
「え~~~!秘密!?」
「秘密ですっ!」
美唯は『秘密』言い切る。
聞いてきた本人が秘密か……。
「ほぉ~。一人だけ秘密か……」
そして、再び全員が笑い合う。
なんだか、あの日常に戻ったみたいだ。
だが、それは"たった一つの音"で崩れ堕ちる。
『ズド―――ン!!!』
「――ッ!?」
いつも唐突に訪れるこの音。
俺達は銃声のした方へ振り向く。
「あそこか……」
桜夜先輩はその場を凝視していた。
俺達の意思はもう決まっている。
「行くぞ!!」
その先輩の言葉と同時に、
俺達はその場へ駆け始めた。
◇◆◇◆◇◆◇◇◆◇◆◇◆◇
戦場が見えてきた。
これで何回目の戦場だろう?
が、今日の戦闘は今までとは違った。
「伏せろ!!」
左右にいた美唯と月守さんの頭を手で握り、地面に叩きつけるような勢いで伏せらせる――!
『ズド―――――ン!!!!!ッ』
この高音に左眼が反応 して左眼が熱く滾る――!
「はぁっ!!」
俺は一気に気力を集中させる。
その瞬間、俺達の周りを囲むような結界ができた。
結界の中にいるのは3人。
俺と、美唯、月守さん。
先輩は意図的に入れなかった。
先輩は既に銃を発砲した人と戦闘を繰り広げている。
先輩も結界内に入れてしまったら、銃を発砲した者も入ってしまう。
だから、俺達だけを守れるこの大きさにした。
結界の外では、先輩が戦闘している。
戦場が近い。だから俺は結界をそのまま維持する。
「――ッ?」
一瞬、俺の全身に激痛が走った。
一瞬だが、経験したことがない激しい痛み。
次の瞬間左眼が激しく痛みだした――
「ぐぅあああぁぁぁ――――――――――っっ!!!!!」
俺はその場に崩れた。左手で左眼を押さえる。
一秒たりとも耐えられない激痛。
それが、左眼を襲う。
「うわぁあああああああ―――――――――っっっ!!!!!」
声にならない叫び声を上げる。
その痛みは治まることはなく、さらに、全身までもが蝕みだした。
「じゅ、潤!?」
左眼からは赤い景色が見える。
眼から受け取った刺激を上手く脳で処理できない。
全身を引き裂き、全身が消滅するような激痛。
左眼を抉取りたぐらいに、我慢できない激痛。
俺は激痛に耐えられず、左目は左眼を抉り出そうとする。
が、手が思うように動かない。
治まらない激痛。
「じゅ、潤先輩!?」
二人の声が聞こえる。
だが、激痛で他のことが考えられない。
なんなんだ……。この激痛は……。