10話-(2)
ー君の魂に抱かれてー(きみのこころにだかれて)
この作品はフィクションです。
登場する人物・団体・地名・事件・世界設定などは全て架空の物であり、
実際の物とは一切関係ありません。
「君の魂に抱かれて」は本編とboy and girls' aspects
で構成されています。
初めて読む方は、本編からご覧ください。
「…………」
だが、言葉が出なかった。
心配を解こうとする言葉が出ない。
ただ黙っているだけだった。
「なにか分かったなら教えてよッ!潤先輩ッ!」
いずれは言わないといけないってことは分かっている。
だが、言ってしまっていいのだろうか?
心の中では迷いが生じていた。
「潤先輩ッ!」
これを言ってしまったら、俺達の関係はどうなってしまう?
今のままでいられなくなる……。
俺は仲間の決別を何よりも恐れていた。
仲間が決別すれば、それは"死"にも繋がる。
いや、それを恐れてはいけない。
俺達は、この世界のことをもっと知らないといけない。
なら……。
俺は『仲間』を信じた。
◇◆◇◆◇◆◇◇◆◇◆◇◆◇
俺が全てを話し終わったあと、月守さんは黙り込んだ。
その俺の話を、美唯も傍らで聞いていた。
「ぷぅ……あはははっ!」
月守さんがいきなり笑い出した。
思ってもいない反応だった。
「え……?月守さん……?」
「なんでそんなこと言えなかったの?あはははっ!」
まだ、その声は笑っていた。
俺は……仲間という関係が崩れるのを恐れていた。
だから、話すのを躊躇った
だけど……。
なんでだろう?
こうもあっさり否定されると、
身体も精神も、落ち着いた気がする。
「そんな事で、あたし達がバラバラになる訳ないじゃん!あははははっ!」
「――ッ!?」
俺はこの異世界に堕ちて、考え方が変わってしまっていたんだ……。
いや、俺は変わってしまっていたんだ。
殺し合いが日常の世界。
そんな恐怖と理不尽な世界の中、俺達は手を組み共に行動していた。
その時俺は、身を守ってくれる人。共に行動してくれる人を仲間だと思っていた。
だが、本当の仲間ってのはそんなもんじゃない。
俺の中で、『仲間』という言葉の意味が薄れてしまっていた。
『仲間』っていうのは……。
どこまでも信じ合って、
どこまでも助け合って、
いつまでも共にいる。
それが、"仲間"ってもんじゃないのか?
心で通じ合っていることを"仲間"っていうんじゃないのか?
決して裏切らないことを"仲間"っていうんじゃないのか?
俺の奥底の想いが、激情する。
その激情が、眼を刺激する。
「そうだよ!潤!それが仲間っていう存在でしょ?」
美唯も口を挟む。
俺はこんな世界でも、"かけがえのない"ものを見つけた。
どんな世界でも"かけがえのないもの"は俺の近くにあった。
それが、仲間―― 。
「ありがとう……美唯……月守さん……」
俺の一番大切なもの……。
自信を持っていえる。
俺が一番大切なものは"仲間と過ごす日常"
それを、『守るため』なら俺は戦う。
この異世界で戦闘が起こる理由が少し分かった気がする。
だが、本当の理由は分からない。
俺はこの異世界の"ほんの一部"しか知らない。
「一緒に、その理由を探そう!潤ッ!」
「ああっ!」
俺と美唯は強く手を握り合い、誓った。
今の俺に、陰りなんて一つもなかった。
今、俺はその扉を開け放った――