10話-(1) 仲間の真意
ー君の魂に抱かれてー(きみのこころにだかれて)
この作品はフィクションです。
登場する人物・団体・地名・事件・世界設定などは全て架空の物であり、
実際の物とは一切関係ありません。
「君の魂に抱かれて」は本編とboy and girls' aspects
で構成されています。
初めて読む方は、本編からご覧ください。
俺達は……。
この"世界"のことを知らな過ぎる――。
ずっと、桜凛武装高校の命令をずっと『狂気』だと思っていた。
いや、思い込んでいた。
その命令の真意を俺達は知らない。
知らないから『狂気』だと思っていた。
もしも、俺の考えが正しければ、
俺達の方が"狂気"になる。
人を殺す。
しかも、それは数人ではなく、何百か何千の単位。
そんな命令を実行する桜凛武装高校。
人を殺さないといけない理由。
それを狂気だと言いざるを得ない。
だが、必ずある"理由"がある。
俺達は"それ"を知らない。
「…………」
肝心な"理由"がわからない。
考えもつかない。
だが、"大切"が関係していることは確かだと思う。
でなければ、人を殺すことなんて出来ない筈……。
再び、黙して考えた。
……。……。……。
俺は自分が、桜凛武装高校の生徒という設定にする。
人には必ず大切なものがある。
もしも、人を殺さなければ『大切』が失われるとしたら……。
俺は人を殺せない。
だが、人を殺さないと『大切』が失われる。
――俺は即答は出来ず、しばらく考え込むだろう
これは、あくまで『俺の場合』
当たり前だが、人それぞれ考えも全く違ってくる。
殺す者もいれば、殺さない者、あるいはそれ以外の者もいるだろう。
この異世界は……。
"それと同じような状況なんじゃないのか?"
だから、桜夜先輩のように協力する者や、
俺達を攻撃する者がいるんじゃないか?
血液が逆流するように、身体ゾクッとする。
そして、命の鼓動が速まった。
手には、桜夜先輩から受け取った刀がある。
その刀が、ガクガクっと音を立てて揺れはじめた。
「潤先輩?」
そんな俺の姿を見て、月守さんが声をかける。
落ち着け……。
まだ、本当かなんてわからないんだ……。
あくまで、俺の一つの考えに過ぎないんだ……。
落ち着け……。
心に言い聞かせるが、鼓動は速まるばかりだ。
頭が妙に痛い。
どうして、人間は悲しいことがあったとき、頭が痛むんだろう?
この痛みは何処から生まれたものだろう?
このジーンっとする痛み。
頭に響き渡るこの痛み。
誰かを傷つけたときの痛みにも似ているかもしれない。
俺は落ち着かせようと、眼をおもっきり閉じる。
だが、痛みは引いてくれない。
俺が悪い方へ考えると、それに反応するかのように頭が痛みだす。
「ど、どこか痛いとか……?」
月守さんは横腹に傷を負っている。
それなのに、俺の身体の心配までしてくれる。
駄目だ……。
考えたってしょうがない!
落ち着け!中沢 潤!
「だ、大丈夫だよ!何処も痛まないし平気だよ」
「うそ……絶対にそれはうそッ!」
俺はまた……。
人に心配をかけている。
本当に駄目な奴だ……。
俺は……。