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9話-(2)

ー君の魂に抱かれてー(きみのこころにだかれて)


この作品はフィクションです。

登場する人物・団体・地名・事件・世界設定などは全て架空の物であり、

実際の物とは一切関係ありません。


「君の魂に抱かれて」は本編とboy and girls' aspects

で構成されています。

初めて読む方は、本編からご覧ください。



「この結界……」


月守さんには印象深かったようだった。

どうやら俺の結界は自由に発動が可能のようだ。


「潤、無理しないでね……」


美唯は結界のことに話を触れない。

これも美唯なりの優しさだ。


「じゅ、潤先輩……左眼の色が……」


月守さんは俺の左眼を見ながらそんなことを言う。

左眼の色がどうしたのだろう?


「俺の左眼の色がどうした?」


「いや……その……もう普通なんだけど……」


もう普通……?

つまりはさっきまでは違ったっていう意味か?


「結界を作った瞬間に左眼が黒く光って……」


左眼が黒く光る……?

発動時と言うことは、左眼が熱く滾るった時に、左眼も黒色に光ると言う事か……?


「でも今は普通?」


「あ、うん……」


つまり、熱く滾る間のみ、左眼が黒く光るらしい。

俺の眼にはそんなことが起こっていたのか……。


結界を発生したのは良いが、やはりメリットとデメリットがある。


『メリットは仲間を守れること』


『デメリットは周りの音が聞こえないことだ』


だが、これは仕方がない。

外部からの進入が不可能だからだ。

だからこそ、仲間を守ることが可能だからだ。


俺は『仲間を守る』を選ぶ。

それが、俺にできること。

それが、俺がしなくてはならないこと。



◇◆◇◆◇◆◇◇◆◇◆◇◆◇



すぐ近くで戦闘が行われている。

結界で身の安全が保障されたから、こんな事を思ったのかも知れない。


「……ん?」


俺はあることに気づいた。

今まで、俺にはそんなことを思う余裕がなかった。

恐怖でそんなことを思えなかった。

眼の前で起こることで精一杯だった。


「俺達は……何で……戦っているんだ……?」


戦い。それは、人同士の殺し合い。

この異世界では、それが日常と言ってもあながち間違いではない。


「潤先輩?何かいった?」


「…………」


俺は黙り込み、考える。


まず、戦闘の理由。

それは、桜凛武装高校戦術科の命令。

それに従うのが校則。


だが、これは人間の心理を考えるとおかしい。


武器と命令を出したって、そうは行動は起こさないだろう。


例えば、桜凛高校で考えると、校長先生が全員に武器を渡し、

『桜凛武装高校の全生徒を殺害しろ』

と、桜凛高校の生徒に命令をしても、誰一人従わないだろう。

例え、その人間の命令が絶対的なものだとしても。


何故、従わないか。

そこには、"理由がない"からだ。


『自分の命がかかっている』

『自分の大切なものがかかっている』


もしも、命令に"それら"の理由があればどうだろう?


その『命令』に従わなければ、"それら"は失われるとしたら?

それが、例え、狂気な命令でも……。


"自分" "大切"を守るためなら、誰だって戦うんじゃないのか?

それが"人間"なんじゃないのか?


だが、今、俺達はこの異世界の中で戦っている。

その行為に"理由"はあるのか?


何故だ――?

なんのために――?

どうして、俺達を殺す――?


疑問は膨らむばかりだ。

俺は桜夜先輩の一言を思い出してみる。


『この異世界には、桜凛高校の生徒と桜凛武装高校の生徒しかいない。

 そんな状況だったら、誰でも相手を全滅させれば元の世界戻れると思ってしまうだろう?

 細かいことまでは知らないが、そのようなものだと思う』


……。……。……。


俺は気が付いた。

これは、"間違い"なんじゃないか?


心臓が、ドクンっと大きく脈打つ。


本当にただ"異世界"から脱出するための命令なのか?

本当に"それだけ"の命令なのか?

本当に"脱出"のために、俺達を殺すのか?


ただ、それだけの命令ならそれはただの"狂気"

誰も従わないだろう。例え、戦術科の命令だとしても。

だが、桜凛武装高校の生徒はその命令を実行している。


何故だ――?


その理由は簡単だ。


「桜凛武装高校の生徒が俺達を殺すのは、もっと違う理由があるんじゃないか……?」


「え!?それってどういう……」


月守さんは少し身を乗り出す。


根拠はない。


俺は逆の立場で考えてみる。

もし、俺が桜凛武装高校の生徒だったら、

俺はそんな狂気な命令には従わない。

つまりは、桜夜先輩と同じ道を通るだろう。


だが、その命令に"俺の大切"がかかっているとしたら……。

その命令を達せなければ、100%の確立で"俺の大切"が失われるとしたら……。


だとするなら、俺の思考は"逆転"する。


「この異世界は……」


額を汗が濡らす。

背筋が凍るような感覚も同時に襲われる。


「ただ、人がいなくて、電気が使えない世界ではなくて……」


桜凛武装高校戦術科の命令が正しければ、

この異世界をどうしても脱しなければならない。

そうでなくてはいけない"理由"が必ずある。


異世界から脱するためには、

俺達を皆殺しにしなくてはいけない。


皆殺しにしてまで、命令を実行しないといけない『理由』がある。

だとするならこの異世界は……。


「桜凛高校の生徒を皆殺しにしても構わないくらい、脱さないといけない世界なんじゃないのか……?」


それが、俺の答え。

俺はこの考えは間違いだとは思えなかった。



だが、疑問は複数ある。


『何故、先輩はその命令に従わないのか?』


先輩は『そんな狂気な命令には従わない』と言っていた。

それに、先輩は『詳しいことは知らない』と言っていた。


そこから、導き出せる答え。


先輩はこの異世界を脱さないといけない理由を知らないから。

だから、先輩は俺達と『協力ができる』

この異世界の真意を知らないから。


頭がズキンッと痛み出す。


「俺達は……この世界の事を……"知らな過ぎる”……」



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