1話-(1) 日常の変化、世界の変化
ー君の魂に抱かれてー(きみのこころにだかれて)
この作品はフィクションです。
登場する人物・団体・地名・事件・世界設定などは全て架空の物であり、
実際の物とは一切関係ありません。
「君の魂に抱かれて」は本編とboy and girls' aspects
で構成されています。
初めて読む方は、本編からご覧ください。
ー2010年9月1日午前7時ー
『ピンポーン』
インターホンが不意に部屋中に鳴り響くのが、布団の中から聞き耳を立てずとも聞こえてきた。
『ピ、ピ、ピ、ピ、ピ、ピンポーンピンポーンピンポーンピンポーン』
しかしうるさいチャイムだ……。しかも連続……。
誰だ……。こんな朝早く……。
いや、この忌々しいチャイムの鳴らし方はアイツだろう。
その前に、こんな朝早くから俺の家に来るヤツは、アイツしかいない。
アイツだと確信しなかったら、かなり迷惑な客だ。
これが俺の毎日の目覚め。
そして、これが変わりのない俺の日常。
「はいはい。今出ますよ」
俺はまだ一緒に居たいベットと別れを告げ、着替え済ます。
もう9月か……。
この前までは、まだ夏だったのにな……。
四季が周るのは速い。
俺の住んでいる家は一軒家。まぁ、家って言っている時点で一軒家だろうけど。
ちなみに2階建てだ。
で、俺の部屋は2階にある。
だから、玄関に行くためには階段を下りないといけない。
寝惚けてるから階段には注意しないとな……。
そう思いつつ、俺は無事に玄関に着いた。
そして、ドアを開けるためドアノブに手をかけた。
が、ドアノブを捻て押すがドアはビクともしない。
あれ?おかしいな……。
金庫の扉みたいにビクともしない……。
「あッ!鍵が掛かってるからか!なら開かなくて当然だよなッ!アハハハハハ」
自分につまらないツッコミを入れてから鍵を開け、
これでもかっていうぐらい勢い良くドアを開け放つ――!
「うぉぉおおりゃああああああああああああッ!!!」
『ドスッ!!』
サンドバックを地面に叩き付けたような鈍い音が響いた。
その音と同時に、開け放ったドアに何かが当たった感覚がする。
どうせアイツだろう。
逆にアイツじゃないと困る。
宅配便とかだったら最悪だ。
知らない人だったら合わせる顔がない。
すぐにドアを閉めて部屋で引きこもるしかない。
新手の当て逃げってやつかな?
ちょっと違うか……。
俺のドアを開け放った威力は、アイツ以外の人間に直撃すれば、地面に血溜まりが出来るぐらいだ。
「きゃふっ!!」
案の定、美唯が短い悲鳴を上げながら、軽く吹き飛ばされている。
そして、頭を両手で抱え、しゃがみ込んでしまった。
ドアが頭に直撃したようだ。
痛そうに……。よりによって頭かよ……。
今日の美唯の運勢は最悪だな。
「おお、おはよう美唯ッ!!本日はお日柄も良く……」
俺は無意識に空を見上げた。今日は蒼穹の空だった。
だけど、俺はすぐに青空から眼を背けた。
そして、俺は何事もなかったように爽やかに挨拶をする。
美唯の運勢が最悪だった今、せめて明るく接しなければ……。
あまりにも不幸過ぎる。
妙な使命感が俺の中で渦を巻く。
「つぅ……あたまがぁ……アンタねッ!」
アンタじゃないぞ。俺は親から貰った「中沢 潤」という大切な名前があるんだぞ。
美唯はしゃがみながら頭を抱え、俺をギロっと睨んでくる。
口語は少し荒んでいた。
痛さでか、怒りでかは分からない。
「ん?どうした?」
そんなに今日の運勢のことを気にしているのだろうか?
俺が勝手に占っているだけなのに。
俺が占っているということは、美唯は知らない。
「どうした?じゃないよ!」
『どうした?』を俺の声に真似て発音する。
俺はそんな声じゃないぞ。もっと美しいぞ。
まだ美唯はドアが直撃した頭を押さえている。
美唯の目は、少し滲んでいた。
ちょっと全力過ぎたかな?
まぁ、占いだからしょうがないか……。
「おお!どうしたんだ!美唯!何があった!?怪我はないか!?」
俺はわざとらしい演技と共に、美唯のところまで駆け寄る。
まったく心配は無用だが、一応心配そうな態度をとる。
まぁ、演技だけどな。
頭を強打すれば、"普通"は病院行き。
だが……コイツは違う……。
普通なら、脳震盪は免れないだろう。
「潤のせいでしょうっ!?」
俺と張り合えるぐらいに既に回復した。
コイツの生命力?には俺も驚愕の色を隠せない。
「美唯。『My skin is sensitive to the sun』って言葉の意味。知ってるか?」
俺は外人でも顔負けするぐらいの発音でそう言った。
「え?どういう意味?」
美唯は不思議そうに首を傾ける。
どうやら、言葉の意味を知りたいようだ。
「私の肌は太陽に敏感なの」
「知らないよッ!そんなことッ!」
怒りのあまり、美唯の口語が荒む。
美唯は痛み出したのか、再び頭を抑える。
「おお!美唯!此処でなにがあった!?」
俺はわざとらしい演技と声で美唯を心配する。
「潤のせいでしょッ!?」
俺は無言で頭をゆっくりと左右に振る。
「じゃぁ、何で、『うぉぉおおりゃああああああああああああッ!!!』っとか叫んでたの!?」
美唯が名演技と絶叫をしながら、俺に問い責める。
あの雄叫びを聞かれていたのか……。
「いや、あんまりプライベートなことって言いたくないじゃん?」
俺は小さく愛想笑いを浮かべながら、返事を返す。
本当はいうまでもなく、力を入れるためだった。
人間、力入れるときは、声もセットで出るんだよな。
でも実際に、声を出した方が力も入るからな。
「プレイベート?」
美唯はキョトンっとした表情を作る。
「マジかよ……やっぱ言わないと駄目なのか……?」
いかにもワザとらしい口語と態度でそういい、照れ隠しに俺はカリカリと頭を掻く。
「え!?なになに?」
美唯は興味津々の様子で、少し身を乗り出してきた。
「俺の家って家庭内暴力が酷くてな……」
「潤って独り暮らしじゃんッ!」
美唯のいう通りだ。俺は独り暮らし。
両親とは、既に決別している。
朝だというのに、俺の家には活気がある声は一切聞こえない。
いや、逆に活気があった方が不自然で恐ろしい。
俺にとって家族というのは、夢の幻なのだから。
活気が溢れていた昔が懐かしいな……。
別に独り暮らしが嫌っていう訳じゃない。
独り暮らしを始めたのは中学からだからもう慣れた。
人間の適応能力っていうのは恐ろしいものだ。
「はぁ~~~」
美唯が大きく溜息をしながら立ち上がり、制服に付いた土埃をポンポンッと手で払った。
そして、俺の表情を一瞬伺う。
「まぁ、いつもの事だろう?少しは学習しろよ」
確かにこれはいつもの事。
俺が猛スピードでドアを開き、美唯が直撃
まぁ、方式にするなら。
朝+猛スピードでドアを開ける=美唯に直撃
の方程式が出来上がってるからな。
その方程式を利用したのが、この占いだ。
「あんな猛スピードで開けられたら避けようがないでしょう!?」
いや、そんなことないだろう?
無数に方法はあるだろう?
それとも、俺のスピードが速すぎてどれも無意味なのか?
「いくらでもあるだろう?」
「え?そうなの?」
インターホンを押した瞬間に違う所に隠れるとかさ……。
まぁ、ドアを開けて誰もいなかったら腹立つけどな。
俗に言うピンポンダッシュって奴だ。
あとは……。
何かを盾にするとか……。
ん……?何かってなんだ?
俺のスピードに耐えられる物なんてこの世に存在するのだろうか?
そう思うほど俺のドアスピードには自信がある。
「ああ、それにしてもあの猛スピードのドアをもろ直撃したのに元気だな。毎日くらってるから、もう慣れたのか?」
初めての人なら下手すれば死亡。
俺も美唯以外の人に試してみたいと思うんだけど、流石に出来ない。
やってしまったら警察にお世話になるかもしれない。
「毎日くらってれば慣れないものも慣れるよ!」
怒りのあまり口調も鋭くなる。
美唯の方を見ると、どこも外傷もない。
美唯の防御力が高いのか、俺がテクニシャンか……。
まぁ、どっちでもいいや。
いや、やはり俺がテクニシャンか……ウフフフフフ……。
俺は怪しい笑みを心中で浮かべる。
「お前のその鋼のような防御力を得たのは、俺のおかげでもあるんだから少しは感謝しろよ?」
美唯の防御力は俺が認める。
「中沢 潤」という保障付だ。
しかもそれは、世界にたった一つしかない保障。
「鋼のような防御力なんていらないよッ!」
だが、美唯は即答する。
駄目だコイツ……なにも分かっちゃいない……。
心中で美唯を哀れ視た。
「そうなのか?俺は欲しいけどな……」
鋼の防御力。
男の俺には引き付けられる何かがある。
それは、男にしか分からないもの。
それが、
~男のロマン~
「女には要らないのッ!」
だが、美唯は即答した。
あ、そういえばコイツは女だったな……。
忘れてた。
「いや!絶対に必要なときが来るぞッ!」
俺は右手の拳を強く握り、力説する。
例え女でも必要な時が来るッ!
これは絶対だッ!
「そんなときあるか―――――ッ!!!!!」
『ズバシ―――――ッン!!!!!』
電光石火の如く、俺の腹部に美唯のパンチがクリンヒット。
お年寄りだったら五臓の機能が停止していただろう。
あと、心臓も止まってただろうな……。
なんて暴力女だ……。
まぁ、いつものことか……。
痛みで忘れてた。美唯は鋼の防御力は必要ないって言ってたな……。
絶対必要なときが来るだろうに……。
これだから女は……。
まぁ、これも~男のロマン~ってやつかな。
……。……。……。
待てよ……。
俺もいっつも美唯のパンチやら蹴りやらくらってるよな……。
だけどもう痛くない……。
俺も鋼の防御力を手に入れていたのか……。
いつのまに……。
老師……!
俺はこの修行を耐え抜きましたよ!
居もしない老師に心から感謝し、俺は心中で老師を拝む。
そして、賛美歌を謡い始める。
賛美歌ってことは老師はキリストのお方なのかな?
まぁ、いいや。
どうせ架空の人物なんだし。
「お前……それでも女か?」
疑いたくなるぐらいの暴力かつ威力。
女という仮面をかぶっているバリバリの男なんじゃないのか!?
毎日ひげを剃ってたりな……。
だから毎晩はひげ剃り機を充電してるんだろう?
その光景を想像した瞬間、背筋が凍った。
「女の子だよ!」
いや、嘘だな。
毎朝のひげのケアは大変なんだろう?
俺は心中で呟いた。
でも、体付きは女らしいな。
"身体"だけはな!
心には鬼が住み着いてるからな。それとひげ。
心に鬼が住んでいるなら分かるけど、ひげまで住み着いてるからな……。
ああ、怖い怖い。お清めしないと……。
「悪霊退散!悪霊退散!悪霊退散!アクラ退散!」
俺は高らかにお清めを始める。
本当は塩があれば完璧なんだけどな。
そういえば、お清めとかで使う塩は自然の塩じゃないと駄目なんだよな。
普通の塩だと効果がない。
それと、本当に悪霊がいればお清めの塩が溶けるらしい。
ということは、美唯の頭の上に天然の塩を積み上げれば塩は溶けるのかな?
溶けそうで怖いな……。
「アクラ退散?」
……。……。……。
アクラ退散……?
なんじゃそりゃ?
いきなり何を言い出すんだ美唯は?
ついに気が動転したのか?
「なんだよ?アクラ退散って?」
聞いた事のない言葉だな。
アクラ退散……。アクラ?
それが、美唯の本当の姿なのだろうか?
「潤が言い出したんでしょッ!?」
ああ、なんか言ったような……。言わなかったような……。
きっと、悪霊退散を連発しているうちに、いつの間にかアクラ退散になったのか……。
アクラ退散……。
アクラってなんだろう?
生物なのかな……?
何本足生えてるんだろう?
23本とか?
想像した瞬間、背筋に寒気が走った。
「……お前ってアクラ……?」
つい本音を漏らしてしまった……。
なんという失態だッ!
お、お清めしないと!
アクラ退散!アクラ退散!アクラ退散!
「え?何だって?」
美唯はわざとらしく俺に聞き返す。
こいつは幸運だ……。
「何でも御座いません」
聞こえてないのなら好都合だ。
いや……聞こえていたのか?
だとするなら、アクラは美唯の地雷。
踏んだら駄目だな。
今度からは気をつけよ……。
アクラで反応したってことは、美唯はアクラについて何か知っているのかな……?
まぁ、いいや。後でググろう。
「そうだったのか……鋼のような防御力だけかと思ってたが、アクラのような破壊力があるとはな……」
「誰がアクラだぁあああ―――――ッ!!!!!」
『ズバシ―――――ッン!!!!!』
俺のセリフを最後まで言えず、俺の腹部に蹴りがクリンヒット。
靴の底が俺の腹に直撃する。
聞こえないが俺の五臓が悲鳴を上げる。
そして、美唯の声が町内に響き渡る。
俺達は町内で見せ物なんじゃないのか?
俺達って意外と有名なんじゃないのか?
それにしても制服着てるんだから蹴りはないだろ……。
パンツ見えるぞ。ってか見えたぞ。
「さっき、靴底と一緒に薄い赤色のが迫ってきたな……あれってパン……」
「キャッ!!」
そう言い掛けたとき美唯は短い悲鳴を上げ、両手でスカートを押さえている。
美唯の頬が少し赤くなっていた。
俺がなにを言いたかったか理解したようだ。
そして、何故だが右手の拳がブルブルと震える。
「じゅ、潤の変態ッ―――――ッ!!!!!」
『ズバシ―――――ッン!!!!!』
強烈な右ストレートが腹に直撃。
美唯の右ストレートが肉を絶ち、骨を砕き、美唯の右手に絡みつく俺の臓腑を力で捻じ切ってくる。
ちょっと大袈裟過ぎたけどそれほどの威力だ。
俺の意識は一瞬、天に召された。
一瞬、神が視えた気がする。
周りは閃光が満ちたような白色だった。
その中心に神がいて両手を大きく広げている。
だけど、その神の顔にはモザイクが掛かっている。
あと何故か、その神は純白のゴスロリを身に着けていた。
年齢は大体23~99歳までのどれかだ。
性別は男性だろうが趣味までは分からない。
いや、純白のゴスロリを身に着けている時点で良い趣味とは言い難い。
第一印象が『キモッ!』
第二印象が『アクラッ!』
ああ、アクラってこんな感じなのか……。
俺はアクラは見たことはないが、きっとこんな感じなのだろう。
俺は神に右手を差し伸べる。
~神よ。俺は何をしたのだろうか?~
俺は神に問いかける。
この世界の神は理不尽過ぎる。
俺は別に見たくてみたんじゃない。
~美唯が自ら見せてきた~
というのが結果上の事実。
何故、俺が変態呼ばわりされないといけない?
だが、老師の長年の修行に耐えてきた俺には無力。
ウフフフフ……。
「まぁ、こんな所で話してたら遅れるぞ?」
これもいつも通り。
この言葉がなかったら、俺達は太陽が沈むまで話しているだろう。
「あ!ヤバッ!!」
美唯は慌てて腕時計を見る。
急いで行かないと遅刻の可能性すら出てくる時間帯だ。
だが、俺はあることをしていない。
「さてと、ゆっくりご飯でも食べようかな」
俺は焦っている美唯を横目に、居間に戻るため振り返ろうとする。
朝飯は学生の元気の源だからな。
しっかり食べないと保健室の先生に怒られるしな。
「そんな暇あるかぁあああ―――――!!!!」
『ズバシ―――――ンッ!!!!!』
俺の腹にパンチがヒット。
さっきから同じところを狙ってくる。
俺の腹にはダメージが蓄積されていく。
朝から腹に刺激はよくないだろ……。
勢い余って洩れたらどうするんだよッ!
それは、俺の社会的抹殺を意味する。
「……次からは……ちゃんとします……」
まぁ嘘だけどね!
この借りは明日返す!
「よしっ!学校行くよ!」
美唯は地面に置いてあるカバンを持つ。
なんでカバンが地面に置いてあったんだ?
重かったのかな……?
(ドアに激突した反動で吹き飛ばされたから)
その前になんだ?
『よしっ!』って……。
俺の飯は……?
元気の源は?
「俺の飯は?」
「ない!」
美唯が酷なまでに希望の欠片もなく即答する。
普通、幼馴染ときたら、
『ちゃんと作ってきたよ』
って言うのが通理のはず。
その幼馴染が暴力的で、俺の朝飯まで奪っていく。
世の中には色々な幼馴染がいるんだな……。
「鬼っすね」
俺には鬼にしか見えなかった。
あと、鬼畜とか阿修羅……。あと赤鬼青鬼とか太郎次郎……。
最後の太郎次郎は違うか。
「誰が鬼だぁあああ―――――!!!!!」
『ズバシ―――――ッン!!!!!』
「ちょぉわぁぁあおおおおッ―――――ッ!!!!!」
さっきと同じところにヒット。
しかも蹴り。
こら、またパンツ見えるぞ。
ってか、見えたぞ。
少しは女としてのデリカシーを持てっと言いたい。
それと、少しは学習して欲しい。
学習して欲しいのは以下の通りだ。
~朝の腹への刺激は厳禁だ~
一方俺は日本語翻訳不可能の言葉を発してしまった。
でも、日本語に翻訳するとどんな感じだろう?
ちょっと翻訳もつけてみよう。
『ちょぉわぁぁあおおおおッ―――――!!!!!』
(A定食お待ちしましたっ―――――ッ!!!!!)
てな感じかな……。
何でA定食なんだろう?
ちょっと違うかな……。
「せめて、カバンぐらいは持ってきてもよろしいですか?」
学校に最低限必要な物。
それは自分自身とカバンだ。
カバンを持たないで学校に行ったら『何しに学校来たの?』って話になる。
まぁ、そういう場合は『俺の存在そのものがカバンだ』
って流行語大賞を狙えるぐらいに、爽やかかつクールに言えばその場を切り抜けられる。
その代わりに俺の頭の心配をされる。
これは仕方ない。
等価交換ってヤツだ。
「そうやって逃げるつもりでしょっ!?」
いや、カバン取りに行くだけだし。
俺ってそんなに信用ないかな……?
『潤』と書いて『潤』とすら読める程なんだぞ!?
つまり、潤=信頼の的。
「俺ってそんなに信頼ないかな?」
俺が出来る最高レベルの真剣顔で美唯に問いかける。
この真剣顔、結構疲れるな……。
「そんなことはないけどさ……」
美唯の態度に変化が訪れる。
俺の気迫に敗れたみたいだ。
そろそろ表情崩そう……。
真剣顔は疲れる……。
「だろっ?『潤』って書いて『信頼の的』って読むんだぜ?」
デタラメの知識を美唯に教えつける。
『潤』っていう漢字で読めるのは、『じゅん』と『うるおい』ぐらいだ。
「……余計に信頼感なくした……」
余計ってなんだよ。
って!本当にそろそろ時間的にヤバイな……。
『信頼の的』たる者が遅刻なんて、もってのほかだ。
「ああ!わかった!これで俺が逃げたら全校集会の時に、全校の前で、やすき節を全裸で踊ってやろう!」
信頼を得るため大胆な行動に移る。
そもそも、やすき節なんて踊れない。
踊れるのは腹踊りぐらいだ。
「――ッ!?」
美唯は何を想像したのか、頬が紅潮してきている。
そして、美唯が視線で俺の身体のラインをなぞる。
俺の身体のラインなぞり終わった美唯の目線は、俺の下半身で止まった。
そして、更に頬を紅潮させる。
……。……。……。
本当にする訳ないだろ……。
全裸だぞ?法すら触れる行為だぞっ!?
「そこまで言うなら信じるよッ!」
流石は信頼の的、中沢潤。
見事に信頼を取り戻した。のか……?
「よーしっ!」
俺は二階に在る自分の部屋に戻る。
そのため、階段を上らないといけない。
エレベーターでも付けようかな……。
いや、エスカレーターも捨て難い……。
そう思っている間に、俺の部屋へ誘われた。
どっちにしろ、宝くじとかで当てないと無理だな。
ってか、俺はそんなに金は欲しくないし。
俺が欲しいものは……。
そういえば、宝くじのCMで2億円当たったとかで雪降らし機とか買ってたよな……。
あれ、いらんよな……。
「よーしっ!カバン、カバンっと……」
おお!あったあった。
俺はカバンを持ち部屋を出ようとする。
そして、俺の部屋を一望する。
いやぁ~、いつ見ても綺麗だねぇ~俺の部屋は~。
ウフフフフフ……。
「そういえば、信頼ってどういう意味だろう?」
部屋を出かけた俺に疑問が降り注ぐ。
意味の大体は把握できるが、『説明しろ』と言われたら案外難しい。
そんな俺の視野にパソコンが入って来た。
コイツは便利な道具だ……。
俺は椅子に座り、迷わずパソコンのスイッチを押す。
そして音を立てながらパソコンが起動する。
俺のパソコンはデスクトップだ。
しかも生死を彷徨ってる。
ネットをしてたら、いきなりブルー画面になるは起動中いきなり再起動するわ……。
そして、自分で招いた再起動でエラーを起こして修復の時間はかかるわ……。
本当に困ったパソコンだ。
極め付けは起動中にブルー画面になる。
こればかりは俺もお手上げだ。
あと、お気に入りの登録も出来なかったような気がする。
新しいパソコンでも買おう。
ノートパソコンがいいな……。
そう思いながら、俺はパソコンが起動するまで、待ち続けた。




