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7話-(1) 不思議

ー君の魂に抱かれてー(きみのこころにだかれて)


この作品はフィクションです。

登場する人物・団体・地名・事件・世界設定などは全て架空の物であり、

実際の物とは一切関係ありません。


「君の魂に抱かれて」は本編とboy and girls' aspects

で構成されています。

初めて読む方は、本編からご覧ください。



ー9月3日ー


この日の朝も異世界で目覚めた。


「ん……?」


眼を開けた。日が昇り、もう朝だった。

その夥しい日光が俺の眼へ直進する。


「ぐはああっ!?」


反射的に眼を閉じた。

太陽の光を直視するのはよくない……。

俺は太陽の光を避けるように寝返りをうつ。


眠い……。

こんなところじゃ、あまり寝れない。

早くベットで寝たい……。

ふかふかなところで……。


ふかふかか……。

俺のベットってそんなにふかふかじゃないよな……。

今度買い換えよう……。


「起きるか……」


鉛のように想い身体を持ち上げるように立ち上がった。

相当疲労がたまっている。

肉体面ももちろんだが、精神面もだ。


周りを見渡すと、先輩が剣を振り回していた。


「先輩……おはようございます……」


近くに行ったら命が危険になるから、遠くから話しかけた。

先輩は民族のお祭りのように、勢いよく刀をブンブンっと振る。

こっちまで、音が聞こえてきそうだ。


「ああ、おはよう。朝から眠そうだな」


止めずに先輩は、剣を振り回す。

これは先輩で言うと鍛錬らしい。


俺には昆虫の求愛行動でしか見えないけどな……。

それか、民族のお祭り……。


「朝だから眠いんですよ……」


朝は誰だって辛い。

俺の朝には強かったが、それすらも意味を成さない。

それほどに、眠れなかった。


「これだから若い者は……」


「先輩だって若いでしょう!?」


それにしても先輩は元気だな……。

こんなブンブン振り廻して……。


「今日はどうするんですか?」


「この異世界から脱するための術を見つけるッ!」


先輩が即答する。

俺もこれには賛成だ。


だが、探している途中に戦闘に巻き込まれるんじゃないか?

そんな事を考えてしまう。


「心当たりはあるんですか?」


「ないッ!!」


ブンっと大きく刀を振り、即答する。


だが、その術を仲間と共に探す。

危険で満々としているが、楽しみという気持ちもあった。


「さぁッ!行くぞ!」


先輩は鍛錬で使用していた、千鳥を前に出す。

随分といきなりだな……。

ってか、なんで千鳥を前に出すんだ……?


「行くってまだ二人は起きてないですよ……」


美唯と月守さんは寝ている。

月守さんも一緒に行ってくれるかな?


「千鳥に宿われし雷魂よ、再び、生ずことを請う」


先輩は何故か呪を唱え始める。

そして、千鳥の刃に電気が走った。


「今、此処に雷魂を開放する」


呪を唱え終わると、

千鳥の刃に電気が帯電する。


「立花道雪、雷切」


先輩が右手を高く上げ、雷切の刃が空を向いた。

嫌な予感しかしなかった。


「桜夜先輩!?」


俺の言葉をもろともせず、先輩は呪を唱え続ける。


「我が剣よ請え。全ての雷魂を飲み込み、正法を生じよ」


先輩が呪を唱えると、光で前が見えないくらいに帯電する。


「雷神正法、龍来」


『ゴロロロロロロロロロ―――――ッ!!!!!』


先輩から、雷独特の音が聞こえる。

かなり大響音。

耳を両手で塞ぐが、相当うるさい。


「ぎぎぎゃゃややややややぁああああああ――――――――――――!!!!!」


激しい雷音が響いている中で、二人の叫び声が響き渡った。


「二人共起きたか?おはよう」


先輩は刀を鞘に戻す。

そして、二人に近づく。


「「な!何ですか!?今の音!!!」」


二人は同時に同じ事を喋る。

意気投合している。

タイミングバッチリだ。


「良い目覚めだな」


先輩は爽やかな笑顔を二人に送る。

お年寄りだったら、完全に心臓止まってただろうな。


「強烈すぎますよ……」


美唯はそういうと、二人共身体を起こす。

かなり眠そうだ。朝の宿敵というべきか……。

それが睡魔だ。


「まったく最近の若い者は……せっかくの朝なのに眠そうな顔をして……」


「桜夜先輩も若いでしょッ!?」


確かに目覚ましが雷の音は強烈すぎる。

一生に一度か出来ないかの体験だ。


「では、行くぞ」


先輩はなんの躊躇もなく歩き始める。


「先輩~~~!待ってください~~~!」


美唯が走って先輩に追いつく。


だが、月守さんはその場を動かない。


「行かないの?」


その場で先輩を見つめていた月守さんに話しかけた。


「へ……?」


俺は月守の手を掴んで、強引に歩き始めた。


「ちょ……ええ!?じゅ、潤先輩!?」


俺は月守の手を握り、俺達も先輩に追いつく。

何故だか先輩は、怪しげな笑みを浮かべていた。



◇◆◇◆◇◆◇◇◆◇◆◇◆◇



「潤先輩……」


「ん?どうしたの?」


今、林の中を歩いている。

先輩は何処へ行くつもりなのだろう?


「えっと……その……そろそろ手を……」


俺は手を見てみる。

しっかりと握られた手がそこにあった。


「ああ!ごめん!」


慌てて手を離した。

ずっと握ってた何て……。

男として最悪だ……。


「…………」


月守さんも沈黙……。

しばらく続いた沈黙を破ったのは先輩の一言だった。


「月守くんは仲間に入ってくれるかな?」


仲間……。

今の仲間は、俺、美唯、先輩、だ。

そっか……。

まだ、入っていないのか……。

だから、月守さんは躊躇していたのか……。


「な、仲間ッ!?……ですか……?」


思い出したように『ですか』を付け足す月守さん。


しばしの間、考え込む。

俺達は黙してその答えを待つ。


「あ、あたしなんていたら、えと……足手まといですよ……?」


足手まとい……。

その言葉が鋭く俺の胸を抉る。

俺だって先輩の足手まといだ……。

先輩の背中に隠れ、先輩に助けられている。

俺ももう足手まといは嫌だ。


だが、その問に先輩が即答する。


「弱き者を助けるのが桜夜家だ」


それが、桜夜家の教えなのか……。

桜夜家ってどんなところ何だろう?

少し興味を持った。


「でも……」


月守さんの口語は口重で、自分の思っていることを上手く伝えられないようだ。


「安心したまえ。君達は私が守る」


心強い一言。

俺もその言葉を聞くと、安心する

だが、その一方で、自分が無力であることを改まって知る。


「ほ、本当にいいんですか……?」


月守さんは遂に決起する。

だが、表情は明るくはなかった。


「ああ、もちろんだ」


先輩は手を出す。

その手を迷わず月守が握った。


「よ、よろしく…お願いします……沙耶先輩」


きちんと月守さんの瞳は桜夜先輩を見つめていた。


ってことは……。仲間が増えたッ!?


これからも頑張らないとな……。


絶対に仲間と共にこの異世界から脱する。

更に俺の意思は固まった。


「ああ、こちらこそ」


二人はがっちり握手をする。

そして俺達は再び、この異世界の探索を始める。


「あ、あの……いきなりで…すみませんけど……この世界はなんなんですか……?」


月守が先輩に無粋な質問を問いかける。


そうか……。まだ、知らないのか……。


「知らないのか……。なら、説明しよう」


この事実は惨烈すぎる。

だが、知らなくてはならない。


この世界について。

この世界で起きている狂気について。

そして、桜夜先輩は話始めた。



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