6話-(2)
ー君の魂に抱かれてー(きみのこころにだかれて)
この作品はフィクションです。
登場する人物・団体・地名・事件・世界設定などは全て架空の物であり、
実際の物とは一切関係ありません。
「君の魂に抱かれて」は本編とboy and girls' aspects
で構成されています。
初めて読む方は、本編からご覧ください。
「よし、このカップラーメンというものでも食べるか」
桜夜先輩は3個カップ麺を出す。
なんで先輩はまたカップ麺を持ってくるんだよ……。
「先輩……カップ麺は食べれませんよ」
熱湯が無いから。
これを言うのはこの世界で2回目……。
「おっと!そうだった」
先輩がカップ麺3個を林へ投げる。
かなり飛んだ。カップ麺の行方を追跡するが、夜の闇に吸い込まれるように消えていった。
「ああああぁぁぁぁ―――――!!!」
美唯が絶叫する。
この光景には見覚えが……。
「ん?どうかしたかね?」
投げ終わった先輩が絶叫する美唯を見る。
「何で投げるんですかッ!?」
「食べれないのならお荷物だろう?」
この光景にも見覚えが……。
再び先輩が荷物に手を入れる。
何かを掴んだようだ。
「なら、このヤクルトと言うのはどうかね?」
先輩はヤクルトを3本を取り出す。
「先輩に食料を任せるんじゃなかった……」
思わず本音を漏らしてしまう。
カップラーメンとか持ってくるし……。
もっと恐ろしい食料を持ってきてあるんじゃないか?
ゾンビとか……ミイラとか……。
それを想像した途端に、俺の脊髄に電撃のように不安が走った。
「な!何を失礼な!?乳酸菌だぞ!?腸にいいぞ!?」
先輩は耳が良い……。
今度から気をつけよう。
「確かに乳酸菌ですけど……」
即、先輩が反論をする。
「朝スッキリだぞ!?」
……。……。……。
反論の方向を間違っているような……。
逆に異世界なら、朝スッキリの方が困るんじゃいかな……?
「それはそれで困りますよ!電気使えませんから、当然トイレ……」
「それは困る!」
そこまで言い掛けた時、
ヤクルト3本を林へ投げた。
かなり飛んだ。
ヤクルトの行方を追跡するが、夜の闇に吸い込まれるように消えていった。
「ああああぁぁぁぁ―――――!!!」
美唯が絶叫する。
「ん?どうかしたかね?」
投げ終わった先輩が美唯を見る。
「何で投げるんですか!?」
「明日が悲惨になるからだ」
再び先輩が荷物に手を入れる。
何かを掴んだようだ。
「なら、このヨーグルトと言うのはどうかな?」
先輩はヨーグルトを3個(小容器)を取り出す。
「乳酸菌ですよ……」
「それは困るっ!」
先輩は林に向かって、
ヨーグルトを3個投げる。
「ああああぁぁぁぁ―――――!!!」
美唯が絶叫する。
何だろう?この流れ……。
「ん?どうかしたかね?」
投げ終わった先輩が美唯を見る。
「何で投げるんですか!?」
「乳酸菌だからだ」
再び先輩が荷物に手を入れる。
何かを掴んだようだ。
「なら、この棒アイスと言うのはどうかな?」
先輩は棒アイスを3本取り出す。
見事に溶けていた。
「原型を留めてないですよ」
「なら、いらんッ!」
先輩は林に向かって、原型を留めていない棒アイスを3本投げる。
棒アイスの行方を追跡するが、夜の闇に吸い込まれるように消えていった。
「ああああぁぁぁぁ―――――!!!」
美唯が絶叫する。
「ん?どうかしたかね?」
投げ終わった先輩が美唯を見る。
「何で投げるんですか!?」
「原型を留めてないからだ」
再び先輩が荷物に手を入れる。
何かを掴んだようだ。
「なら、この豚肉と言うのはどうかな?」
先輩は生豚肉パックを取り出す。
「当たると痛いですよ」
「なら焼けばいい」
先輩が即答する。
まさかの即答だった。
先輩は鞘から千鳥を抜く。
そして、千鳥の刃を豚肉に刺す。
「先輩……?」
何をするき何だ?桜夜先輩は?
薄くスライスでもする気なのだろうか?
「千鳥に宿われし雷魂よ、再び、生ずことを請う」
先輩が呪を唱え始める。
一体何が起きるのだろう?
呪を唱え終わった直後、千鳥の刃に電撃が走った。
「え……?」
「今、此処に雷魂を開放する」
大きく千鳥の刃に帯電する。
これが雷魂の姿なのか!?
「す、すごい……!」
刃から流れた電気は豚肉へ。
本当に雷魂ってあるんだ!
それはすごい神秘的な光景だ。
「まぁ、しばらく待ちたまえ」
先輩は肉に電気を通している。
こんなことで使っても良いのだろうか?
刀に申し訳がないような……。
そして、パックが溶け始める。
溶けた液が肉へ……。
そして、液が肉に付着。
「先輩、もうその豚肉食べない方がいいです」
「そうなのか?なら用はない!」
先輩は刃で肉を刺し、林へと投げた。
何処へ向かって投げたすら、俺には分からなかった。
「…………」
遂に美唯まで黙ってしまった。
ここまで先輩が持ってきた食物が、
ことごとく食べれないとは……!?
いや、食べれる物もあったか……。
ヨーグルトとか……。
ヤクルトは飲み物か……。
再び先輩が荷物に手を入れる。
何かを掴んだようだ。
「なら、この米を食べるといい」
先輩は5㎏の米の袋を取り出す。
あの荷物俺が今まで運んでたんだぞ!?
どうやら、重い訳だ……。
「先輩、どうやって炊くんですか?」
水はある。
だが、火に耐えられる器がない。
だから、沸騰させることは出来ない。
「君はご飯の炊き方も知らないのかッ!?」
その言葉を俺はまるっきしカップ麺のときに返してやりたい。
「知ってますよッ!?」
「なら、動揺することはない」
先輩がこの場から去る。
また始まるのか……。
「少し待ちたまえ」
先輩が林の方へ消えていく。
◇◆◇◆◇◆◇◇◆◇◆◇◆◇
「今、戻ったぞ」
やはり先輩は石と枝と板を持ってくる。
そして、石を円状に並べ、
その中央に枝を置く。
やはり、始まるのか……。
第二次火おこしが……。
「これを受け取りたまえ」
先輩は俺に板と棒を渡す。
「やるんですね……」
それは、火おこしだった。
一日目もやった記憶がある。
「心配は無用だ。火に耐えられる器は用意してある。何も考えずにやってくれて構わない」
先輩は石が置いてある場所に行ったしまった。
火に耐えられる器があるなら、カップ麺も食べれたんじゃないか?
まぁ、こうなればやるしかない。
「わかりました……」
板の穴に棒の先を入れ、
火おこしを始める。
何で俺がこんなことを……。
そして、もくもくと火おこしを始める。
「頑張ってますね!潤くんッ!!」
美唯が近くに来て、妙な応援を始める。
今は美唯の声が雑音に聞こえた。
◇◆◇◆◇◆◇◇◆◇◆◇◆◇
黒い煙が立ち始めた。
さすがに2回目だと手慣れて来る。
そして、黒い煙は風に流され、
追跡用の兵器のように先輩がいる所へ……。
「ケホッ!ケホッ!ケホッ!」
先輩に黒い煙が直撃。
何でいつも先輩に直撃するんだろう?
引き込まれるように黒い煙は再び先輩へ……。
「ケホッ!ケホッ!ケホッ!」
世の中には分からないこともあると言うことかな……。
俺は再び、神秘的な光景を眼にした。
「中沢くん……!何か恨みでもあるのかね!?あるのなら口で言ってくれ!煙を当てるとは卑怯だぞ!?」
恨みなんて一切ない。
ただ、黒煙が恨みを晴らすように先輩へと誘われるだけだ。
「わざとじゃありませんよ……」
ここが頑張りどころだ。
俺は一気にけりをつけるために、一気に加速する!
「おおぉぉ―――――!!」
美唯にも力が入る。
「ケホッ!ケホッ!ケホッ!」
先輩は咳を出す。
また黒煙は先輩のところへ行ったのか……。
面白動画かなんかで投稿しようかな……。
おっと、火おこしの最中だった。
「うぉおりゃぁああああああ―――――!!!」
猛スピードで棒を回し、ラストスパートヘ。
そして、点火を確認。
俺は点火した板を石の中央に置く。
「おおっ!やってくれたか中沢くん!」
枝に次々と引火。
こうして、たき火は完成した。
「流石、火おこしの潤!」
「そんな称号いらん!」
俺は眠っている少女の近くに座る。
まだ、眠っている。
「よし成沢くん!米を炊くぞ!」
「わかりました!」
二人は米を炊き始める。
大丈夫かな……。
カリッカリな米が出来たりしてな……。
老人には勧め難い米だな。
◇◆◇◆◇◆◇◇◆◇◆◇◆◇
俺は少女が心配で米が炊けるまでの間、少女の傍らに座り込む。
「ん……ぁぁぁぁ……」
少女が声を漏らした。
眼を覚ましたのだろうか?
それとも、悪夢を視ているのだろうか?
「…………」
起こしたらマズイかな……。
俺は息を殺した。
「はぁッ!」
跳ね上がるように少女は起きた。
そして、被弾した横腹を押さえる
「痛いッ!?くはない……???」
痛いのか痛くないかハッキリして欲しい。
痛くないのなら、痛み止めが効いている証拠だ。
「大丈夫?」
驚嘆している少女に話しかけてみた。
「大丈夫ではないけど……痛くない……???」
横腹を押さえながら答える。
痛み止めって凄いな……。
本当に痛くないんだ……。
「助けてくれた……んですか?」
付け加えるように『ですか』を付ける。
少女は痛そうな顔は一切していない。
本当に痛くないみたいだ。
「いや、俺じゃなくてあの二人だよ」
俺は桜夜先輩と美唯を指差す。
治療をしたのはあの二人。
俺は応急手当とすら呼べない手当て。
しかも、それすら出来たかもわからない。
「ありがとうございます……」
少女がおれに頭を下げる。
「いや!俺は何もしてないよ!」
「二発目の発砲……」
二発目の発砲。
彼女が死を覚悟した瞬間。
そうだった……。
俺はそこで目覚めたんだ……。
「あの発砲を防いでくれたのは、え~と……貴方…ですよね……」
言葉を選びながら、慎重に話をしている。
敬語慣れをしていないのだろう。
普段は明るい子なんだろうな……。
こんな世界だったら、性格も暗くなるのも当然だ。
そんな中でも人格を保てるのは凄いことだろう。
俺が人格を維持できるのは、仲間がいるからだ。
一人なら、もうとっくに人格崩壊している。
「…………」
俺は黙ってしまった。
「だから……その……ありがとうございます」
少女は口重そうに言葉を発する。
そんな重たい空気を吹き飛ばすように、桜夜先輩の声が響いた。
「中沢くん!米が炊けたぞ!」
どうやら米が炊けたようだ。
本当かな……。
「さぁッ!君も食べよ!米しかないけどさ……」
人様が食べれる米が出来ているように……。
「えぇ!助けてもらったのに……ご飯までは……」
少女は両手をパタパタと振り、遠慮のポーズを示す。
だが、俺は少女の手を握りたき火の方へ歩いた。
「いいからっ!行こう!」
俺は抵抗する少女を半ば引きずりながらも、たき火の前に来た。
すると、少女を視た先輩が驚喜する。
「おおッ!先ほどの少女ではないかッ!!」
桜夜先輩が少女に近寄る。
そして、先輩が手を前に出す。
「私は、桜凛武装高校剣術科3年の桜夜 沙耶だ。よろしく頼む」
少女が迷ったが、先輩の手を握った。
「あ、あたしは桜凛高校1年生の……月守りんかです。よろしくお願いします。沙耶先輩」
月守りんか。
それが少女の名前。
やはり一年だったか。
「さ、沙耶先輩!?」
何故か先輩が狂態する。
その反応に、逆に少女が狂態する。
「え……?」
「あ、いや……、何でもない……」
何故か先輩の頬が赤い。
先輩が気取り乱すなんて珍しいな……。
黒煙でも浴びすぎて、どこかおかしくしちゃったかな……。
「で、私が桜凛高校2年生の成沢 美唯。よろしくね」
にっこりと美唯は笑いかける。
「よ、よろしくお願いします……。美唯先輩」
二人は握手をする。
次は俺の番かな……。
「俺は、桜凛高校2年生の中沢 潤だ。よろしくな」
俺も手を前に出す。
迷わず握ってくれた。
「あ、はい……。よろしくお願いします…潤先輩!」
潤先輩……。
何だが不思議な気分だ……。
桜夜先輩の気持ちが良くわかった。
名前で呼ばれると、何だが一味違うな。
しかも、可愛い後輩だからな……。
「さぁ、出来立ての米でも食べるぞッ!」
こうして2日目も終わろうとしていた。
俺達はどうにか2日間生き延びられた。
これから先のことは誰にも分からない。
だが、この異世界から出る術はまだ見つからない。
明日からは、その術を探さないといけない。
果てしなき未来へ――
仲間と共に――
ー登場人物ー
月守 りんか(つきもり りんか):(女)
桜凛高校1年。
戦闘に巻き込まれている所を潤が発見し、潤が結界を発動させ助ける。
このとき潤は能力を再び目覚めた。
彼女もまた、主人公と協力しこの異世界の脱出方法を探す。
友達も多く、明るいくスポーツが好きな少女。
運動神経はよいが、精神力は強い方ではない。
身長:153cm
体重:44㎏
血液型:O
B.W.H:77.52.76
髪色:蜜柑色(オレンジ系)、ショートカット
誕生日:5月14日
年齢:16