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君の魂に抱かれて  作者: 皐月-Satsuki-
boy and girls' aspects
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9月6日/侑eyes   その先にある真実の為に



「あ、あとは合流するだけだな。ぬぅっ!」


粢先輩は息を切らしながら、大量に調達してきた獲物を抱え込むように持つ。

それは俺も同じ状況だ。高く積み上げすぎて前すら見えない。


「お、おもっ! ぬぅ~!」


男の俺でさえ無意識にその言葉が出てしまう。


「だ、だらしないぞゆうっ! これぐらいどうってこと……」


ガタン……。

何かが床に落ちた音が静かに響く。


「うわぁっ!? MP7のマガジンが落ちた!? ゆうっ! 拾ってくれ!」


「無茶言わないでくださいよ! 両手も塞がってますし前も見え難いですし!」


「だからと言って見捨てるのか!?」


「今は仕方ないですよっ! ここでソイツを庇ったらまた多くの犠牲が……」


ガタン……。

今度は俺の真下から、何かが落ちた音が静かに響く。


「こ、この音はM1911のマガジンじゃないか!? それだけは落とすなとあれほど言っただろ!?」


「なんで音だけで解るんですか!?」


ガタン……。

今度は粢先輩から、重量感も感じられるものが落下した音が響く。


「うわぁっ!? 肝心のM1911を落としてしまったぁ―――!?」


「もう早く行きましょう!」


その後も粢先輩が主に落とし続け、集合場所に着く頃には獲物が約半分になってしまっていた。



◇◆◇◆◇◆◇◇◆◇◆◇◆◇



「あぁ~! 粢先輩グループ帰ってきたよ~!」


この間延びした声は奏笑だろうか。

どうやら食料担当グループは既に戻っていたらしい。


「うお、すっげぇ荷物だな。手伝うぜ」


「粢先輩~! わたしたちも手伝いますよ~!」


「……ありがとう聖夜。本当に助かるよ」


「あ、ああ、ありがとう二人とも。あと少しで肩が無くなるところだった」


それが冗談に聞こえないほどの量をここまで抱えてきた腕は完全に萎えてしまっていた。


「ああぁ~! ようやく解放されたっ!」


「良くやったゆう!」


パシンッと俺たちはハイタッチを交わす。もちろんそのハイタッチにも力が入らない。

その後は両者、がっくりと肩を落としてしまった。


「ま、まぁ二人とも随分と疲れているようだし休んだ方がいいぞ」


「……ああ、そうさせて貰うよ」


聖夜の好意をありがたく受け取り、休もうとした途端――


「はっ! もう笑えるまでに完璧だわ! 将来はサバイバル評論家として食べていこうかしら」


「お前は向きになると潜在能力が飛躍的に向上するよな。俺も正直驚愕してるよ。もう武装高なんて辞めてそっちの道を究めたらどうだ?」


「まぁこの世界から出れば考えるわよ。ってか武装高自体がサバイバルみたいなもんだから別に辞めなくてもいいんじゃない?」


「なら科を変えるという選択肢もあるが」


「それよ! こんな総合科なんて辞めてサバイバル科でも結成しようかしら」


「辞める前に辞めさせられるんじゃないか?」


「ええ、そうよ! 単位なんて一つもクリアしてないしGランクだし希望の光も何も見えないわよ! もう正直に言っていいわよ!? あたしは留年確定なんでしょ!?」


「ああ」


「……え? う、うそ……?」


「あと一回でも講義をサボったら取得できない単位があるからな。確か射撃の単位だったか」


「あ、あんな講義誰が受けるもんですか! あの先生はだたの変態じゃないの!」


「人のせいにしてるようだが、お前の射撃は俺並みに下手だからな。だからサボるんだろ?」


「あ、あああたしが蒼生と同レベル……!? う、うそでしょ……? そんなのってぇ……うそよぉおおおおおお―――!!!」


「そんなに絶叫するな! 俺も傷つくだろ!?」


良く通る男女の声が遠くから聞こえてくる。

まだ姿が見えないというのに話の内容も丸聞こえだった。

それほどに閑散としているという風に解釈も出来るが……違う解釈も出来る。


「あはは……、緋咲たちは元気そうだなぁ……」


粢先輩の乾いた笑い声。

どうやらあの二人は何だかんだ言っても上手くやっていたようだ。



◇◆◇◆◇◆◇◇◆◇◆◇◆◇



「よっしっ! みんな揃ったな! ミッションクリアだ!」


粢先輩の声も心なしか弾み、嬉しそうに聞こえる。

ミッションクリア、か。

その言葉を心中で呟いた瞬間、自然と頬が緩んだ。


「後は――武装高へ向かうだけだ」


粢先輩は武装高の在る方向へ身体を向ける。

その先にある真実の為に、俺たちは前に進まなくてはならない。

真実――随分と遠い存在かと思っていたがもう眼の前に在るのかも知れない。


「ふぅ、何だか最初とは正反対だな」


突如、蒼生先輩が微笑をもらす。


「え、何がおかしい?」


「俺たちは一番安全な所へ行くといって桜凛市の外を目指していただろ? それが今になっては敵の本拠地へ行こうとしてる。傍から見ても可笑しな話だ」


「……そうだな。でも今も昔も変わっていない事だってあるぞ」


「争いを皆無にする。だな?」


「ああ、そうだ」


俺たちは少しずつ変わろうとしているのかもしれない。

逃げれば逃げるほど、真実からは遠のき事態も悪化する。

俺たちは今まで逃げていたのかも知れない。


「沙耶だってきっと、独りでもきっと――逃げないで戦ってる」


自分に言い聞かせるよう粢先輩は何かを呟いた。


「よっしっ! 行くぞ! 武装高へ!」




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