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君の魂に抱かれて  作者: 皐月-Satsuki-
boy and girls' aspects
118/136

9月5日/さあらeyes 最期の記憶

ー君の魂に抱かれてー(きみのこころにだかれて)


この作品はフィクションです。

登場する人物・団体・地名・事件・世界設定などは全て架空の物であり、

実際の物とは一切関係ありません。

初めて読む方は、本編からご覧ください。



ーboy and girls' aspectsとは?ー


このモードは主人公の視点ではなく、

君の魂に抱かれての主人公以外の登場人物の視点です。


これにより、より世界観がわかりやすくなります。


※目次の場合、下に行くほど時間が最新です。



25話-(1) 約束~



「こ、このお姉ちゃんもやるぅ~!」


剣を使うあの紅い髪のお姉ちゃんと言い、銃を使うこの白い髪のお姉ちゃんといい強過ぎだよ!

これはさあら一人じゃ分が悪すぎるなぁ……。

そんな事を思いながらリロードを終えた直後、白い髪のお姉ちゃんは舞うように螺旋しながら左右の銃で交互に二発、着地時に身を引きながら一発、発砲した――!

あんな撃ち方で狙いが定まるはずないのに……。 なんでお姉ちゃんの撃った銃弾は吸い込まれるようにさあらの胴体に向かって行くの?

さあらはその三発の銃弾を空中で縦に一回転して避けて、着地前に三点バーストで発砲する――!

その攻撃もお姉ちゃんは予想していたかのように最小限の動きで避ける。


この時、さあらは確信した。


「銃じゃこのお姉ちゃんには勝てないか」


まるで役立たずの銃弾を全部フルオートで発砲して、銃を威嚇程度にお姉ちゃんに投げた。

銃である程度お姉ちゃんの視界を奪った最中、背中に両手を突っ込み、接近戦用の刀を二刀流で抜いた。

さあらは接近戦はあんま得意じゃないんだよぉ……。

でも、お姉ちゃんの刀は――


「お姉ちゃんは銃のフレーム付近に大型ナイフが装備されてるみたいだけど、それじゃぁー刀には敵わないでしょ?」


第一に先制攻撃!

今度は自信がある瞬発力でお姉ちゃんの距離を一気に縮める――!


「……ッ!」


お姉ちゃんは何度かさあらに発砲する。

だけど、銃弾は銃口の向いている方にしか飛ばない。

さあらは疾駆しながら全て銃弾を回避する。

流石のお姉ちゃんも少し唇を噛み締めているのが解かった。

よっし! このまま接近戦で行けば――!


ゼロ距離まで近づいたさあらはお姉ちゃんの肩目掛けて両刀で突き出す――!

だけど、刀が押し返される感覚がする。

さあらの刃先をお姉ちゃんはフレーム付近の大型ナイフの腹でカキンッ!と打った……!?

その光景に驚きながら後ろにザザッ!っと下がるさあらに、お姉ちゃんは左右一発ずつ同時に水平面撃ちをする!

これは左にも右にもかわせない。

なら……!


「さっきのお返しだよぉ!」


さっきのお姉ちゃんみたいに、さあらは二発の銃弾を両刀の腹で打った――!

打った銃弾の一つは、運良くお姉ちゃんの頬を掠め林へ消えていった。

出来るかどうか五分五分だったけど……上手くいったぁ……。

緊張感を解く為に、さあらの顔には無意識に冷笑がこぼれた。


その軌跡を後追いするように、お姉ちゃんの頬からはゆっくりと真紅の血が流れ始めた。


そして、さあらにとって嫌な長い間合いが生まれる。

一方的に攻めて攻めて攻めたかったのに、やっぱ思い通りに行かないなぁ……。

お姉ちゃんの鋭い眼光に思わず眼を逸らしそうになる。

すごい圧迫感……近づいただけで押し潰されそう。

これはお姉ちゃんが動き出したのと同時に動かないと駄目だな……。


お姉ちゃんの流した頬の血が地面に堕ちるのと同時に、お姉ちゃんは駆け出した――!

その初動を見切ったさあらもほぼ同時に駆け出した。


接近戦なら絶対に勝てる!

このお姉ちゃんは射撃科、剣術の特訓なんて疎かにしてるに決まってる!

さあらはこれでも記憶上は総合科のAランクなの!


さあらの必殺の剣戟もお姉ちゃんの息にも届かないで、刃身で受け止められる。

でも、お姉ちゃんのは銃のフレームに刃身が付いているだけ! 高速では対応出来ないはず!


それでも勝負に決着は訪れない。


「もぉ~! このお姉ちゃん剣術も上手い!」


さあらは近い間合いを一足で跳ぶように後退する。

後退するつもりはなかったんだけど……息が続かない……。

一方のお姉ちゃんは、好機とばかりに床を蹴ると、弾丸のような速さで二丁拳銃を同時に発砲してくる――!

酸素の足りなり重い身体を無理やり背転しながら避け、更に距離を取る。

だけど、さあらの真後ろから――


「ひぃっ――ッ!?」


思わず悲鳴を上げてしまった雷音がさあらの耳に響く。

その大音響にさあらは首を縮ませる。

こ、鼓膜がぁ……。


耳を押さえつけていると、銃を使うお姉ちゃんが前方で剣を使うお姉ちゃんが後方……つまり前後で囲まれてしまった。


「あちゃ~、前後で囲まれちゃったよ……」


これはまずい……本当にまずい……。

さあらはこの二人との私闘に勝てなかった。

その二人に囲まれたらもう袋の鼠ちゃんだよぉ……。

こんな場面でも、さあらの笑うクセはどうしても治らなかった。

だけど、笑うと冷静になれる。

さあらは二人に前後で囲まれているだけ。

右にも左にも動ける。

ふと横目で右側を見ると、もう一人のお姉ちゃんが遠くだけどいた。

敵は倒せる時に倒せってね!

これで流れも変わるかも知れないし!

それにこの場を乗り越えられるし一石二鳥だよぉ!


「まぁ、あのお姉ちゃんなら勝てるかな」


さあらは視線を茶髪のお姉ちゃんに向ける。

だけど、問題はあのお兄ちゃんだ。

あのお兄ちゃんは異能、結界を使える。

だけど、当然発動させるのに時間が掛かるはず!

えぇい! 考えるより先に行動ぉ!


さあらは自信のある瞬発力を使って、両刃を構えて疾走する。

さあらのの狙いは――茶髪のお姉ちゃんと結界のお兄ちゃん。


剣のお姉ちゃんと銃のお姉ちゃんも、さあらには追いつけないみたいだ。


既に間合いに入っていた。

一番恐れていたお兄ちゃんの結界も発動していない。

推理が苦手なさあらの読みが当たった!


さあらは左右の両刃を突きの太刀筋にする。

その刃先は、結界のお兄ちゃんと茶髪のお姉ちゃん。


悪く思わないでね。良く解かんない世界だけど、ここは戦場だから。


すると、結界のお兄ちゃんは茶髪のお姉ちゃんをもの凄い勢いで吹き飛ばした。


「じゅ、じゅん―――――ッ!!!!!」


その光景を直視したさあらの頭は真っ白になった。

このお兄ちゃんはあのお姉ちゃんを守る為に自分が犠牲になって……。


そして、徐々にその光景がさあらの記憶と重なっていく。


なに……この感覚……。

時が巻き戻ってあの頃に戻るみたいなぁ……この感覚。


さあらはこの光景を知ってる。

誰かを守る為に犠牲になるこの光景を。

深く思い出そうとすると、激しく頭が痛みだした。

なんでぇ……あと少しで思い出しそうなのに……なんで大事な所がすっぽり抜けてるんだぁ……。


思い出すのに必死になっていて、今やっている誰よりもさあらが許せない最低な事を忘れていた。


「じゅん―――――ッ!!!!! いやだよぉ……!!! 独りにしないでよぉ!!!!! じゅん―――――ッ!!!!!」


その言葉に、さあらの胸を貫くような電撃が流れた。

そして、記憶がゆっくりと流れ始める。



お姉ちゃん―――――ッ!!!!! いやだよぉ……!!! 独りにしないでよぉ!!!!! お姉ちゃん―――――ッ!!!!!



この言葉が、確かにさあらの魂に刻まれていた。

これは誰の言葉……?


なんでさあらの記憶があのお兄ちゃんの状況と重なっているの?


なんでさあらの手は……無意識に止まったの?


それはきっと、今やろうとしてる事が許せないから。

誰よりもさあらが――許せないから。


「なんでぇ……なんでそんな事できるの……なんでぇ……」


無意識に、記憶を手繰り寄せたような言葉を囁く。


「そんなことされたらぁ……殺せるわけないよぉ……さあらはアイツ等・・・・とは違う……! 絶対に違うっ!!!」


無意識に叫び出したさあらの記憶。

そして眼からも幾多の涙が零れ出した。


何が何で何なのぉ……。

さあらの記憶なのに何一つ解からない……。

もう嫌だぁ……気持ち悪くてもどかしくて、深く思い出そうとするだけで頭が痛み出してぇ……。

この魂に眠る本当の記憶と、後付けされたみたいな記憶……さあらはどっちを信じればいいの?


誰か教えてよぉ……誰かぁ……さあらを助けてよぉ……誰かぁ……。



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