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君の魂に抱かれて  作者: 皐月-Satsuki-
boy and girls' aspects
110/136

9月5日/侑eyes    追い込まれる妄信

ー君の魂に抱かれてー(きみのこころにだかれて)


この作品はフィクションです。

登場する人物・団体・地名・事件・世界設定などは全て架空の物であり、

実際の物とは一切関係ありません。

初めて読む方は、本編からご覧ください。



ーboy and girls' aspectsとは?ー


このモードは主人公の視点ではなく、

君の魂に抱かれての主人公以外の登場人物の視点です。


これにより、より世界観がわかりやすくなります。


※目次の場合、下に行くほど時間が最新です。



「こんな事をしていても時間の無駄だ。さぁ始めようか!!」


蒼井先輩のその声は、狂気の始まりを意味していた。


『子作り』


なにがどうなってこうなったかは分からないが、それを実行へと移そうというのだ。


「わ~い!さんせい~!」


奏笑が手をビシッと上げ、左右に揺らしている。

もう、俺には止められないのか……。


「菜月、お前なら分かるだろう?これがどういうことだが……」


「はぁ?なに言ってんの?」


失笑されてしまった……。

こっちは本気だっていうのに……。


「もう分かったよ……好きにしろ。だが……」


俺は最後に付け加えるように「だが」を付けた。


「だが……なんなの?」


「俺はやらないからな」


俺はそう捨て台詞を吐き、この場から去ろうとする。


「ああ、ちょっと侑!」


菜月の声は俺の背中から聞こえる。

俺を追おうとする菜月に、粢先輩がポンッと肩を叩いて止めさせた。


「私が説得しよう。君達は先にやっていてくれ」


「あ、はい……。分かりました」


その会話を背中で聞き流し、俺はそのまま森林に入った。



◇◆◇◆◇◆◇◇◆◇◆◇◆◇



「はぁ~~~」


俺は森林にあったどでかい大木に背中を当て、姿勢を下げた。

すると間もなく、ガサガサっと草葉を踏む足音が段々と俺に近づいてくる。


「ゆう―――!どこだ―――?」


粢先輩の声だ。

だが俺は特別、逃げるようなことはしなかった。


「おお、侑!見つけたぞ!」


俺を見つけた粢先輩は俺の所へ近づいてくる。

だけど俺は粢先輩に視線は合わせなかった。


「ゆう……」


粢先輩らしくもない切なくて儚い声が――ドキッと俺の胸を締め付けた。


「侑も私と同じなんだな……」


粢先輩が俺にゆっくりと歩みよってくる。


「え……?同じ?」


「侑も恥ずかしいんだろ?私もだ」


「は、恥ずかしい?」


俺は恥ずかしいだけなのか?

つまり粢先輩も……まだ心を持っていてくれてたんだな……。


「まぁ……確かに恥ずかしいというのもあるかもしれませんが……」


その言葉を聞いた粢先輩は微笑み、俺の傍らに腰を落とした。


「私が言い出した本人だというのに……情けないな……」


粢先輩はバツが悪そうな顔をし、少し視線を落とした。

そうか……。粢先輩が言い出しっぺだったんだ。

すると粢先輩が俺に視線を合わせてきた。


「侑と一緒になら出来るかもしれない……」


「え……?」


今、粢先輩はなんて言った……?

俺となら出来る……?だと……?


「粢先輩……それってどういう……?」


「侑になら見せてもいいかなっと思ってな……」


!!!!!!

まずい……今のストライクだったよ……。

そしてしばらく、意味深い沈黙が続いた。

これは嫌な沈黙だ……。


「だから侑、一緒にやらないか・・・・・?」


うう゛……。

粢先輩って以外に積極的だったんだな……。

一瞬、身体がクラッっときたぞ……。


「粢先輩は……本当にいいんですか……?」


徐々に俺の心も動き始めた。

絶対にしないと決めてたのに……。

粢先輩の色気というものは恐ろしいものだ……。


「ああ、もちろんとも。一緒に洗濯・・をしようじゃないか!」


……。……。……。


俺の思考が完全にストップした。

センタクッテナニ?

センタク?せんたく?洗濯!?


「センタク……???」


「な、何をそんなに驚愕しているんだ!?」


「…………あ、あははははは!」


なんだよ……そういうことかよ……。

子作り・・・なんて聖夜の……聖夜の……。

ただの嘘だったていうのかよ……!!!


「侑!?どうしたんだ!?何かあったのか!?」


俺は勢い良く立ち上がり、聖夜達がいる河川まで行こうと振り返る。

すると、粢先輩が俺の腕を掴み、進行を止めた。


「ゆう!?私を置いてどこへいく!?」


俺は逆に、粢先輩の腕を掴んだ。


「みんなで洗いましょう。そっちの方が楽しいですよ」


「な……!なんだと―――!!!」


あとで聖夜を殴ってやる……。

よくも騙したな……。

さっきまでの変な感情が憎悪に変わった。


「ゆう―――!お前は私と同じなんじゃないのか―――!」


「あははははは!今は違いますよ。誤解が解けましたので」


そういい、俺は空いている右手の拳を握り直す。


「な、なにがあったんだ―――!!!」


俺の手を振り放そうと、上下に強く動かす。

だが、今の俺の力は――

分かる。力が滾っているのが――


「わ、私はみんなの前で着替えるのはごめんだ―――!!!」


粢先輩がその言葉を発したのは――

既に河川に戻ったときだった。


粢先輩の大きな声で、洗濯中の皆は同時に振り返る。


「ああ……」


失態に気付いた粢先輩は口を両手で覆う。

そして、気付かれないようにゆっくりとそのまま後ろに下がっていく。

『穴があったら入りたい』

それが粢先輩の気持ちだろう。

再び林に戻ろうとしている。

だが、バレバレだ。


「璃桜先輩~!バレバレですよ!やっぱただ恥ずかしだけ……」


そう粢先輩に言った聖夜に――

俺は疾走する――


「うおぉぉおおおおおおおおおおおおおおっ!!!」


まるで外野からホームまで遠投するかのように――

俺は全力で聖夜の顔面を殴った。



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