9月5日/璃桜eyes 少女たちの服洗い
ー君の魂に抱かれてー(きみのこころにだかれて)
この作品はフィクションです。
登場する人物・団体・地名・事件・世界設定などは全て架空の物であり、
実際の物とは一切関係ありません。
初めて読む方は、本編からご覧ください。
ーboy and girls' aspectsとは?ー
このモードは主人公の視点ではなく、
君の魂に抱かれての主人公以外の登場人物の視点です。
これにより、より世界観がわかりやすくなります。
※目次の場合、下に行くほど時間が最新です。
ああ……。ようやく制服を洗える……。
この時を待ち焦がれた……。
男の子に制服を脱いだ姿を視られるのは、流石に嫌だし恥かしい。
私は男達がいる後ろを振り返った。
「お、男達はこっちを視るなッ!」
恥かしさのあまり、少し早口になってしまった。
「はいはい……」
蒼生は身体を180度回転させ、その場に座る。
「なんだよ……残念だな……」
聖夜は残念そうに口を尖らせ、背中を私たちに向ける。
聖夜に続いて、侑も背中を向ける。
な、何だか気恥ずかしい気はするけど仕方ない。
制服を洗う為だ。
私はもう一度男3人組を視る。
きちんと背中を向けているのに、何だか視られている気がする……。
「粢先輩~~~!洗わないんですかぁ~」
うぅ……。奏笑は全然気にしてない……。
「あ、ああ……準備が終わってからだ……」
「わかりましたぁ~」
ふぅ……。どうにかこの場は切り抜けられた。
準備とはいっても、洗剤を出すだけ。
やろうと思えばすぐ終わる。
だけど……。
私は手を震わせながら、ポケットへと手を近づける。
「粢先輩どうしました?手が震えてますよ?」
私の震えている手を、菜月は心配そうに見つめる。
「ふ、震えてなんて……」
ポケットの距離が縮まるにつれて、手の震えも増してくる。
私は周りを見渡す。
どうやら、皆私の準備を待っているようだった。
特に奏笑は表情にも滲み出でいる。
よっしっ!
私は覚悟を決め、ポケットに手を入れる。
どうせ視られるのは下着ぐらいだ。
そんなの恥かしくもない……しかも相手は女の子……。
ポケットの中には洗剤がある。
ビニールのような袋に詰め込めるだけ詰め込んどいた。
その袋に、指先が触れた。
これを出してしまえば、洗濯は始まってしまう。
ということは、制服を脱がないといけない。
それを想像した瞬間、頬がカァっと紅くなる感覚がした。
「粢先輩~?どうしたんですかぁ~?」
ポケットに手を入れたまま静止している私を、奏笑は不思議に思ったのだろう。
此処は上手く避けなければ……。
「て、手が抜けないんだ!」
私は手が抜けない様子を演技する。
もっと上手くやればよかったと後悔した。
「えぇ~~~!?」
奏笑は驚愕の表情を浮かべている。
こんな方法で騙せるのは、恐らく奏笑ぐらいだ。
気付かれるのも時間の問題か……。
私は空を仰ぎ見ながら、大きく深呼吸をする。
もう一度、深く覚悟を決めた。
「はぁっ!!」
勢い良くポケットからビニールを取り出す。
ああ、遂に取り出してしまった……。
「やったぁ~抜けたぁ~」
奏笑が大袈裟に喜んでいる。
抜けた?
ああ、そうか……。
ポケットから手が抜けない設定だったんだ。
「か、奏笑……さ、先に洗っていいぞ……」
私は奏笑に先に洗うように勧める。
私は最後でいい。
というか、最後がいい。
「なにいってるんですかぁ~先輩が最初にするのは決まりですよぉ~?」
「な、なにっ!?」
確かに部活などではそうかもしれない。
だけど、場合が場合。
先輩優先という方針は変更したい。
「え?いやなんですかぁ~?」
「そ、そんなんじゃない!」
強がってみせる。
マズイ……。奏笑のペースに乗せられてる……。
どうにかしないと……。
「さ、先に洗いたい人がいるんじゃないか?そっちを優先した方が良いと思う」
「ああ~!なるほどぉ~!流石は粢先輩ですねぇ~!」
ふぅ……。
最悪の事態は免れたようだ。
「先にやりたい人はいるか!?」
私は全員に届くように声を張り上げる。
すると、男二人が手を挙げる。
その手の主は蒼井と聖夜だ。
侑は手を挙げなかった。
侑は洗いたくないのだろうか?
何やら手をあげた蒼井と聖夜を説得しているようにも見える。
そうか……。侑も私と同じなんだ……。
蒼井と聖夜はその場を立ち、私達の所へ歩み寄る。
侑は視線を背中に向けたままだ。
「璃桜先輩は先に洗わなくていいんですか?」
聖夜は痛い所を突いてくる。
「ああ、先に洗いたい人が優先だろう?」
「いや、粢氏が一番やりたがっていただろう?」
ば、バカ蒼井!声がでかい!
蒼井の一言で視線が集まる。
「な、何を馬鹿な!やりたい人を優先にしたいというピュアで純粋な心が何故わからないっ!?」
「ふぅ……バカだな粢氏」
蒼井にバカ扱いされた……。
しかも鼻でも笑われた。
少しカチっとくる。
「な、なに……!?」
「全員、同時にやればいいだろう?そっちの方が都合も良い」
「やっほぉーーーーー!賛成っ!!」
聖夜は軽くガッツポーズをする。
「う、うそだ……最も恐れていた展開じゃないか……」
心で思っていたことが無意識に口にでた。
「何か言ったか?粢氏」
「な、何でもない!」
恥ずかしくなんてない!恥ずかしくなんてない!
恥ずかしくなんて……。
呪文のように繰り返し唱えた。
「蒼井も変態なんだ」
緋咲が話に加わってくれた。
これが最後のチャンスか……。
私はその成り行きを見守る事にした。
「俺は効率を考えているんだ。そういう下心は一切ない」
蒼井がいうと正論に聞こえる……。
「そうそう。男はみんな狼さぁ!」
聖夜は親指を立て、下心な発言をする。
すると、菜月が侑の所へ歩いていった。
私はそれを横目で見送った。
「衛藤氏。そういうことは思っていても言わないものだろう?」
「ってことは蒼井にも下心があるって意味?」
此処で緋咲が割り込んできた。
後の頼みは緋咲だけだ。
「はっはっは!」
笑って誤魔化した!
これはどういう意味だ!?
「こんな事をしていても時間の無駄だ。さぁ始めようか!!」
蒼井が言うとやはり正論に聞こえる。
私は――――