9月5日/緋咲eyes 月光想夜
ー君の魂に抱かれてー(きみのこころにだかれて)
この作品はフィクションです。
登場する人物・団体・地名・事件・世界設定などは全て架空の物であり、
実際の物とは一切関係ありません。
初めて読む方は、本編からご覧ください。
ーboy and girls' aspectsとは?ー
このモードは主人公の視点ではなく、
君の魂に抱かれての主人公以外の登場人物の視点です。
これにより、より世界観がわかりやすくなります。
※目次の場合、下に行くほど時間が最新です。
空に浮かぶ黄金色の満月を見つけた。
燦爛と輝く月。
その月を立ちながら仰いでいる。
あたしは、あんな雨で超濡れてる所で寝たくない。
だけど、雨のせいであんな所しかない。
だったら、寝なければいい。
簡単なこと。眠いけど……。
あんな所で寝るよりは、起きてる方がマシ。
此処は、寝ている集団から少し離れた所。
ここならアイツ等にも迷惑もかからない。
だけど、此処も足場が濡れている。
しょうがないか……。あんな雨が降ったんだから……。
「はぁ~」
この得体の知れない世界に来て、随分と溜息が増えた気がする。
今日で何日目だっけ……?
え~とぉ~
あたしは右手の指を折り曲げながら数を数える。
5日目? はぁ~~~。
また溜息が出る。
5日って長いのやら短いのやらぁ……。
はぁ~~~。
何であたしがこんなことに巻き込まれたんだろぉ……。
巻き込んだ奴、絶対に赦さない……。
強く握った右拳がブルブル震える。
本当に誰よっ!こんな事したのっ!
心が激情する。
だれよ……だれよ……だれよ……。
あ、朝倉だった……。
朝倉…………。
覚えてなさいよぉ!朝倉ッ!でっかい穴開けてやるんだからぁ!
あ、でも朝倉は命令をしただけか……。
じゃぁ、直接この世界に関係している人はだれ?
これは、自然現象だとでもいうの?
でも、なんで朝倉はそんな馬鹿げた命令を?
本当に意味はないことなの?朝倉の娯楽のため?
朝倉っていうのがそんな奴だから?
そんな事を考えていると……。
「なにをしてるんだ?」
「ひゃうッ!?」
不意に後ろからアイツの声がした。
あたしは驚きのあまり振り返れず、肩をビクっとさせた。
恐怖が抜けたところで高速で振り返った。
「お、お前か……」
それにしても、変な声を出したと後悔した……。
一生の恥だ……。
「お前って以外にもビビリ屋なんだな」
ビビリ屋?
このあたしが?
はぁっ!今のは事故よ!ええ。立派な事故だわ……。
「このぐらいで、あたしがビビると思う?」
両腕を組みながら、見下すように視る。
そうよ……。あたしはビビッてなんていないッ!
「緋咲ッ!!下ッ!下ッ!」
蒼生がいきなり叫び出し、勢い良く人差し指を地面に向ける。
「ヘビだぞッ!ヘビッ!」
「へ、ヘビッ!?」
慌てて足元を上げる。
うそッ!?ヘビッ!?
へ、ヘビなんて御免よッ!
「お前やっぱビビりだな」
え……?
その言葉で身体の動きが止まった。
「だ、騙したなぁ……」
なんでこうも簡単に騙されるの……。
生き物もいない世界だっていうのに……。
ヘビがいるはずないじゃない……。
「いや~、今宵も月が綺麗だな」
「は、話を逸らすなッ!」
あたしってもしかして、いつもコイツのペースに乗せられてる?
「お前は寝なくていいのか?」
月を見上げながら、あたしの心配をする蒼生。
「お、お前だって起きてるじゃないのッ!」
あたしは、あんな所で寝るなんて御免。
だから起きてる。ただそれだけ。
「まぁ、そうだな……」
何故か蒼生は、懐かしむような表情で月を見つめる。
こんな表情をする蒼生は初めてかも。
「どうかしたの?」
ちょっと興味があったから聞いてみた。
思い出に浸ってるとか?
なんだか笑えてきた。
「いや、どうして俺達はこんな所に来たんだろうなって」
こんな所に来た……。
蒼生とあたしは同じことを考えていたんだ。
なんだか、思考が読まれているみたいで複雑な気持ち……。
「あたしも、同じこと考えてた」
あたしも月を見つめる。
改めて視れば、すごく綺麗に輝いていた。
「お前と同じことを考えていたなんてな……」
不満そうな口調でそういった。
だけど、その言葉には嫌味はなかった。
「なによ、悪い?」
「いや、何も」
あたし達は再び月を見つめた。
いつかは、戻れるの?
あたし達は、あたし達が知る世界に戻れるの?
いいや、絶対に戻れる。
その瞬間、優しい風が吹き抜けた。