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異世界で暗殺された最強賢者、現代日本で病死寸前のおじさんに転生する〜莫大な資産と最強魔法で現代でも異世界でも無双します~  作者: 天音天成
異世界復讐編・第1章:大賢者の帰還と、腐敗した英雄たち

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第15話:再びの異世界。迫る探知の目と「因果応報」の決意

「それじゃあ……また少しの間、留守を頼みます。結衣」

「うん。任せて、宗くん。こっちのことは何も心配しないでね」


現代日本、東京のタワーマンション。

数日間の滞在で心身ともに完璧な休息を取り、ビジネス面での憂いも完全に払拭した俺は、再び異世界『グランツヴァル』への扉を開く準備を整えていた。


玄関先で俺を見送ってくれる結衣の首元には、俺が贈った蒼い精霊石のネックレスが輝いている。彼女をあらゆる脅威から守護する絶対の防壁だ。

彼女の笑顔と、その確かな絆が、俺に絶対的な「心の余裕」をもたらしてくれていた。


「必ず、無傷で帰ってきます。……行ってきます」


俺は結衣の髪を優しく撫で、そのまま振り返ることなくリビングの中央へと歩を進めた。

全盛期の肉体に満ち溢れる魔力を練り上げ、空間の座標を指定する。


「【次元跳躍ディメンション・ゲート】」


空間がひび割れ、眩い光の扉が出現する。

俺は躊躇うことなくその光の中へと足を踏み入れ、現代日本の快適な空気を背に、再び血と魔力に塗れた復讐の地へと舞い戻った。


◇ ◇ ◇


バリィィィン……ッ!


空間を突き抜け、異世界の隠れ家の地下室に降り立った、まさにその瞬間だった。


「……ん?」


大賢者の『絶対魔力感知』が、微かな、しかし極めて不快な「探りの波長」を捉えた。

俺が開いた時空のトンネルが閉じるほんのコンマ数秒の間に、王都の方角から発せられた不可視の探知網が、俺の転移の魔力痕跡トラッキングをなぞるように伸びてきたのだ。


「【次元隠蔽】。……そして【偽装座標展開】」


俺は咄嗟に指を弾き、俺の現在地から魔力の繋がりを完全に切り離し、代わりに王都から遠く離れた荒野へとダミーの波長を飛ばして探知を逸らした。


「……ふむ。ただの魔力探知ではない。空間の歪みそのものを解析する『高位時空探査』か」


俺は眉をひそめ、薄暗い地下室で思案した。

錬金術師ザンクと暗殺者ゲイル。この二人が立て続けに失脚し、さらに現場に魔法の巨大スクリーンという未知の術式を残したことで、残る英雄たちは「得体の知れない幻術士(俺)」に対して警戒レベルを最大まで引き上げているらしい。


「俺が空間魔法を多用していることに目をつけ、転移の痕跡から『俺の拠点』を探り当てようとしているのか。……なるほど、バカばかりだと思っていたが、多少は頭の回る奴も残っているようだな」


もし仮に、奴らの時空探査が俺のダミーを見破り、現代日本へのパス(繋がり)に気づいてしまったらどうなるか。

連中が結界を強引にこじ開け、結衣のいる世界へ「逆侵攻」を仕掛けてくる可能性は、決してゼロではない。


その想像が脳裏を過った瞬間。

俺の胸の奥底で、かつてないほどの冷たく、どす黒い怒りが沸点を超えて泡立った。


「……結衣の生きる世界に、あいつらの薄汚い足を踏み入れさせるわけにはいかない」


悠長にドローンで証拠を撮り、広場のスクリーンで告発映像を流して「社会的に抹殺する」などと、回りくどいことをしている場合ではない。

そんな隙を見せれば、奴らはその権力と残された武力を総動員して、俺の「帰る場所」を暴こうとするだろう。


「遊びは終わりだ。奴らには……直接、命の根源に恐怖を刻み込む『因果応報の処刑』を与えなければならない」


俺はアイテムボックスからドローンを取り出し、【光学迷彩】と【防音結界】を施して王都へと射出した。

まずは、現在の王都の状況と、俺の痕跡を探っている連中の中枢を特定する必要がある。


音速を超えて王都上空に到達したドローンのカメラ映像が、俺のスマートフォンに送られてくる。

王都はザンクとゲイルの失脚により、依然として大混乱の只中にあった。

そして、その混乱の中で唯一、異様なほどの平穏と熱狂に包まれている場所があった。


王城の隣にそびえ立つ、純白の大聖堂。

その周囲には、原因不明の病に苦しむ数万人の平民や貴族たちが、藁にもすがる思いで列をなし、「聖女様」「神官様」と祈りの声を上げていた。


「……やはり、ここか。信者の浄財という名目で暴利を貪る、最悪の寄生虫ども」


俺はドローンを大聖堂の尖塔から内部へと侵入させ、もっとも厳重な結界が張られている最上階の『教皇の間』へと向かわせた。

厚い扉を透過したカメラが捉えたのは、ベルベットのソファで高価なワインを飲む【白魔術師】セリアと、葉巻を吹かす【神官】ロイドの姿だった。


『……宮廷魔術師団からの報告はどうなっている、ロイド』

『空間の歪みを追跡させているが、敵は相当な手練れだ。先程も転移の痕跡を捉えかけたが、すぐにダミーの波長で巻かれたらしい』


ドローンの集音マイクが、彼らの焦りに満ちた密談を拾い上げる。


『忌々しい……! どこから湧いて出た幻術士か知らないけど、ザンクとゲイルが潰されたせいで、私たちの計画にも支障が出ているのよ!』


セリアがイラつきながら、宝石のついたグラスをテーブルに叩きつけた。

かつて「聖女」と呼ばれた彼女の顔は、贅肉と傲慢さで醜く歪んでいる。


『落ち着け、セリア。あいつらが消えようと、我々の「黒斑病こくはんびょうの特効薬」の在庫は地下に山ほどある。スラム街に撒いたウイルスの感染は順調に拡大している。……病が広がるほど、我々の特効薬の値段は青天井で吊り上がる。王国の富は全て我々のものだ』

『ええ、そうね。……あの幻術士がどこかの異空間に潜んでいるなら、次元の裂け目を見つけ出して、そこにウイルスを樽ごと投げ込んでやりましょう。それが一番手っ取り早いわ』


「…………」


イヤホン越しにその言葉を聞いた瞬間、俺の瞳から完全に感情の光が消え失せた。

自分たちが権力を握るために、平民街に意図的に病のウイルスを散布するマッチポンプ。

そればかりか、俺の潜伏先(現代日本)を突き止め、そこにウイルスをばら撒こうと画策している。


「……そこまで腐りきっているなら、もう容赦する理由は一つもないな」


俺はスマホの画面をタップし、ドローンのカメラを大聖堂の地下深くへと向かわせた。

暗視カメラが捉えたのは、厳重に施錠された巨大な地下倉庫。そこには、セリアたちがスラムに散布したという『黒斑病のウイルス原液』を詰めた黒い樽と、それを抑え込むためだけの不完全な『特効薬のポーション』が山積みになっていた。


俺はドローンの位置を座標マーカーとして、大賢者の時空魔法を発動させた。


「【物質転送アイテム・トランスポート】」


空間が小さく歪み、俺の手のひらの上に、大聖堂の地下にあった小さなガラス瓶が一本、音もなく転がり出た。

中に入っているのは、どす黒く濁った『黒斑病のウイルス原液』だ。


「これを飲めば、全身に黒い斑点が浮かび上がり、内臓から腐り落ちて数日のうちに絶命する。……お前たちが、何の罪もない平民たちに味わわせている地獄の苦しみだ」


俺はガラス瓶を目の高さに掲げ、冷酷な目でその濁った液体を見つめた。

彼らの非道を巨大スクリーンで群衆に暴露し、社会的に抹殺することは簡単だ。だが、それでは彼らが「病の恐怖」と「死への絶望」を真に理解することはない。


「お前たちが撒いた毒は、お前たち自身の体で味わうべきだ。……そして、自分がどれほど無力で惨めな存在か、特効薬を求めて地べたを這いずるがいい」


俺はウイルスの原液が入った瓶を握りしめ、静かに立ち上がった。

大聖堂の何重にも張り巡らされた防衛結界など、大賢者にとっては薄紙にも等しい。

俺は今夜、幻術士としてではなく、絶対的な『死の宣告者』として、あの傲慢な偽善者どもの寝室へ直接赴く。


現代日本の愛する人を守るため。

そして、彼らが踏みにじった民衆の痛みを、その魂に直接刻み込むために。


凄まじい殺気を纏った大賢者の姿が、隠れ家の地下室から、音もなく暗闇へと溶けていった。

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