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骸にも祈りを  作者: きたある


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連載にしたい、けど重苦しくない?

好きなもの全部乗せスペシャルにして本来の初作品でした。

これからは属性もりもりは控えようと思います。

「旅は道連れ、そう思いませんか。

そうであっては欲しかったんだけどね」

埋まっているはずの私の右隣に話しかけても、帰ってくるのは風の空虚な音だけだ。

風は背の大荷物と、首元の黒い、2,3枚も入らないだろうカード入れを揺らす。忘れないように、大切に。

何度も見てきた、改めて何度でも考えながら世界はりせっと?されたと、そう言われたのを思い出す。

私の記憶の事故も、その一環に過ぎないと何度も何度もそう思っている。実際に何度も見てそう、思う。

街のようなものを横目に見る。硝子なんてたいそうなものはもうすでに破片として散らばり足元の元建物と同化し、地面を数センチ盛り上げている。建物は高く天にそびえたつものもあれば、半ばで折れたものもあれば。

時々、土煙とともに折れていくのが見える。

象の足よりも大きいような、足跡が地面にスタンプされていたりモノが浮いていることなどはざらに、世界は人を失った。その代わりには怪物になり果てるか、限界まで狂うか、その概念であるか、それに値せずとも生きてしまった人がそこには残った、との話が浮かぶ。

そんな私の知識はある人の話で完結している。世界のじょじし?について、その人はこう言っていた。これだけは覚えておいてほしい、なんて言っていたっけ。世界は4度静かになった、と。1、2度目は人の住む町は元に戻った。

3度目には何かによって、四度目に人が棲むことすらできなくなり、沈黙がそこにはあったと。

道すがら、骨はたくさんある。ひっ、と声を上げそうになる。未だどうしても慣れないものである。

通れる黒い道は瓦礫で中途半端に装飾されている。

胡散臭いボランティア団体による支援は、このようなとこらでよくみられるがその姿はすでにない。

日々は入っているが、歩けないこともない。山道よりかはよっぽど安全である。こう闊歩する目的は生きるためにとまる場所を、お天道様のいるうちに。見つけることである。あまり選択はできないが、希望があるとすれば屋根のあるところがいいな、できれば黒光りする生物もいない。雑魚寝はさすがに勘弁してくれ、と苦々しいことを思い出す。戌や猪であれば何とか処理する手腕はあるが、狼は中途半端に逃げることもできない。

そんなたいそうなことを考えていれば壊れていない、2階建て相当の家が目の前にはあった。扉は蔦に覆われていながら、壊れかけの状態で佇んでいる。両隣の住居は既に空き地と化しているが、どう残ったのだろうか。

倒壊の気配もなく、大災害などの被害を受けなかったのだろうか。安全靴を履いたまま家に入れば鉄のような素材でできた調理場があった。

食べ物を入れる壊しにくい箱(冷蔵庫だっけ)には蠅がたかっていた。放棄、おなか壊す。

リュックからライトを取り出し床を探しているとビンゴ。鉄の反射光が見えた。

お楽しみは食糧庫。床下収納にはよくある。

私の成長期の時期で切り詰めて四日分、足りなくなってきたしようやく食糧補給ができると収納を内心ウキウキしながら開ける。

上には枯れ果てた花があったが、たまたまそこにあっただけだと軽くどかした。

「え?」

5,6歳の子供一人、小学生ほどが入れそうな場所には、異様な空間が沈黙していた。内部には飴色のしみが広がり、中央の破裂があった跡の真ん中には一冊の本がそこにはあった。

気持ちの悪い風景に嗚咽を感じながら、本を見つめる。

分厚く、本として恐ろしく高価な金の飾りで止められている。使われている皮は何を素材としているかわからないが黄色と茶色を混ぜた皮のない獣のような色をしている。よく見れば黒いインクで何か書かれている。

「_の日記」と読める。ごわごわした上から書かれているからなのか、また汚れはひどくおそらくアルファベットと数字、そして類関と書いてあるのであろうところはわからない。

少なくとも貴重だ。こうしてきれいに保存されているのだから。一旦持ち運ぼうと持った際本が揺れ、めまいがしたのは気のせいだろう、いやきっと、ほんとに多分。

水を飲んでいないせいだろうか、それとも?

居間、ベッドルーム、トイレ。くまなく見て回ってもどうしても何もなかったのだ。

いやに部屋が、多かった。廊下においては床が赤かった、染料だろうか。一か所を除いて。

廊下も、2階への階段も、灰色のカーペットが敷き詰められている。成果はそう、きれい目な部屋である。

書斎のようで、本棚が一つたっていた。

全体的に見るに、生物に関して何らかの博士だったのだろう。古い本はページを破りさえしなければ長く保存もでき、ついでに燃料にもなるという優れモノだ。なので、補給という言い訳で興味のありそうなものをいくつか先に拝借する。

他の扉よりも頑丈に、鍵穴のあるところだった。

上の人、私のような前任者だろうか。

部屋を見渡してみれば個人的な部屋のようだ。

育ての場所にもあればよかったのに。

ベットに本棚。そしておそらく木製であろうデスク。

外気にさらされている本の裏、かすれたインクを頑張って読めば2024年出版とある。今は20、いや2266だから約200年前か。

廊下を歩いているときに転びそうになった、という事故と驚異にして脅威のようなことはあった。というのも、そこには骨が転がっていた。部屋の前に。

骨だけの人体のようでありながら、よく見た時のそれは異常だった。というのも、頭部がなかったのである。腐っても数年探索をしていない。自然上ありえない状態だ。どこかに持ち去られたのだろうか。

食べる肉もないために羽虫も舞っていないが幸いだった。大嫌いなのだ、そういうのが。

口周りに布を巻いていて正解だった、鼻がおかしくなるのかと思った。そもそも正常な嗅覚があるとは言えないとしても、埃臭いのだ。これだけか、と手持無沙汰気味に本を広げる。紙の香りの代わりに、何か甘いものが焦げたようなにおいが広がる。なおさら、興味がわきながらも、内容を読み上げてみる。

人間、もとい動物界脊椎動物門哺乳類霊長目ヒト科、ヒト属ヒトにおいて「苦労」の概念は最初に生まれたのではないか、とつくづく考えることがある。

最初の人類は難儀したことだろう。問題しかそこにはないのだから。

食料は?生活は?そして身の回りのものは何なのだろうか、と。今日まで人が地球に棲む約72憶人の人種に発展したのには、必要で愛すべき多大なる死体の山の上に立つ人があるのである。笑っては、いない。

飲み込みあって大きくなり、襲ってくることもないただの変化において当然「何もない」はずはなく、そこには何らかの工程があった、はずである。そして現代において生き延びるすべを得た、その手段については説が存在している。

一つ目には、チャールズ・ダーウィンの進化論。

有名であるがゆえに、あまり説明の必要もないだろう。

いわゆる適応だ。キリンの首はもともと短かった。

たまたま長く生まれたものが生き残ったために今のかたちは首が長いものが起こったおかげで多くの食料にありつけたという例は多くが知る事実になり得よう。

変化の必要がない場所では変化、もとい進化は発生しないという例としてガラパゴス島がある。

2つ目に、ダーウィン以前の進化論で論じられたものにロバート・チェーンバスの進化論がある。

論だけで言えば、人間は思考を行っているがほかの生物は定められた道を行っているだけである、というものだ。

そして最後の説は、赤の女王……。

その先の2,3枚は破られているせいで見ることは叶わなかった。

その先のページは、ただの神のようだ。

何の収穫もなかった、と呆れふと見上げた先に困惑がそこにあった。

「え?」

外を見て思わず私は声を上げる。

家、もとい本の探索をしているうちに、お天道様のかんしは失せている。空にはあおい月がかかり、夜の住民の時間になってしまっている。一日のサイクルとしては早すぎるだろうか。いざとなれば手段はないことはないので大丈夫であろう。一応その旨を日記に着けて、寝よう。

ともかくまともに泊まれる場所だ、お世話になろう、と床に寝袋を広げて中に這入る。

不幸なことに、寝袋の中に本がいつの間にか入り込んでいたことに、気づいていなかった。

そして、今日から過ごす3日間の地獄を、私はまだ知らない。

弐 2 日目

朝日とともに目覚める私の体は、今日はお寝坊のようだ。

目が覚めたのは太陽が昇ってしばらくしてからだった。

そして驚愕し、疑問を抱く。

それは目の前の状態に対して、そして漂ってくる香りに対して。

状態に関して言えば、小奇麗になっているとでもいえばいいのだろうか。机も、本棚も、そして廊下にはごみ一つ転がっていない。かすかに埃が溜まっているくらいだろうか。

こんな観察をするよりも外の探索を続けなければ、まず落ち着こうと、荷物の中から水を取り出し、一口。

そうして少し、ほんの少し考える。

前記の状態を異常とも感じていない、というのがより私の第六感を掻き立て、逃げようとしていた。

何かが水面下で起こっているような、気持ち悪い感じが、

怪しい、おかしい、異常だ、と思いつつ気持ちは逆方向にここにいたいと感じている。

後者の私は行動を移す。

そして香りにつられた私が居間へと向かえばそこには調理済みの料理が鎮座していた。彼女が作ってくれたのだ。ところで、それは■だろう?

警戒心を持ちつつ、一定の距離をもって観察をすればメモがあった。内容は、励ましや気づかいを書いているようである。最後に愛してるとか書かれている。

聞き飽きた言葉も、なにも一人旅のために、どうしても心にしみてしまうのは仕方ないことだろう。

蜥蜴の直火焼きよりも、たんぱく(なまのむし)の踊り食いよりはましだろうと考えつつ食事を摂った。

小皿にとりわけ、毒見をするも何も問題なさそうだ。

パンに、ミルク、そして少しのチーズ。

この組み合わせは■■も好きだったな。

旅を始めてからは数度しかしていない、贅沢である。

私の好きなものだったはずなのに、どうしてわかったのだろう……。

まあいいか。今日は疲れてるみたいだし、本でも読もう。もっともっと知識を得るために、昨日拾ったものを。

……あれ?

そんな事、前は存在さえしていただろうか。

あれ?何かやることでも……あった?

何でもない、と何も考えなかったかのように修正されていることに、もう少し聡ければ気が付いただろう。

あれ、何だか、眠くなってきたきがすr……。

最後に視界に居たのは、開いて、ページがめくられている本だった。そこに腕が生えていたような、そんな気がした。

夢を見た。

私は自分の夢を諸事情で見ることはできない。どうも、そういう人であると教わったがよくわからない。

経験上、私はどうも他者の記憶の再生であることが多かった。俯瞰する視点のようなところから周りを見れば服のような布きれを纏った大人がたくさん見える。

私は白の、何の汚れのない水干のような服を着ていた。座っているよう場所は高い場所なのか、それは、見覚えがあるような、ないような。静寂がそこにはあったが、打ち破るものが一つ、若年程度の男性が、よくわからないことを叫んでいる。よく見ると、そこには鈍い光を放つ折り畳みナイフをもって突っ込んでくる。私はとっさに驚愕による硬直を打ち払い、その高い場所から逃げようとする。高い場所から下はピラミッドの側面のような石の階段をなしている。いつの間にか10歳ほどの身体になっていたことに気づきながら、私はにげ続ける。少し逃げたと思えば、チリンと、音がした。発生言を見るに、私の足元に金の鎖がつながっていて、それは頂点につながっている。

男は突っ込んでくる。そして腹部は……。

突然目がさめる。ハッとお腹を見れば、まだ内臓は無事だった。

そんな感覚を覚えてしまうのは気のせいだろう。

気が付けば夕方である。悪夢だと嫌な感情も、すぐに頭の中をするりと抜けていく。

彼女が料理をしている音が聞こえる。

いい香りがする。シチューだろうか。

足早に下に向かえば、彼女は姿を消していた。

どうやって消えたのだろう、なんて頭の隅に考えが浮かぶも、いつの間にか放棄してしまっている。

彼女のことだ、仕方がないだろう。

机の上にはシチューがあった。

一応、毒見をする。香りを、少し食べて味を確認しても本当に何もない。

小動物にでも食べさせてみたいが、良くある壊れた家にいるはずのそれらは、探索時に何の痕跡もなくいなかった。。これらのことを加味したとしても、食料は大事なものであることに間違いはない。2杯程食べたが、すぐには何の問題もなかった。孤児院の頃の、希少なお肉をうばい合ったこともあったっけ、と思いつつお肉を食べれば少し酸味が強い気がするがきちんとお肉である。

何処にあるかわかっているかのように部屋の電気をつけ、机に向か…わない。

視界に移らなければ忘れていたであろう、日記をつける。

前日の私によれば、対処策があるらしい。

一時的とはいえ、異常事態だと感じるためにバッグをひっくり返して確認する。内容はあらまし把握してはいるものの目的のものはどこにあるのか、良くわかっていない、何せ人のモノなのだし、こう余計なことを考えてれば気もまぎれることもあるだろう。

いつの間にかなくしていた十徳ツール、テントセット、マッチなどひっくり返しても赤い錠剤は出てこなかった。確か万能薬とか言っていた気がする。

「そー言えばこんなのもあったね。」

心底嫌と思いながら、そこに半封印したものを取り出す。2度と使いたくもないような、そもそも見たくもないような呪物がゴロゴロ出てきた。液体類はプチプチに包まれていて半透明な外見からは何が入っているのかもわからない。その内容物は、桐の箱に入った手のミイラに、熊の人形にトランプ等々。金きらの趣味の悪そうなバットもあったが、今はその空間が開いたままである。いつぞやの危険だった時に使ったのだ。

色々あの人からは聞いてはいた、現状は最悪、錠剤がないんならしょうがないか。

概念だの異常だのの類なら、とトランプの山の中からぱらぱらとめくり、赤のQ?を取り出す。私の知識の根源にして主悪の元、あの人曰く、身体的な異常への適応ができるようになるらしい。聞いたことを書いたメモをペンダントからごそごそと取り出し、目を通す。

ルールは3つ。

一つ、そのまま飲み込むこと。

一つ、自身の精神が有利であること。

一つ、仲良くすること。

ルールはあくまで実戦闘を伴う可能性があるので、といった注釈が書き加えられてはいるが、客観視がない時点で相当に該当しない。特に2つ目と3つ目。部の悪い賭けになることは仕方ない、触った感じの感触で言えば、かみであると判断できるこれを呑み込むというのはいかがなものかと欝々しい気持ちがする。

「2度目であっても慣れないな、これは。」

とぼやきつつ恐る恐るそのカードを丸めて、飲み込

口の中、のどの異物感は身体にある違和感をなくしていく。起きて目が醒め、しばらくし鷹のような思考が戻ってくる感覚を覚える。改めて、大きな旗を立ててしまたような感じがする。

「怪物って何?」

と聞いたことがある。

あの人の言では、人間ではない異常な概念的なモノ、らしい。最近は観測者の減少によりほぼいないらしいが。

異常なものについて、沢山教わった記憶がある。

その人は地雷を踏んで血の華を咲かせたのが印象的だ。

あまりにも心残りは悪かった。

というのも、性格はよかったのだが、素行が悪すぎた。

たまたま、もしくは天の罰なんだろうか。

何度か目の前で死んだこともあった。

しばらくして、戻ってきた。

何事もなくハロー、と。

またかとは思った。

そんなことはなかった。

二度と、私にその声がかかることはなかった。

私の旅は終わった。あとは沈黙と、生きるためのものが残った。

思考は感情を掻き立てる。掻き立てられた感情から起こるのは忘れた、と思っていた記憶だっだ。

それと同時に急激な眩暈が、意識が急激に薄れているのがわかる。

全身の筋力と意志を全力で働きかけ、振り返れば彼女のような顔の何かが見えた、ような……。

参 3日目

目が醒めた。

そこには何もなかった。一面白である。

自分の体を見る。

拾われた時の、小さかった頃の自分がいた。

金の鎖はそこに、変わらずにあった。何故か。

そして視点を上げた先には、あの人がいた。

生きるための、人でないものの、知恵を授けてくれた、

恩人で、個人的で、跳梁跋扈する怪物たちの世界を渡り歩いた、プロのような。

そのくせ、アロハシャツ、長ズボンの全くに合ってない変人が、そこにはいた、顔は、何処にでもいそうではあるがその異常さは格好と、四肢の先からあふれ出すピンクのゲルでなっている。

「ハロー、ご機嫌いかが?」

「元気だよ、相変わらずその格好に合ってないぞ。」

「何言ってんの、最高だろ、これ。」

頭を振ればカラカラと音のしそうな会話が、親密性を表しているといっても加減ではない。

生きていたときのように、いつもそうであったように。

じっと、あの人は私を見つめる、すべてを見透かしたかのように。

「本来であればここのこととか、君の成長のこととか、経験とか聞きたいことはたくさんあるんだけどね。時間があんまりないので要点だけ話させてもらいますね、これから、知らね。」

いつものように、当たり前のように、こっちの話を聞くつもりもないらしい。それはそうだ、過去は知らない、お互いに不干渉だったっけ。

「タイミングが良くてよかったね、私のおかげもあるけど浸食がすすんでなくて。」

「???■■は何なの?あとどこからそれを視てたの?というかあれは何なの?」

「んー。渡したでしょ、トランプ。あれがすべて。

今回のは、本に関わる行為そのもので発生する本型の生き物みたいなものかな。

欲する知識の代わりに皮になるっていうとこ?」

「疑問を増やすな。」

5W1Hでそれぞれを語れと、そういいたいがそれを我慢する。要点を語ってもらうために、口をはさむのはご法度のような、そう学んだ気がするからだ。

「時間ないって言ってんじゃーん。ついでに言えば、私の知る限りでは、君もそういう向こう側だからね。拒否ってただけで。」

少し私の方を見ながら、もう余計な一言を付け加える。

「ああ、そっか。もう受け入れたらしいけど。」

それを聞いて、わかったような、分からないような。

おそらく覚えていない、というのが正しいのだろう。

私の物語の始まりは知らない。初めて見たのは、腐った何かの山だった。そして、自分の姿を取れるようになったのは、しばらくしてからのような、そんなことしか、覚えていない。

「何のことやら。」

そう私は純粋に、疑問をぶつける。

「んー。ところで一つ質問。怪物は死んだらどうなると思う?」

「消滅するんじゃないの?」

「フーン。問題です。私はどうして此処にいるでしょう。」

胸元を見ながら、■■は言う。

数秒の思考の後、私は想い浮かんだ、一つの可能性が浮かぶ。彼はにやにやしながら私を観察している。

「え?もしかしてカードになったりしてるんです?

どこかで見たことのあるような。」

「さっすが私の弟子一号、察しがよくて助かるねエ。

 それとも水晶虚無のバグのこと?

 霊魂のアイコンとか?

 もしくは今のカタカナのやつとかー?」

せっかく隠した情報を開示し、さらにひけらかす知識魔のリテラシーのなさに呆れながらも、懐かしさを感じる。

「ちなみにいうと、今回のは同系等。

 戦闘できなきゃ即アウトだったからねー。

 覚悟でもキメてくれなきゃねー。」

そんなメタ的に重要そうな要素を垂れ流す欲深い人間の骸たちの、成長のない口下手な会話は途中で遮られる。

卵の割れるような、平穏を崩し去るようなことによって。

パリパリでもないような、音がする。

「大丈夫なの⁈」

慌てる声と対象に、冷静な分析をする愛がこちらを向いて言う。

「んー。仮につくった防御空間ももう持たないのか。

 最後に一言、挨拶を。こちら側へようこそ。

 肉塊もがんばれ。」

その言葉は心に、私は妙な安心感と、納得を覚える。

初めてで、異常で、知らないはずなのに。

「それじゃ、行ってきます。」

壊れてゆく白異世界は、人として生きるのを放棄した私のように。

黒い黒い混沌に覆われて、外を見せていた。

白と黒を混ぜたマーブルのまま、外界が見えてくる。

「行ってらっしゃい、また会えることを期待してるよ。

 生きなよ、とだけ言っておくね。」

その声の主は見えるようで、全く見えず。

意識が遠のくのがわかる。しかしてそれは強制でなく、心地よく。

夢のような夢よりも、現実のような夢のふわふわとした感覚よりも。夢よりも現実の感覚が急に雑に大きく、私を襲っていた。それは、餓えた狼のように。

孤独であった自己に、貪欲に、暴走せんとする意志に支配されそうな、そんな感覚がする。

自分は何か、その根底すら押し流しそうな、うめき声の幻聴のする地獄の門の、押し寄せる亡者が団体で私をつぶさんとするように、視界は赤い肉の塊を映す。何かの骨なのか、白いものもそこには交じり。覆われながら、外の風景がなんとなく、見えるという異常事態だった。

ただそれでも一絞りの理性をもって、私は想う。

育ての親の教えてくれた、対異常の知識を総動員して。私は私を定義する。

「私は人殺しはしたくない。」

そう、空気の吐く肺で、音を震わす声帯で、発するための口で叫ぶ。

直後、肉が引いていく。

体の委縮する感覚に、私自身の体を見る。

それは、一般的な成長期の、14、15歳ほどの男児を形成している。

一回りは大きくなった私になっていた。

困惑はしない、もう疑問は飽き飽きだ。

こんなものだろう、と現実を受け入れよう。

今この形のまま、と。

周辺を見れば、床が私だったものの重みに沈んでいる。悪いことしたな、なんて見上げた先に人ではないもの、怪物は佇んでいた。

その姿はヒトの後ろ姿だけを真似し2つにくっつけた気持ちの悪い姿をしたものであった。その構成は肉と皮によるものでは到底なく、主に家の木の表面を張り付けた彫像のようで、気の弱いものであれば気を失わせることも容易にできるだろう。

怪物は私に叫び、罵る。

「モウスコシ、モウスコシダッタノニ。

アナタガワタシヲウケイレテサエクレレバコンナカタチナルコトモ。」

私はそんな戯言を聞き流して、バッグの奥底にしまい込んだそいつの本体、本をゆっくりと取り出し、見せつける。しばらく洗うこともなかったために、金の装飾や本体は汚れ、もはや見つける前よりも汚れを纏っていた。

「オノレ!」

と叫びつつ襲い来る怪物に冷静に、私は本を持った左の、肥大した腕を意識する。それはヒトのかたちでなく、五指は鋭い骨をなすように、そしてそれ以外は醜悪でもいい、大きく膨らんだものを。

次の瞬間、メキメキという音とともにその印象と同じものが、腕にとって代わっている。違う点といえば、3乗程度の太さの大きな指のような形状に動物のあばら骨のような骨が外側に飛び出ており、その先端は刃物のように度がっていることだろうか。

もはや怪物同士の一騎打ちであるが、優位はこちらにある。相手の心臓を、こちらが握っているという点だ。

一手。

鋭いネコ科の鋭い爪と指に生えたものをよけ、いつの間にか浮いていた物達でもって潰そうとでもしたのだろう。

私は腕を数回、軽く振るだけでいい、のだと思う。

本は紙片となって紙の山と化した。

数秒後、ものがごとごとと落ち、静寂。

「勝ったぞー!」

感情が高ぶるのも無理はない。

私が、生きるための手段として一歩を歩むことができたのだ。

それはそれとして。今夜はどこに寝床を得ようか。家主を追い出した此処でもう一泊というわけにはいかない。

私のせいで死んでしまったものにこれ以上ご迷惑をかけるわけにはいかない。

そうして私はまた旅に出る。

風は背の大荷物と、首元の黒い、2,3枚も入らないだろうカード入れを揺らす。少し重量を有するそれは軽くなっても、忘れないように、大切に。

街のようなものを横目に見る。硝子なんてたいそうなものはもうすでに破片として散り、青い青い空を移している。足元の元建物と同化し、地面が数センチ盛り上げている。建物は高く天にそびえたつものもあれば、半ばで折れたものもあれば。

その旅は、かつて生きるための、渇望のないものだった。今は、淡々と、一日の少々の食料と水のために。なるべく長く、沢山のものを、異常を見て。

生きるべきでない人も、生きてしまった人も私の回りから排除、もとい集めるために。

いつか食糧が必要なくなり、私がいなくなってもこれは誰かの手によってつながるだろう。

報告書

・この探査ののち、私はこのことの顛末を本の空きに記録することにした。

・異常と回収物について、今後も記録する。

そして、悩みに悩んだ挙句、もう一日長く滞在をさせてもらうことにした。そして、階の一階部の腐敗した部分から、夢に見たピラミッドのようなものと祭壇、金の鎖を発見した。また、その部屋においてステンドグラスがはめ込まれた跡が発見された。

・この家の元の使われ方は新興宗教であると推測できる。

となると、夢が示すのは教祖としての存在の代理と考えられる。

・この宗教のご神体は不明。しかし、祭壇において血と肉のこびりついた痕跡が発見された。

・家全体を捜索しても、最初に見つけた白骨遺体は発見できなかった。

・今回の探索後、黒い蛋白質や鼠などの生物を食べざるを得ない際、私は拒否反応をあまり示さなかった。どこかで食べた経験を積んだのだろうか??

「第一稿にしてはかな…おもひでってやつ?」

白い廊下を歩きながら、私の声は大きく響く。2,3人ほどの人数が通れる横幅を、壁沿いに読みながらは流石に見られたくはないオフの姿である。

酷く杜撰な、文化的な財産でもなく。私的にも公的にも使えないような報告書は鈍器にもなりそうな程に分厚い。7センチはあるだろうその一部の内容は、人に読ませる気のない独り言のようでどこか人の手の入ったような。少なくとも読んで空期間は伝わるなと考えていると、視界の端に人が映っていた。

「何やってるんですか?探しましたよ。」

眼鏡を掛けた女性、もとい助手であった。

その格好は奇天烈である。黒を基調とした修道服に実験でもしそうな白衣を着ていて、そのポケットから大量のペンのグリップのようなものが刺さっている。実際は護身用のナイフか何かだった気が。

「で、何のためにさぼってたのか言い訳はありますか?」

何処か知っている専門家を思わせる目に、私は鈍器を少し持ち上げる。

「いやー、ね、報告書の書き方忘れちゃって。

初心に立ち返ろうと思って。」

「それ、貴方の日記じゃないですか。どう考えてもそうはならないかと。」

訝しむ目は厳しく、私は顔をそむけると追撃が飛んでくる。

「で、何か収穫はあったんですか。」

どうにか許されたらしい。あとで何か作ってあげれば尚良しだろうか。

「いや、何も。

 今回の症状とは似てはいないけど若干の共通点があったぐらい?」

「上位者の自覚はないんですか?

そうですか、じゃあ戻りますよ。」

冷たくあしらわれる。やっぱり後で食事でもおごった方がいいだろうか。

頭をひねっているうちにも、助手は先に行ってしまっている。

「待ってってー。私がいた方が効率いいでしょ。」

意識する。自分の足を、飛び跳ねて移動するように。カンガルーだとか、バッタでもいいだろう。

足を畳むように折り曲げてよーいドン。あっという間に、速足の効率眼鏡を横目に目的の部屋で止まる。といっても、運動エネルギーのためにすぐには止まれない。

よって、私は地面にくいを打つように止まった。

衝撃で大穴が出来たが、まあ問題はないだろう。

すぐに元に戻るだろうし。

足を人のものに戻しているうちに、助手は追いついたようだ。

「パイルバンカーって命名するのはどうかな?」

微かな疲労を見せる助手に、お構いなく気軽に声を掛ける。

「んー。多分使い方が違うと思います。

こう無為に身体変化使う人はあなたぐらいじゃないですか?」

厳しい突っ込み。細かいところを気にしなければどうだっていいことも、彼女にとっては大事なことのようで。すると突然、触れられたくないところに触れてくる。おおよそ8割、いやがらせだ。

「そういえば命名で思い出したんですけど、私を名前で呼ばないのって知っている人と血がつながっているからですか?個体名って大事じゃないですか。」

随分嫌な顔をしていたと思う。

数秒の沈黙の後、私は口を開いた・

「……そういうことではないよ、タブンネ。

 大事だからこそ、私は猶更関わらない方がいいタイプだし。でもこうやって気にけてくれるところは私も好きだな。」

そういって彼女を見ると、顔を背けて手団扇をしている。顔でも赤いのだろうか。

「好きなんで、私そんな喜んでなんかませんし///。」

?よくわからない。どうしてそんな感情を見せているのだろうか。

とにかく、強引な話題変換で、会話をシャットアウトする。

「さてさて、客人を待たせていることだし這入ろうか。」

「そうですね、怒らせえても悪いですし。」

瞬時にキリっとキメ顔をするのを傍目に、私はドアを開ける。

胸元のカードケースが光を反射する。

そして、お決まりの挨拶を。

「こんにちは、骸相談所へようこそ。

 何についてお悩みで?」

感想兼ネタバレ

読者の皆さま初めまして、北アルです。

初めて作品の方出すのですがやはりどこまでの背景描写が必要かわからなかったものでとても長くなりました。今回は、倫理観のぶっ飛んだものたちの話を書かせてもらいました。

これを書くのに1週間程度、1年程度ネタを寝かせた感じです。頭をたくさん廻しました。

過去の私は残酷な描写はちゃんと書いてないと信じてます。今の私が見ればいい?知らない。

続編や番外編も描くつもりなので宜しくお願いします(商標大丈夫かな)。

ある程度それぞれについて知っていただけないと理解のできない話かもしれないので簡単に紹介を書いておきます。不特定多数にこの話を流すの、もしかして私ってヤバいやつ?(もう遅い)

設定:最後の報告書の身に書かれた祭壇は信者に身をもって食べさせることで多くの人を生き永らえさせる新興宗教団体でした。まあそんなことの起こした家に入ったのですから、末路はそうなりますよねっていう。

主人公の「私」はもちろん人ではありません。激やばスライムと旅してたんです。


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