表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

34/66

3-2:女子会

「それでは――満を持して!男子禁制! 第一回女子会、ここに開幕しまーす!はい、拍手ー!」


 パンパンッ!と、レミナが勢いよく手を叩く。 花が咲いたような笑顔と声に、部屋の空気が一気に明るくなった。

 

「……」


  ミコトはその勢いに押され、恐る恐る手を叩く。 テルルは戸惑いながらも、空気を読んでぱちぱちと軽く拍手。

 ただ一人、アルテットだけが腕を組んだまま、眉間に皺を寄せていた。

 

「ほら、アルテットも!拍手!」


  レミナがズイッと顔を近づける。

 

「……何でだよ。緊急呼び出しって聞いたから、怪我人どもに何かあったのかと思ったが……これは何だ?」

 

「だから女子会だってば!今すぐやらないと、私が疲れすぎて倒れちゃうの!わかる?」

 

「……いや、わからん」

 

 押しの強いレミナに、さすがのアルテットも半歩引く。

 

「わかるの!ほら、女子会したいでしょ? ね、二人とも!」


  視線を送られたミコトは小さく肩をすくめ、「じょ……女子会、したいです……」と消え入りそうな声を出す。


  「よくわかんないけど、楽しそう!やろ!」と、テルルは屈託なく笑った。

 

「……はぁ。わかった。やればいいんだろ、やれば」


 観念したアルテットは部屋の隅にある折り畳み椅子をガタリと引き、腰を下ろす。

 

「で、何を話すんだ?」

 

「やだぁ、アルテットったら……急にやる気!」

 

「お前がうるさいからだ!」

 

「こういうのはね、お茶を飲みながらお菓子をつまんでやるの!――じゃーん!」


 レミナは皿をテーブルに置き、保存缶からクッキーをざらざらと盛り付ける。

 

「これ……クッキーか?」


 アルテットが目を細める。


「戦時中の保存食で嗜好品……なんでこんなのが」

 

「ふふん、隠し持ってたの!それに――じゃじゃーん!」

 

 レミナが戸棚から金色の鉄製の箱を取り出す。 ふたを開けた瞬間、ふんわりと紅茶の香りが立ちのぼった。

 

「紅茶だよ!これもこっそり確保しておいたんだ」

 

「……やるじゃねぇか」

 

 アルテットの口元がわずかに緩む。 四つのティーカップに湯が注がれ、柔らかな香りが部屋に広がった。

 

「よーし、準備万端!――じゃあ恋バナしよ!時計回りで……まずはミコトから!」

 

 紅茶を口にしていたミコトは、びくんと肩を揺らす。

 

「えぇええっ!?わ、私ですか……」

 

「そうそう、あのメガネのフウマくんだっけ。どういう関係なの〜?」


 レミナは顎に手を当て、じーっと観察するような視線を送る。

 

「フウマは……そういう関係じゃ……」

 

「《まだ》そういう関係じゃないだけでしょ? 好きなの?好きじゃないの?」

 

 みるみる頬を赤らめるミコト。

 

「おいおい、尋問じゃねぇんだからやめてやれ。悪趣味だぞ」


 アルテットが低くたしなめるが、レミナはにやりと笑って肩をすくめた。

 

「いーや!クッキーと紅茶を提供した代金は“情報”で払ってもらいます!」

 

 すでにクッキーをつまんでいたアルテットは小さく舌打ちをした。

 

「えっと……パスで……」


 ミコトはバツが悪そうに断ろうとするも、「パスは却下!」と レミナは両腕で大きくバツ印を作る。

 

 ミコトは観念し、視線を落とした。

 

「……好きかどうかはわかりません。でも、一緒にいると安心して……ふとした瞬間に胸が苦しくなって……頭から離れなくて……」

 

「フウミコ来てるわ〜!」


  レミナは頬を押さえて身をよじる。


「それはね、完全に……恋だよ!!」

 

「えええっと……恋ですか?」

 

「うんうん、恋だよ! 完全に!」

 

「コイ……って食べられる?」


 テルルが首を傾げると、レミナは真顔で「そうね、甘酸っぱいわね…」と返す。

 

「いや、そこはツッコめよ……」


 アルテットは紅茶を啜りながらぼそりと呟く。

 

「その気持ち大事にしてね!フウマには誰も手を出さないから安心して!」

 

「でも……フウマが私のこと好きなのか、わからなくて……」

 

「いや、あの反応は絶対に好きだって!もし違ったら、思わせぶり罪で極刑に処すわ!」

 

 くわっと目を見開くレミナに、アルテットは呆れ顔で「今日のお前、思想が物騒だぞ……」とぼやいた。

 

「よーし、次!テルルの番!」


  レミナは椅子をキーッと引きずり、勢いよくテルルのベッドの横へ。

 

「う、うん、よく分かんないけど、頑張る!」


 テルルはワクワクしたような、期待に満ちた目をしていた。

 

「テルルは難しいのよね〜。ジェンのこと、家族とかお兄ちゃんって思ってる可能性もあるし。で、男として好きなの?」

 

 その瞬間、アルテットが盛大に紅茶を吹き出した。

 

「お前っ、やめてやれ!テルルはまだ純情なんだから!」

 

「大事なことだから!」


  レミナはしれっと言い、アルテットのカップに紅茶を注ぎ足す。

 

「あ、ありがとう……って、話逸らすな!」

 

「で、テルルはジェンのことどう思ってる?」

 

「ジェンは大事だよ!ずっと一緒だよ、これからもずっと!」


  テルルは真っ直ぐな目で答える。

 

「じゃあ、一緒にいるとドキドキするとかある?」

 

「わかんないけど……この前ジェンの頬にキスしたとき、顔真っ赤になってかわいいなって思った!そのとき、もっとくっつきたいなって……でも恥ずかしくて言えなかった」

 

「きゃーー!可愛い!可愛すぎて死ぬ!」


  レミナは両手で顔を覆い、空きベッドへダイブしてゴロゴロと転がる。

 

「うるさいな……」


 アルテットが呆れる横で、テルルは真剣な顔で「え、レミナ死んじゃダメ……」と心配していた。

 

「はい、じゃあラスト!アルテットお姐様!」


 レミナは立ち上がり、アルテットの肩をがっしり掴む。

 

「……何だよ。私はそういうの無いぞ」

 

「いいや、ある!キリルの好意、どう思ってるのか白状しなさい!」

 

 顔ギリギリまで迫るレミナに、アルテットは「近いぞ…」と顔を背け、小さく咳払いする。

 

「別にどうとも思ってない。あいつは昔拾ったんだ。見たことない高性能パーツだと思って持ち帰っただけ。昨日も言ったが、捨て犬みたいなもんだな。まあ、犬のようにかわいがっているよ」


 紅茶を啜り、「ウザいところも多いが」と付け足す。

 

「ふーん……じゃあ、エレメイは?」

 

 アルテットが盛大にむせる。

 

「あら〜図星?好きなんだ〜?」

 

 レミナのにやにや笑いに耐えられず、アルテットはそっぽを向く。

 

「……別に、そういうんじゃねぇ。あいつは……まあ大事な部下ってだけだ」

 

「そっかあ、大事な部下なんだあ〜。じゃあエレメイくんと恋仲になっても問題ないよねえ〜」


  棒読みで畳みかけるレミナに、アルテットはテーブルを軽く叩く。

 

「お前にはオルダがいるだろーが!」

 

 その一言にレミナの頬が一気に赤くなり、「ち、ちが!オルダはそんなんじゃ……!」と慌てる。

 

「散々私らのこと、根掘り葉掘り聞いてくれたな?今度は私らのターンだ!!」


 アルテットの瞳がギラリと光り、レミナの悲鳴が廊下まで響いた。

 

 ――一方その頃、隣の医務室。

 

「いや、あんなにギャアギャア騒いでたら、こっちまで丸聞こえだろ!」


  リュードがベッドに腰掛けたまま呆れ声を上げる。

 

「まあでも、フウマとオルダは寝ててよかったな。ジェンとキリルとエレメイも不在だし、被害はなしか……」

 

 その言葉に、ベッドの二人――フウマとオルダは、目を閉じたまま(……起きてます)と心の中で同時につぶやいた。

 

「皆さん、お若いですねぇ……」


  メイズが穏やかに微笑みながら、ナイフを丁寧に手入れする音と医療器具の振動が静かに響いていた。

女子会書いてて楽しかったです。

女子たちの可愛らしさが伝わると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ