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2-2話:取引

「……ミコト、君の要望は何だ?」


 ジェンの声は、いつになく硬質だった。肯定も否定もせず、ただ冷静に。

 だがその瞳には、明確な警戒の光が灯っていた。


 それでもミコトは、微塵も動じる素振りを見せなかった。


「簡潔に言えば──取引です」


「……取引、ね?」


 苛立ちを隠しきれずに返したのはアルテットだった。

 言葉は平静を装っていたが、その手にはすでに愛銃が握られている。銃口こそ下げたままだが、指はいつでも引き金を引ける位置にあった。


「随分ともったいつけるじゃねぇか。こっちは気の短い奴も多いんだ、手短に頼むぜ」


 普段なら冗談を交えそうなその言葉も、今は棘のある静けさを帯びていた。

 エレメイがちらりと彼女を見やり、気遣うように眉をひそめる。隣にいたキリルもまた、彼女の不穏な空気を読み取り、目を伏せた。


「私の仲間が一体います。メルキュリアの大量漏出で活動不能に陥りましたが、エナジーコアは無事です。Δ型がいれば、修復は可能でしょう」


 そう言って、ミコトは服の内側から一本のメモリースティックを取り出した。


「そして対価は、これです。私と姉妹たちが独自に集めた、ドールズ及び製造企業、軍事機構に関する機密情報──かなり深い層まで掘り下げたデータです」


 ミコトは立ち上がると、警戒する面々を意に介さずジェンに歩み寄り、そっとそのデータを彼の手に握らせた。


「信用されないのは承知しています。ですが、仲間を助けてくだされば……私は知る限りの真実をお話しします。それまでは、黙秘を貫かせていただきます」


 ミコトはそのままくるりとジェンに背を向けて椅子へ戻り、視線を逸らさずスリープモードに移行しようとした。

 挑発ではなく、あくまで“交渉の終了”という静かな意思表示だった。


「──ふざけんなよ、てめえ!」


 室内に鋭い怒声が響いた。リュードだ。

 彼の声には怒りというより、明確な苛立ちと焦燥が滲んでいた。


「結局、自分の都合ばっかじゃねぇか!てめぇが何を知ってようと、過去の話なんてどうでもいいんだよ!それを掘り返せば、今の俺たちの関係にヒビが入る!」


 彼の目が鋭く光る。


「俺は反対だ。こいつは信用できねぇ。今ここで処理して、データごと焼き払うべきだ。……異論は、ないよな?」


 そう言って、リュードが槍の柄に手をかけた、その瞬間。


 ガシュンッ。


 空気を裂いたのは、鋭く重い機械音。最も速く動いたのは──メイズだった。


 無言のまま両手にナイフを握り、その鋭い刃先をミコトではなく、リュードの目前に突きつける。


「……やめましょう、リュード」


 その静かな声には、押し殺した怒気すら感じさせる威圧が込められていた。


「すべてを疑うのは、慎重さというより怯えです。私たちは兵器として造られましたが──今は違う。私たちは、選んで、知って、生きていくことができるはずです」


 リュードは言い返そうとしたが、その口を噤んだ。メイズの瞳に殺意はない。

 だが、確かな“覚悟”が揺るぎなく宿っていた。


 室内に、静寂が戻る。誰もがジェンの言葉を待っていた。


 やがてジェンは決心したように深く息を吐き、ミコトへ向き直った。そして、一歩前へ出る。


「……ミコト。ノクティリカ島は君を受け入れる。君とテルルの間に何があったのか──それも、後で聞かせてほしい」


 そう言って、ジェンは手を差し出した。拒絶でも敵意でもない、ただ“受け入れる”という意思だけを込めて。


 それは、この島の静かな希望を示す手だった。

そろそろある程度キャラが揃ってきたタイミングなので、わかりやすくある程度キャラまとめみたいなのを書きたいなと思っているのですが……なかなかどう書いていいのかわからずじまいです。

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