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1-10話:全員集合

◇登場人物紹介


アルテット…β型やζ型に指示を出す司令塔を担うα(アルファ)型の女性。男勝りな性格で、頼れるみんなの姉貴ポジ。

 

エレメイ…戦闘に特化したβ(ベータ)型の青年。アルテットの部下のような存在で、常に彼女を支えている。オルダと並ぶなかなかの男前。


キリル…人間を癒すために製造されたη(イータ)型の少年。アルテットが大好きで、いつも絡んでいるが、その想いは未だに届かない。

 昼過ぎ。アルテットとエレメイとキリルのメンテナンスが終わり、中央ラボ前の広場には、ジェンの手によるご馳走がずらりと並べられていた。

 この広場は島の中心に位置し、東西南北いずれの方角から敵が攻めてきても即座に対応できる重要な拠点でもある。

 その一角には、ウィルが丹精込めて整備した菜園が広がり、緑に囲まれた場所にテーブルと椅子が並べられていた。

 そこに、久方ぶりに十一体のドールズたちが顔を揃えたのだった。


 食卓には、穏やかな空気と笑い声が満ちていた。 アルテットの両隣にはテルルとレミナが座り、「冒険の話、聞かせて!」と目を輝かせてせがんでいる。

 その様子を離れた席から見つめるキリルは、アルテットへの想いを隠しきれず、むくれたように頬を膨らませていた。

 そして、同じく密かに想いを寄せるエレメイも、盛り上がる三人の姿を横目に、静かに視線を向けながらグラスの水を揺らしていた。


「ζ型と何度か遭遇し、戦闘になった。私たちのメルキュリアが目的だったようだ」


 アルテットの言葉に、食卓の空気が一瞬だけ静まる。 “メルキュリア”――それは、ドールズの体内を流れる銀色の血液。

 胸部にある“エナジーコア”を駆動させる動力源であり、ミラサイトと反応して彼らの命を支えるものだ。

 かつて戦時中には大量に製造・供給されていたが、戦争が終わった今となっては極めて貴重な資源である。

  メルキュリアを失った個体は、極限状態に陥ると自我を失い、他のドールズを襲ってでもそれを奪おうとする――それは、公式には存在しない“バグ”とされる異常行動だった。


「思ったより凶暴だったな。汚染エリアでは見なかったのに、帰り道で何度も出くわした」 エレメイが低い声で補足する。

「俺とアルテットで片づけたが……あいつら、やっぱり量産型だな。壊して回収した部品の質も粗悪だった」


 そう言いながら、エレメイは隣のキリルが狙っていた魚のフライに素早くフォークを伸ばし、そのまま口へ運ぶ。

「それ俺のだったのにっ!」とキリルが怒って頬を引っ張るも、エレメイは涼しい顔で完全に無視した。


「……メルキュリアは、もう……私しか作れないから」

  レミナがぽつりと呟いた。

 かつての仲間たち――多くのΔ型が戦争で失われた今、その生成能力を持つのは彼女一人しかいない。メルキュリアはΔ型の体内でしか生成できない、希少な命の源なのだ。


「レミナのメルキュリアには本当に助けられたよ」

 アルテットが静かに息を吐く。

 遠征に出る前、レミナが瓶に詰めて渡してくれたそれが、決定的な役割を果たしていた。

「ζ型に後れを取るなんて思ってもなかったが……あのときは囲まれて、少し傷を負った。漏出した分をすぐに補えたのはとても助かった」

 そう言って彼女は視線を落とす。 平和な島での生活が続いたため、実戦での動きは思った以上に鈍っていた。それを悟られたくないという気持ちが、彼女の言葉を曖昧にさせていた。


 そんな気持ちを察したのか、テルルがそっとアルテットの頭に手を伸ばし、優しく撫でる。


「帰ってきてくれて、ありがとう」


 その無邪気な言葉に、アルテットは思わず吹き出し、「私を撫でるなんて百年早いぞ」と言って、今度は逆にテルルの髪をくしゃくしゃに撫で回した。

「くすぐったいよ!」 テルルが笑い声を上げると、レミナも面白がってその遊びに加わる。


 女性陣の賑やかな様子を、男性陣は誰も口に出さずに見つめていた。

 それぞれが心の中で「癒されるな」と思いながら、その光景を焼きつけるように静かに眺めていた。


 食事会は和やかに続いていく。 ジェンは次々と料理を運び込み、食べるスピードが速い仲間たちに合わせてキッチンと広場を忙しく往復していた。

 その隣にはメイズがぴたりと付き添い、手際よく料理を配っていく。


「おーい、こっちにも魚料理、追加お願い!」 ウィルが声を張り上げ、 「トマトジュース、もらえるか?」とリュードが静かに手を挙げる。


「オレ、サラダ食べる!健康的に!」 デューラがトングをカチカチ鳴らして主張すると、 「ドールズが健康になってどうすんのよ!」と、レミナの突っ込みが即座に飛んだ。


 そんな中、オルダはジェンから受け取ったパスタを三等分し、レミナとデューラの皿に丁寧に取り分ける。 そのさりげない気遣いに、レミナは驚いたように一言。

「……オルダ、意外と女子力高いんだね」


 ジェンはワゴンを押して料理と飲み物を配りながら、優しく声をかけた。

「まだまだあるからね、遠慮せずどんどん食べて」

 仲間たちの賑やかな食欲に、ジェンの表情もどこか誇らしげに綻んでいた。

全員集合回です。

人数が多いと書き分けが大変ですね。

でも1人1人個性を出すように心掛けてます。

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