オセロ王に俺はなる!
「おーいサツキ居るー?」
「はいはーい」
俺の幼馴染が階段から降りてくる
「オセロしようぜ」
「うん、いいよ」
俺は、今日こそサツキに勝ち越すために、頭をクリアに、そして、精神を修行僧の如く統一させた。
勝つ!絶対に!
「じゃあ、始めるか」
「うん」
「「最初はぐー!ジャンケンポン!!!」」
ほう・・・先行か。
今の推定オセロ力は俺とサツキが同程度。
その結果、勝敗は77対77で同点だ。
が、今日俺はそんな拮抗状態を80対77に激変させるつもりだ。
そう、好敵手と圧倒的な差を付けるということだ。
「ガハハ!」
「どうしたの?」
「いや、すまん、何でもない」
そのために、サツキの行動を全て予測する必要がある。
例えば、今サツキが置いた駒はブラフだろう。
上の白い駒をひっくり返したいんです!
と、言わんばかりに分かり易い一手。
だが、ブラフだと分かっていても、それがどう作用するのかは全く分からん。
なぜだ、あんなに占い師のお婆ちゃんで練習したというのに!
いや、落ち着け。そう、俺は占い師に勝てるんだ。
俺の思考は占いを超える、ということだろう。
もっと深く考えねば。
これがブラフだというのなら、本当に狙っているのはもっと大物、よく分からないが邪魔になりそうな位置に駒を置くとしよう。
「くっ・・・」
おっと、効いたようだ!
俺は心の中でガッツボーズをした。
こんな感じで、サツキの行動を予測していれば、確定で勝てる。
という、算段だ。
と、思っていたら。3連勝していた。
「しゃああああ!!!勝ち!3連勝!」
まじ・・か。本当にやってしまった。
ウッヒョー!
落ち込んでいるサツキを見るとさらに実感が湧いてくる。
「負けた〜」
今の俺は圧倒的強者!
俺は占い師の婆ちゃんに心の底から感謝した。
「ハッハー、精進したまえ」
「くっ、ミーが居なくなったからだしー」
「うん?ミーちゃんがどうしたんだよ」
「3日前から見てないんだよ。餌も減ってないし」
「オセロの修行でもしてるんじゃないか?」
「そんなことするの君ぐらいだよ」
ミーっていうのはサツキが飼っている猫なんだが。
オセロの修行をしてないのであれば、一体何をしているのだろう?
「うーん・・・じゃあ探しに行こうぜ。そして、その後でさらに3連勝してやるよ!」
「無理だね。まあ、探しに行くのは賛成かな?」
と、言うことで、もちろん俺は占い師の婆ちゃんの所に向かった。
「ササばーちゃん居るー?」
「何じゃ何じゃ、ゴウタかい。もう、オセロは懲り懲りだよ」
「違うよ、占って欲しいことがあるんだよ」
「オセロで絶対に勝てるオセロの日、オセロデイかい?」
「違うよ!それも聞きたいけど・・。この友達が飼ってる猫のミーちゃんがいないんだよ。だからミーちゃんの居場所を教えて!飴ちゃん上げるから」
「飴ちゃん・・っていらんわ!まあ何でもいい、占ってやるわい」
そう言って、何やら婆ちゃんは人差し指を額に当てて考え込んだ。
「どれどれ・・。まあ、そこら辺の森に居ると思うわい」
「オッケー!ありがとうササ婆ちゃん」
そう言って俺は婆ちゃんの家を出た。
「ねえ、本当に信用出来るの?」
「うん?大丈夫だよ。昔はプロの占い師だったって言ってたし!」
「へー・・・」
と言うことで、俺たちは一旦それぞれ自分の装備を取りに家に戻った。
俺は、普通の剣。サツキは短剣を2つだ。
「おっキタキタ」
早速近所の森に入った俺たちは、すぐに白いモフモフを見つけた。
まあ、ウサギのモンスターだが。
俺はウサギのモンスターが地面に着地した所を狙って背骨を折った。
「いやー、これいきなりミーちゃんが飛び出して来たら、こいつらと間違えてやっちゃいそうだな。こう、サクッと」
「ちょっと!ミーとこいつらを一緒にしないで!私もゴブリンと間違えてサクッと殺っちゃっても良いのよ。ゴウタを」
「はい、すみませーん!でも、ゴブリンと一緒は流石に無理があるだろ。ピッ◯ロとクリ◯ンを見分けられないレベルだぞそれ。どっちもハゲなのは一緒だけど・・俺はまだ禿げてねえ!」
そんなことを言っていたら、側からゴブリンたちの声が聞こえる。
「うん?悲鳴?」
誰のだ?と思って声の方へ近づくと、その悲鳴はゴブリンの口から発せられていた。
付近には、見るも無惨なゴブリンミンチ。お相手は、猫のミーちゃん。
「え?オセロの修行かな?」
「違うでしょ」
「てか、あの猫強すぎじゃね?猫パンチする度にゴブリンスライスが出来上がってるんですけど?!」
「私がいつも爪を研いで上げてるからね!」
「ふぁ?!そう言うのって普通爪を切るんじゃないのかよ?!逆だよ逆、大真逆!!」
「私の短剣で一時間かけて研いでるわ!爪一本一時間だから、両手両足合わせて18時間ってところね!」
「新手の拷問か何かなのかな?」
もしかして、ミーちゃんはそのストレスでゴブリンをサンドバッグならぬ、使い捨てゴブ肉バッグで気晴らしを・・・。
あ、終わった・・。
最後のゴブハムが生成されたのを確認した。猫の顔を見ても何も分からんが、多分ミーちゃんはニッコニコだろう。
「ミー、帰るよ」
「ミャ?!」
可哀想に、ストレスの元凶にエンカウントしてしまったようだ。
「ニャ・・・ニャニャ・・」
ミーちゃんが後退りしている。
「バクッ」
「「?!?!」」
「オイ!ミーちゃん!」
ミーちゃんが食われた。蛇のモンスターだ。
まずい、デカすぎる。体長10mはある・・。
「どうするサツキ!」
「うん。奴はすでに・・死んでいる」
「は?」
何言ってんだコイツ。と、思ったら。あら不思議、蛇の腹がパッカーンと割れて、ミーちゃんが出て来たではないか。なるほど・・今日からこの猫の名前は桃太郎ならぬ蛇太郎と名付けることにしよう。
「ミー、お風呂入るから帰るよ」
「ミャ?!ミャミャミャー?!」
蛇太郎はサツキに首根っこを掴まれジタバタしている。
「ゴウタ、帰ろう」
「え?うん・・・帰ろうぜ」
ありのまま今起こったことを話すぜ、というか分かったことを話すぜ。
猫ってクソ強ェなおい?!
え?俺は今まであんな怪物を撫で撫でしたり、モフモフしたりしていたと言うのか?
誰だよそんなバカは死にてェのか?!・・・って俺でした(笑)
次からはオヤツ持ってって貢ぐので、今までの無礼はどうか許してくれませんかね・・?
と言うか、母さん?息子の教育舐めてんのか?あんな身近なモンスター教えてもらったことがないんだが?
その後、オセロで3連敗した俺は家に帰るのであった。