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第30話 (三人称視点)

 かるてはフォトスタジオフロアにてトルソーの異形と撮影大会をして見事勝利を収めた。かるての人形フェイスとあどけなくも美しいスタイルさえあればどんな奇抜な衣装でも着こなしてしまう。かるてにとっては簡単な大会だった。


 次の工場フロアの問題も簡単だった。


 かるての好き嫌い順に戦士達の長机の上のアクリルカードをアクリルスタンドにめていく競技があったが、かるては抜け道を見つけた。別に好きの所を巴、叶、空知火の順番にして後は男子生徒を適当に並べても良かったのだが、それでは万が一このフロアに降りてきた者に見られてた時にわだかまりが残ると考慮し、一からカードを作り直した。


 工場は広く、かるての知っているアプリ等から発注されグッズ作成でよく使われる場所もあったので、それらを使ってパネルぴったりのカードを一から作り直した。勿論新しい写真は無いので、元からあったカードを分解し、写真をコピーして、ペーストした。当たり前に工場勤務経験がある訳ではないので、説明書を各部屋から探して調べ、勘と共にカードのリニューアルバージョンを完成させた。


「よしっ」


 かるてが完成させた好き←→嫌いのカード並び順はこうだった。


かるてカード、巴と叶と空知火カード、ヒュータと業火と柚月カード、高柳滴カード、有栖川仙樹カード、かるてカード、かるてカード、かるてカード、かるてカード、かるてカード、ニール・リンカーカード、乙坂純夜カード、豊洲野禅歌カード、茶々柱油芽カード、鬱霧ひややかカード、揺器黎明カード、深船修羅カード。かるてのだぶりを除いて全十六人の戦士達。


『クリアしました、カードを受け取りください』


 という表示が出て、長机から鍵が開く音がする。備え付けの棚を開くとそこには、一枚の白紙のカードがあった。裏を見てみると。


「『好きなバトル項目と報酬を設定できるカード』?」


 かるてはよく分からんがラッキーと、ポケットに閉まった。


「────あれっ、君黄食さんだよね?」


「はいっ!?」


 上から降りてくる青年────豊洲野禅歌が現れた。


「うっ、うーす……ここの問題私解いといたんで、行きますね……じゃ……」


「あー! ちょっと待って!」


 かるてはびくっと驚き、立ち止まる。


「何ですかー……?」


「ここで会ったのも何かの縁だし、暫く協力しない? 解散条件はお互いの味方に会うまで!」


「んー……」


 かるは少し考え、即決断を出した。


「いいですよっ。私も戦力欲しかった所だし、その条件成立でおっけーでーす!」


「やった! ……ん? わっーすごい、こんなデリケートな問題よくクリアできたねー!」


「あーそれは」


「あはっ! 轟沙汰見事に最下位じゃーん! っていうか、轟沙汰の生徒に限ってはこれ、背の順だよね……? 立ってる所見た事ないのに、よく分かったね?」


 しかも有栖川先生は真ん中の順位なのかーい、と一言加えて。


「だーれも知らないだろうけど、有栖川先生には恩があるからね(恐山の一件より)。背丈に関しては座高で結構分かったよ。あとは勘かな」


「へえ。勘にしては鋭い。キミもひょっとして、相手を見ただけでその人がどういう人なのか分かっちゃうタイプ?」


 かるてはきょとん、としてからすぐに顔を作らなかった。ありのままの真面目な顔で、こう言った。


「いや……強いて言うなら私はその人と衝突しないと何も分からないタイプ。だから正直巴以外の皆の事なんて、何も分かってすらいない。今だって勝手に成長して勝手に解決していく皆を、何一つ分かんないなあ、って見上げてるし」


「…………」


 禅歌は上げていた口角を崩さず、かるてを見つめる。


「でも衝突しないと分からないなんて、ダル過ぎるんだよ。一人になればいいだなんて言わないでよね、一人はもううんざりだから。まあ、友達同士の変な駆け引きとか、闇のマウント大会する人達よりも先に、ぶつかって物を言える私は、案外楽な方かもしれないけどね」


「今の自分に納得できない?」


「できないね。納得した方が幸せなのが私だけど、今は幸せ楽チンになるよりも、皆で汗かいて血を滲ませて、衝突しつつもあの頃も楽しかったねって言い合いたい」


「ふぅん。意外としっかりさんなのね、かるてちゃん」


「ちゃん!?」


 かるてはびっくりした。


「驚かないでー? 学校は違えど一応俺先輩だし、なんか楽しくなりそうな予感するからねー」


 楽しくなりそうな相手にはちゃん付けなのか、とよく分からない気持ちになるかるて。「さ、行こう」と歩き出す禅歌に続いて、かるてもまた歩き出す。


「そういえばかるてちゃん。ここに来る途中カード貰ったり見つけたりしなかった?」


「えぇ? 何それぇ」


「誤魔化さなくていいよ。貰ったとしたら僕も同じ。情報交換しよー」


「え、あぁ、はい」


 かるては禅歌にカードを差し出す。禅歌もカードを見せる。


「俺のカードは『いつでもどこでもリタイアできるカード』だよ。このゲーム中で死ぬーってなったら使うのもアリかもね。このチョーカーの赤い部分を押すとリタイアできるけど脳にダメージ行くらしいじゃん? このカードさえあればそれをせずにリタイアできるってワケ。一番良くない?」


 かるてにカードを返し、かるてはそのカードをぎゅっとしながら言った。


「そうかも……。ね、カード交換しないっ?」


「え、えぇっー! えぇー……」


「その反応、最深部に行ける自信ないって事でいい……? 叶えたい夢がないから、途中離脱を考えているって解釈させてもらいますと、実は私も同じで」


 黙る禅歌。そして「叶えたい夢はあるんだけどね……」と、話始める。


「俺が最深部に辿り着いたとして、自分の夢を叶えられたとしたら、油芽様の夢が台無しになっちゃうんだよね」


「ああ、あの糸目さんか」


「そう。……かるてちゃんには言うけど、今現在における油芽様の願いは、須原朱乃への復讐を完遂し、死ぬ事なんだ」


「須原朱乃? 女の子?」


「ああ、油芽様の失明の元凶の女の子だよ。二重人格のね」


 二重人格。きな臭い属性だととかるては思った。


「まあ、とにかくそれに反した願いが俺の願い。あえて言葉にするなら『世界中の女のコ皆幸せになりますように』かな」


「随分女子からの好感度上がる事言うね。轟沙汰に通ってたら男はうんざり?」


「それなりにね。それに俺は、自分を弱い立場だと嘆く男もかなり嫌いなんだ。それを言っちゃうと油芽様との関係が矛盾みたく思えるけど、油芽様は特別だから」


 なんて、上から申しちゃったりしてね。とはにかむ禅歌を、かるては否定も肯定も反応もしなかった。


「じゃあ油芽様に会わなきゃだね」


「え?」


「悪いけど、もうとっくに願いは私以外の仲間全員に託してる。だから、二人の願いは叶わないよ。このゲームではね。だから豊洲野先輩は、一人心細い油芽様の所に、行ってあげたらって話よ」


 禅歌はかるての顔を見て、くすっと笑う。


「でもかるてちゃんもそこに連行するよ?」


「うわ、まあ別にいーよ」


「うわって言った? 分かった、じゃあ……油芽様の所に辿り着いたら、このカードはかるてちゃんに譲渡するよ」


「! いいの?」


「うん、なんか、いいかなって」


 かるては「ありがとう」と一言行って、切り替える。


「んで、どこにいるんだっけ確か上位スタートだったよね」


「えっと、確かこうチョーカーをタップして……」


 水色のホログラムでできた階層ごとに誰がいるのかが記された記録が禅歌のチョーカーから写し出される。


「んー……いない……って、え、ちょっと油芽様!? 何で降りるどころか逆走して、尚且つペナルティマークがついてるんですかぁ!?」


 油芽は六百六十六階の海水浴フロアにおり、名前の横に赤丸の中にペナルティと書かれたマークが存在していた。


「何したんだろ?」


「とにかく急ごう! 近いと思えば近い!」


 かるては楽しそうに、禅歌は楽しく呆れながら、先のフロアへと走った。

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