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幕間 (前半・恐山視点 後半・皆鴨視点)

【その壱 DVDショップと柚木森さん】



 今日は休みの日で異形狩りもないし、俺こと恐山ヒュータは、久しぶりにDVDショップに行く事にした。不純にも黄食の影響か、最近妙に色っぽいナマモノというか、人間を研究したい。変な意味ではない……と思う。マイナーなやつ。


 昔から少女漫画を読み漁っては影響受けまくりの俺だが、映画やアニメ自体はあんまり観てなかったな。

 黄食が言っていた『サヨナキドリ』という映画はあるだろうか、あの時黄食が熱弁していた『魔法少女は紅い果実』はあるだろうか。


 いざ! 新たな世界へ!


 ……結論から言うと二つともなかった。やはりそういうのはコアな人気でもあるのか、空になっていた。今度直接黄食に借りるのは変じゃないだろうか、いや、変だとしても借りればいいか。ちゃんと返せばいいし。


 ん。


 そこで俺は考えながら歩いていると、何やら先程と違う雰囲気のコーナーに辿りつく。妙に人がいるな。しかも大人の男ばかり。タイトルが独特なものが多く、目についたものから適当に手に取って見てみると、肌けた女の子達が多く。過激な言葉で彩られていた。


 ……好かんな、こういうのは。


 こういうのは殆ど同意の上が多いはずだが、女の子をこんな姿にして食いものにする大人が許せない。俺はこういうの見れないな。こういう激しいのは可哀想だから。俺はそっと元に戻した。


 ん、こっちの棚は甘々なの……か?


 ……。



◆◆◆◆◆



 私こと柚木森叶は久しぶりにDVDショップに足を踏み入れる事にした。土曜日だし、何より異形狩りのないガチの休日だからだ。かるての言っていた『サヨナキドリ』が割りと面白いそうなので、いや確実に面白そうなので、本人にはああ言ってしまったけれど借りにいく事にしたのだ。ああ、我ながら素直じゃない。サヨナキドリ貸してくれやいなんていえば、かるては喜んで貸してくれるのになぁ。


 いざ! インモラルダイビング!


 ……結論から言うと無かった。


 かるてが言っていた通りコアなオタク共に取られてしまっているのだろうか。まあ、普通に映画館で見れなかった人も借りる可能性もありうるし、そっか。残念。


 折角来たんだから他のコーナーも行こっと。私もかるてみたいに新規開拓しなきゃね。そういえば巴は何が好きなんだろう。空知火はなんとなく分かるけど、巴って映画そもそも見るの? 今度巴のリクエスト聞いて一緒に観に行きたいなー。


 ん。


 んん?


 私がいつも早歩きで素通りする赤いのれんから、一人の男が出てくる。最初はうっわそういうの普通に買えちゃう大人に通りすがるとかついてないな、くらいだったのに、その人はあれまあ学ランじゃあありませんか。しかも顔はかなり綺麗でこんな場所とは縁がなさそうに見え……。


 ん!?


「恐山、君……?」


 バサバサバサ……!! と、四つくらいDVDを床に落とす同様しているのかすら分からない顔を見せるのは紛れもない恐山君。おい、未成年。つーかなんでいんの。このエロガキが。


「あ、柚木森さ……ぁ」


「ごめん、拾うね」


 この時の私は意地悪だったと思う。だって気になるんですもの。恐怖にして怒りの象徴こと恐山ヒュータの性癖が。もしかしたら、いや本当にもしかしたらかるての未来の旦那になるかもしれない男が危険因子ではないか見定める必要があったのだ。傲慢ながらにも。


「…………」


「…………」


 拾ってみると一つは金髪美少女の甘々しいカップルもの。もう片方はそばかす美少女の甘々でろでろもの。


 嫌な予感がして拾ってない方の二つに目をやる。


 ブレザー姿のクールな女の子が拘束されているものと、独特な美人の巨乳が目立つとても言葉にできないもの。


 嫌な予感は当たった。そこから嫌な憶測もした。


 私はそれらを全て手に取り、恐山君に渡して笑顔でこう言った。



「良い休日をお過ごしください」



◆◆◆◆◆



【その弐 恐山インザ本屋さんと草薙さん】



 昨日は散々だった。まさか柚木森さんに出くわすとは。あの人は人に吹聴する様な人間ではないから大丈夫だろうけど、さすがに喰らった。かなり。


 DVDはしっかり全部観たが、やっぱり好かんな、ああいうのは。そもそも何故借りれたんだっけ。まあいいか。


 気分転換もかねて、日曜は大きめの本屋に行った。本屋なら何を買ってるかバレにくいし、何よりあそこの本屋は俺のいきつけで、知ってる人を見た事が滅多にない。柚月にしか言っていない場所だ。


 黄食が言っていた小説、あるといいんだけど。


 ん……?


 雑誌かあ、ファッションとか美容とか気を使ってるつもりではあるけど、わざわざ買う事は少ないかもな。


 俺はほんの興味本位で雑誌コーナーに立ち止まった。


 へぇー今こういうのが流行ってんだ。

 でも俺は俺のファッションがあるからいいかな。


 お、こっちはかなり古い。やっぱこの本屋なら何でも手に入りそうで見てるだけで楽しい。


 その時の俺はかなりの時間を費やしていた事に気づかなかった。俺の無自覚が許したのか、それは広い雑誌コーナーを練り歩いた。


 そこで俺はある雑誌を見つける。他の雑誌とは異彩を放った、俺が心より求めていたかもしれない雑誌。


『軍服女子×令和のアンダーグラウンド編』


 それは魅力的に思えた。もともとコスプレとか好きなんだろうな、俺。それに加えてアンダーグラウンドときた。柚月なら馬鹿みたいな企画と冷めた事言うんだろうけど、黄食が喜ぶだろうと思って、中身をめくった。


「……!」


 俺は衝撃を受けた。いたずらに破けた軍服ワンピが、張り付く太もものストッキングが、そしてありとあらゆる拘束からのありとあらゆるエトセトラ。俺はそれを黄食に見せる事すら忘れて衝撃を隠しながら夢中になって読んでいた。


「あんた、っ!」


 後ろに草薙さんがいる事にすら気づけなかった。


「………!」


「………!」


 草薙さんは青ざめて俺を凝視しており、俺はポカーンと雑誌を落とす。それを草薙さんは恐る恐る拾い、パラパラとページをめくるときた。そして。


「……恐山、あんたこういうのが好きなのかい……?」


「や」 


「いや、いいんだ、男子って皆そうだし。健康な男子って思う事にするよ。ほら、買ってきなよ」


 買う事すら許してくれるのか!? 神なのか!?

雑誌を受け取り流れで購入した俺は、その後どういう訳か草薙さんとカフェでお茶する事になった。ほんと、どういう訳なのやら。


 とにかく今日の休日は健やかに終わると思われた、はずだったが。


「ぎゃはははは! 昨日は叶に見られちゃったんだ! やべー! しかも捨て台詞かっけぇ! いやどっちもやべーけどウケる! だははははは!」


と、大声でバンバン机を叩く草薙さんを下品だとは思わないけど恥ずかしいからやめてとは思う。


「まあ、つまるところ俺も健康な男子だってオチだよ」


「いや、それは違う」


 さっき認めてくれたじゃん!!


「つーか、黄食に言うなよな」


「言わない言わない。つーかビニール袋じゃなくてリュックにしまえよ。チラチラ見えてんだよ軍服美少女がよ」


「うす」


 それから十分後くらいに、予想外というか、結局こうなるんだ俺の休日、みたいな二人組が店に入ってきたのだ。


「あれ、巴と恐山君……?」


「あ、叶とそらちーじゃん!」


「よっすー」


「よっすよっす」


 柚木森さんと空知火!? 何故ここに!!


「良かったら相席どう? 恐山が面白くてさ」


「おい! 言わない約束だろ!」


「かるてには、だもん」


「っ…………!」


 この女……!!


「失礼するね、恐山君」


「失礼するー」


「あ、うん」


 その後は地獄だった。折角リュックにしまった雑誌を二人に見せる草薙さんは神ではなく悪魔だった。そして死んだ目で三日月型の笑みを見せてくる柚木森さんと何故か無言で俺よりのまんまるお目目と真顔で雑誌をおっぴろげに読む空知火のむごいことよ。


 とにかく俺は、金輪際そういう場所に立ち寄らないと決めたのだ。本日の教訓は、そういうのは家のパソコンから入手するか、もしくは黄食に恥かいて相談するか、だ。そして外出だからといって油断は禁物だという事。いや、もっとあるか……?



◆◆◆◆◆



【その参 オマケという名のオチ】



 その日は土曜日で、異形狩りもなかったから本当の意味での休日だった。俺こと皆鴨柚月は恐山が教えてくれたいきつけの本屋さんに行った。俺はファッションにうといからそういう雑誌でいいのがあると聞いたので、真っ直ぐ雑誌コーナーに向かった。


 するとそこにはかるてがいた。


 本来なら素通りするが、かるてとはまあ普通に親しくしていくつもりだったし、無視するのも何か違うと思って、かるてに近づき、よう、と話しかけようとした。したのだが。


「…………」


「…………」


 う、うわぁ……。かるてさんとんでもなくアングラな雑誌を堂々と立ち読みしているじゃありませんか。そんな可愛い人形みたいな格好でそんなの読んでると逆に目立つし心配になるんだが……。


 つーかこの距離でも気づいていないのか?


 おーいかるて、皆鴨が見てるぞーーい。


「チッ」


 え?


 今舌打ちした? この子。


「なんだよ煩わしいな。これじゃ遠慮して読めねぇじゃねぇか」


 と、雑誌から一切目を離さず遠慮なんてしていない様子にも見えたが、俺はもうなんかどうでもよくなったので、一言返すだけにした。


「ゴメンネー……」


 そうして俺は、家に帰った。たったそれだけの話。


※4月26日 改稿しました。

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