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第37話 誕生 part4

〜エマ目線〜


「誰って...悲しいなぁ。俺だよ、俺!ガラド・ヴィナス、君の父さんだろ?」


男は苦笑いしながらそう言って私の頬を触る。

頬から感じられるこの分厚い皮膚。

そして枯れ葉のような匂い。

超越者に吹き飛ばされた衝撃でまだ頭はぼんやりしているが、間違いなく父さんだと分かった。


「父さん...、なんで?」

「鳩から知らせが届いたんだ。本当はもう少しかかる予定だったんだが、切り上げてきた。ちょうどよくヴィルもいたんでな。ほら、あそこに。」


彼が指さす先には大きな円があった。

ヴィル・ヘンダーソンの能力だ。


「父さんだけでも来てくれて良かった。」

「ん?違う、俺だけじゃない。」


彼がそう言うと、円が光った。

そして、1人の男が出てくる。


「おい!おっさん!早く走れんなら最初からやれや!」


この声...カンナリだ。

ガラド部隊にいたのか。


「カンナリ...。」

「...っ。これ...。エマ、お前大丈夫か?」


カンナリは私やフィンを見て、全てを察したようだった。


「うん、私は。でもエレナ隊長が...。」

「そうか、なら早く終わらせよう。なぁ、おっさん。」


カンナリはガラドの方を見てそう言った。


「何度も言うがおっさんじゃなくて隊ちょ...まぁ、いい。相手は超越者だな?」

「ああ、そうらしい。久しぶりに大暴れできそうだ。」

「おい、何を言っているんだ。カンナリ、お前は待機だ。エマちゃんとその他を守っとけ。」

「あぁ?俺もやっ..」

「黙って命令に従え。」

「なっ、」

「分かったか?」

「...ちっ、分かったよ。」

「よし、任せたぞ。」


ガラドはそう言うと、超越者めがけて突進した。

あの巨体からは考えられないスピードだ。

棍棒状の方舟を発動させ、超越者に何度も叩きつける。


「終ワりカ?」


しかし、超越者に効いている様子はない。

首を鳴らし、笑みを浮かべている。


「これからだ。」

「そウカ。」


再び激しい戦闘が始まる。

ガラドは超越者に方舟を打ち付けるのみで、他には何もしない。

超越者の攻撃を避ける様子もなく、ダメージを負いながら戦っている。

そんな父さんを私はただ見守ることしかできない。


「父さん...。」


私は父さんの能力を知らない。

覚醒者同士、自分の能力や他人の能力を必要な時以外に喋らないのはアークでの暗黙の了解だ。

だから一緒に任務に出て、そこで初めて能力を知るなんて事も多い。

だから今、父さんがどうやって超越者を倒そうとしているのか、私には分からない。


「エマ、大丈夫だ。」


私の心配する表情を見たカンナリが声をかけた。


私も父さんと共に戦いたい。

これはカンナリも同じ気持ちだろう。

しかし、解放者に至っていない覚醒者が戦闘に参加すれば、蟻のように潰されてしまう。

それが分かっていたから私たちは何も言わず、父さんが勝つことを信じて、いざという時に備えた。

 

「ぐっ、やるなぁっ!超越者ぁっ!」

「っ…。」


あと数発モロに攻撃を喰らえば死んでしまうかもしれない、そんな状況にも関わらず、ガラドはどこか楽しそうな様子で戦っている。

そんなガラドの様子に超越者も少し驚いている。

しかし、超越者との差は縮まらない。

ガラドはエレナ隊長と同様、どんどん押されて行く。


「終わリだ。」


超越者はそう一言呟くと、右腕でガラドの腹を貫いた。

大量の血が床に広がる。


「ごふっっ、ぜぇっ、ぜぇっ、..。そろそろ溜まった...かな。」


ガラドは腹の穴に加え、無数の傷を負っている。

とても立っていられるような状態ではない。

しかし彼の目から光は消えていなかった。


ガラドは自らの腹を貫いている超越者の腕を掴んだ。


「逃がさんぜ。」

「逃げたいのはお前の方だろう?」

「それはどうだろうな、【完全解放】!」


ガラドの方舟が光る。


「なっ、...」


超越者はガラドから距離を取ろうとするが、ガラドはそれを許さない。


反神チャージバースト


ガラドはそう叫びながら超越者めがけて方舟をフルスイングした。


方舟が超越者に当たるのと同時に大きな爆発音が鳴り、大量の土煙が上がった。


凄まじい衝撃波が私たちを襲う。


「きゃあっ!」

「くっ、エマっ!掴まってろ!」

「カンナリ、父さんは一体何を!?」

「分かるわけねぇだろ!」


父さんがいったい何をしたのか、私たちは一切理解できなかった。

大きな音で耳はよく聞こえないし、土煙で目の前は真っ白だ。

どちらの攻撃がどちらに当たったのか、それすら分からない。


土煙が晴れると、そこにはガラド立っていた。

その奥には左肩から腰にかけてゴッソリ無くなった厄災が倒れている。

再生を試みているが、上手くできていない。


「ゴホッ、ゴホッ...あーっ、流石に死ぬかと思ったぜ。」


ガラドは額に流れる血の混ざった汗を拭う。


「おっさん!大丈夫か?」

「あぁ?当たりめぇだろ!そんな事よりカンナリッ!エマちゃんに傷一つつけてねぇだろうな?」


ガラドは鬼のような顔をしてカンナリを睨む。

心なしか、超越者と戦っていた時より表情が険しい気がする。


「そんなの知らねーよ。心配なら自分で見とけや!ってか早くそいつにとどめを刺せ!」

「そんな事、言われんでも分かってるわ!超越者の次はカンナリ、貴様だ。覚えとけよ。」


ガラドが倒れた超越者に近づき、方舟を構える。


「じゃあな、超越者。」


ガラドがそう言って、方舟を振り下ろそうとした時だった。


「殺らせないよ?」


突然、ガラドと超越者の間に1人の男が現れ、白く光る右腕でガラドを攻撃したのだ。


「がっ、。」


ガラドは吹き飛ばされ、壁に叩きつけられた。

ノア化は解け、体はだらんと力が抜けてしまっている。


「おい、マジかよ...。」


男の姿を見たカンナリは力無くそう呟いた。

私は恐怖で声も出ない。


倒れている超越者と同様に全身が真っ白の男。

そして、気味が悪いあのにやけ顔。

私とカンナリはその男を知っている。

そう、コーディ隊長を殺したあの超越者だ。


突然現れた超越者が私たちの方に顔を向ける。


「あれ?君たち...会った事あるよね?覚えているよ。特にそこの女の子、君綺麗だよね。僕の第7婦人にでもなる?」

「・・・」

「どうしたの?黙っちゃって。2回も偶然会うなんて何かの縁だよ。僕はカールって言うんだ、君は?」


カールと名乗る超越者は攻撃してくる訳でもなく、訳の分からない事をいつまでも喋っている。

私は恐怖から口が震え、言葉を返すことが出来なかった。


「・・・」

「もー、分かったよ。冗談だって。君はノアの覚醒者だもんね。ここで殺さないと。」


カールはそう言うと、膝をつき天を仰いだ。


「ノアが5人も...。そのうち2人が解放者、それに手負だ。ラッキーだなぁ、僕は。」


カールの体が光り輝く。

その姿はあまりにも美しく、本当に厄災なのか分からなくなってしまいそうだ。

そして、立ち上がったカールは倒れているガラドの方へ手のひらを向けた。


光が手のひらに集まって行く。


「バイバ...あれ?」


カールが突然、何かに気づいて動きを止めた。

そして、倒れている超越者の方へ歩いて行く。


「あ…ア…、。」


ガラドの攻撃受け、倒れていた超越者は再生が上手くいかず、体がボロボロと崩壊し始めていた。

それを見たカールは大きくため息をついた。


「あーあ、体崩れてきてるじゃん。あーもう、せっかく良いところだったのに。はぁ、君たち運が良いね。」


カールは残念そうにそう言うと、今にも灰になってしまいそうな超越者を抱えた。

そして再び私たちの方に体を向ける。


「名前は次聞くことにするよ。じゃあ、またね。」


カールはそう言うと、どこかへ消えていった。


一気に体の力が抜ける。


「ふぅ、はぁっ、はぁっ。私たち…助かったの?」

「あぁ、運良くな。あいつの気が変わらない内に、早く帰還しよう。」

「うん...。隊長達やフィンの命も危ない。早く治療しないと。」


アーク支部の壊滅。

そして新たな超越者の誕生。


エレナ部隊、ガラド部隊の任務は最悪の形で終わった。

誕生の最終パートでした。

エマ目線で進むのは一旦ここまでです。

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