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引きこもり令嬢と呼ばれていますが、自由を謳歌しています  作者: 燈華


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領地への招待の確認事項

「やあ、ロバート」


食堂でアーネストに声をかけられた。


「アーネスト」

「一緒にいいかい?」

「ああ、もちろん」


アーネストが向かいに座った。

ここでアーネストに会ったのは運がいい。

どこかでアーネストを掴まえるか、手紙を書くかしないといけないと思っていたところだ。


「ちょうどいい。クラウディアから話は聞いた。それで確認したいことがある」

「ん? 何だい?」

「領地への招待はクラウディアと俺だけか?」

「シルヴィア嬢もその婚約者もよかったら」

「セルジュもいいのか?」

「ああ、構わないよ。婚約者が一緒にいられる時間は貴重だろう」


婚約者を放っておき過ぎて婚約解消になった者の言葉は説得力が違う。

本人は全く気にしていないようだが。


「……まあ、そうだな」

「ああ、別に自分のことを言ったわけじゃないよ」

「……そうか」


本当にまったく何の未練もないようだ。

ここでそれを指摘するのも野暮だろう。

まあ向こうもすでに次の婚約者がいるから今さらアーネストに未練はないだろう。


「だから遠慮せずに来て欲しい」

「わかった。二人にも聞いてみる」

「うん。それで、クラウディア嬢やロバートは来てくれるのかい?」

「クラウディアを一人で行かせるわけにはいかないからな」

「まあ未婚のご令嬢だからね」


婚約者候補でもないはずだ。

外堀を埋めるようなことになるわけにはいかない。


シルヴィアに早急に予定を訊いたほうがよさそうだ。

シルヴィアさえ行くと言えば、セルジュはついてくるだろう。


「なるべく早くシルヴィアとセルジュに訊いて知らせる」

「わかった。シーズン終わってのことだからそれほど焦らなくてもいいよ」

「シーズン終わりというと?」

「シーズンオフの休みを取る時に合わせて来てもらえれば、と」


シーズンオフは仕事量が基本的に減るので順番に少し長めの休みをもらえるのだ。

期間は身分や領地の距離などいろいろな要素から判断される。

領地に戻らなければならない当主や嫡男は移動時間も考慮された長い休みがもらえるのだ。


ただし、仕事が立て込んでしまうと後ろにずらされたり、場合によってはなくなることもある。


セルジュの通う学校もシーズンが終わって一月半程は長期休み内だ。

社交と領地への帰還の必要性を(かんが)みて時期と期間がそのように決められている。


だから時期によってはセルジュは無理だろう。

その辺の()り合わせもしなくてはならない。


「ということは休みを合わせないとならないな」

「ああ、そうだね。シルヴィア嬢の婚約者はまだ学生だっけ?」

「そうだ」

「ああ、だったら早い時期じゃないと困るね。上司に相談してみるよ」


きっと上司は驚くだろうな、と他人事のように思う。

この仕事人間のアーネストが自ら休みを言い出すことなど青天の霹靂だろう。

連日雨ということはないだろうな? とあり得ない心配を思わずしてしまう。


「…….そうだな。俺も相談してみる」

「先に決まったら教えてくれる?」

「もちろんだ。シルヴィアたちの予定も聞いて連絡する」

「うん、頼むよ」

「そっちもなるべく早く教えてくれ」

「ああ、それはもちろん。戻ったら早速上司に聞いてみるよ」

「ああ」


話しているうちに食べ終えた。


「仕事が溜まっているから先に行くな」


忙しさのピークは過ぎたが、まだまだやることは多い。

長期休みをもらうには目の前の仕事を片付けなければならない。


クラウディアやシルヴィアだけでは行かせるつもりはない。

ロバートが行けない時は当然断るつもりだ。

アーネストが行ってロバートが行かないなら当然のことだ。


父や最悪従兄弟たちでもいいが、とにかく身内の男がついていかないのなら許可は出せない。

まあそれはそれで一悶着ありそうな気もするが。

やはり一番はロバートがついていくことか。


「うん。頑張って」

「ああ。あ、アーネストが行けなくともクラウディアたちは行くのでいいんだな?」


立ち上がりかけて、ふと気になり、訊いてみた。


「ヴィヴィアンは行くからね。でも、そんなことにはならないよ」

「そうか」


そう言うからにはどんな手を使ってでも休みを取るだろう。

それならこれ以上何も言う必要はない。


「なるべく早く訊いて連絡する」

「うん、待っているよ」


今度こそ立ち上がって食器を片づけて食堂を後にした。

読んでいただき、ありがとうございました。

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