迎えと雨上がりの虹
「雨もやんだようね」
窓の外を見たヴィヴィアンが言う。
随分と長居をしてしまった。
時刻はもう夕方に近い。
「すっかり長居してしまったわね」
「いいのよ」
ヴィヴィアンは機嫌が良さそうだ。
そこへ扉が叩かれる。
ヴィヴィアンが許可を出し、扉が開いた。
執事が入ってきて一礼する。
「クラウディア様、お迎えの馬車が到着してございます」
まだ雨が上がったところだ。
今着いたとなると雨がやむ前に馬車を走らせてくれたのだろう。
後で何かお詫びを渡そう。
クラウディアは瞬時に決めた。
「ありがとう」
微笑んでお礼を言い、ヴィヴィアンに視線を向ける。
「では帰るわね」
「ええ。また連絡するわ」
「ええ」
クラウディアは立ち上がった。
荷物を持ったキティがさっと寄ってきた。
執事が部屋の扉を開けて押さえてくれる。
「ありがとう」
お礼を言って扉をくぐった。
外に出て何気なく空を見上げて軽く目を見開いた。
「まあ虹だわ」
雨上がりの空にはくっきりとした七色の大きな虹が架かっていた。
「すごいわね」
見送りに出てきてくれたヴィヴィアンも虹に目を輝かせている。
二人で虹が消えるまで眺めていた。
それをキティやヴィヴィアンの侍女、御者や護衛の誰一人として咎めなかった。
「いいものを見たわね」
「ええ、本当に」
微笑み合う。
「ふふ、では帰るわね」
「ええ、またね」
「ええ、また」
クラウディアはヴィヴィアンに背を向け、馬車に向かう。
御者が扉を開け、踏み台を用意して扉の横に控えていた。
御者に近づき周りに聞こえないように声をひそめて言う。
「急に迎えに来てもらってごめんなさい」
「いえ、大丈夫ですよ」
同じように声をひそめて返してくれる。
それから声を普通の大きさに戻して訊いてきた。
「今日はいかがでしたか?」
「いい一日だったわ」
「それはよろしゅうございました」
御者も笑顔だ。
ヴィヴィアンを振り向く。
「ヴィヴィアン、今日はありがとう。楽しかったわ」
「わたくしも楽しかったわ。気をつけて帰ってね」
「ありがとう。アーネスト様にもありがとうございました、と伝えておいてくれる?」
「ええ」
手を振り、御者の手を借りて馬車に乗り込む。
キティが素早く隣に乗り込んできた。
「またね」
「ええ、また」
「閉めます」
御者が扉を閉めた。
窓からヴィヴィアンに手を振る。
ヴィヴィアンも手を振り返してくれた。
「出ます」と声がして馬車が動き出す。
そうしてモーガン邸を後にした。
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