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引きこもり令嬢と呼ばれていますが、自由を謳歌しています  作者: 燈華


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兄妹コーデ

刺繍入りハンカチを渡した次の日が兄の休日で、兄妹三人で出掛けることになっていた。


「お嬢様、出来ましたよ。こんな感じでいかがでしょう?」


服装や髪型などを気にしないクラウディアは全てキティに丸投げした。

慣れているキティは嬉々(きき)としてクラウディアをコーディネートしてくれた。


外出着は藤色のドレスに紫色で大胆に刺繍が入っている。飾りのリボンも紫色だった。

耳飾りや首飾りはブルーサファイアだ。

髪型は動きやすいように編み込んでまとめてくれており、リボンは真ん中が紫で両端に向かって青色にグラデーションになっていた。


思いっきり兄とシルヴィアの色だが大丈夫だろうか?


「お嬢様? お気に召しませんか?」


じっと姿見を見たまま何も言わないからだろう、キティが再度声をかけてくる。


「いえ、お兄様とシルヴィアの色だと思って。兄妹で出掛けるのにどうかしら?」


キティがほっとした様子を見せた。


「お二人とお出掛けになられるのは久しぶりですし、お二人とも喜ばれるかと」

「私はいいのだけど、何か言われないかしら?」

「お二人なら蹴散(けち)らせますので問題ありません。何でしたらお二人のお召し物を見てから判断なさったらいかがです? 難色を示されましたらお召し替え致しましょう」

「そうね。そうするわ」

「お嬢様、どちらがよろしいですか?」


キティが鞄を片手に一つずつ持って尋ねてくる。

どちらも小さな肩掛け鞄で色が桜色か深緑色か。

デザインも桜色のほうがころんとしていて可愛らしい。

深緑色のほうは少しかっちりしている。


「桜色のほうにするわ」

「承知しました」


キティが深緑色のほうの鞄を(かた)している間に自分で必要なものを入れる。


「これで大丈夫かしら?」

「はい。大丈夫だと思われます」

「そろそろ時間ね。行きましょう」

「はい」


キティを連れて部屋を出る。


「お姉様」


ちょうどシルヴィアも仕度を終えて部屋を出たところだったようだ。

ちなみにシルヴィアの部屋は隣だ。


お互いに歩み寄り、それぞれの装いを見る。


シルヴィアは桜色の外出着のドレスだ。裾や袖口、胸元に菫色の糸で細かく刺繍が入っている。

耳飾りや首飾りはクラウディアと同じようにブルーサファイアを使ったものだ。

肩にかけている小さな鞄は青紫色のもの。

そして髪に結ばれているのはセルジュの瞳の色である青磁(せいじ)色のリボンだ。


「お姉様にいただいたリボンです」


クラウディアの視線に気づいたのだろう、シルヴィアが嬉しそうに微笑(わら)って言う。

お店で見つけた時にセルジュの瞳の色だと思いシルヴィアに贈ったのだ。


「よく似合うわ」


シルヴィアはますます嬉しそうに微笑(わら)った。


「ありがとうございます」


改めてシルヴィアを見る。

それにしても、シルヴィアのドレスの色とクラウディアの鞄の色が見事に(かぶ)った。

キティに知っていたのか目線で問うと首を横に振られる。


「お姉様、どうされました?」

「私の鞄とシルヴィアのドレスの色が同じね、と思って。それに私たちはお互いの色とお兄様の色も(まと)っているわ。何か言われたりしないかしら?」


それを聞いたシルヴィアはころころと笑う。


「姉妹で仲良しなことに何か問題がありますか?」

「ないわね」

「ならいいではありませんか。嫌味を言ってくる者は羨んで妬んでいるだけですわ」


シルヴィアは強気に笑う。


「その通りですわ」


シルヴィアの専属侍女のケリーが力強く言い、キティも力強く頷いている。


「いいことを思いつきましたわ」


手をぱちんと叩いてシルヴィアが嬉々(きき)として言う。


「お姉様、姉妹でお揃いコーデを流行らせましょう」

「お揃いと言っても色だけじゃない」


デザインは全然違う。

似合うものが違うのだからそれは当然だ。


「では、姉妹で仲良しコーデを流行らせましょう」

「私たちが着ていたところで流行るかしら?」

「羨ましいと思われれば流行りますわ!」


キティとケリーも力強く頷く。

クラウディアの社交界での評判は散々だが、それでも羨ましいと思う者はいるのだろうか?


クラウディアが内心で首を傾げていると小さな足音が聞こえてきた。

視線を向けると廊下の奥から兄が歩いてきた。

兄の部屋とは少し離れているのだ。


「クラウディア、シルヴィア、準備はできたか?」

「「はい」」


近くまで歩み寄ってきた兄が立ち止まった。

ざっとクラウディアとシルヴィアの服装を確認した兄が満足そうに微笑む。


対する兄は濃い焦げ茶色の細かい縦縞の上着にズボンだ。カフスボタンや襟元のピンブローチなど差し色に紫色が使われている。

よく見れば中に着ているベストは菫色だ。


これでもかと妹二人の色を纏う兄の社交界での評判が気になる。


「お兄様、本当にそちらの服装で出掛けられますの?」

「うん? どこか変か?」

「変と言いますか、私たちというか、ほぼ私の色ですが」


ああ、と兄は気にした様子もなく言った。


「クラウディアがはぐれた時のためだな」


兄の連れだと知らせるための配慮らしい。


「捨て身過ぎますわ」

「お兄様、よくお似合いです」


(たしな)めたクラウディアとは違い、シルヴィアは兄を褒める。


「ああ、ありがとう。二人ともよく似合っている。では行くか」

「はい」


本当に兄妹仲良しコーデで出掛けるつもりらしい。

さくさくと歩き出した兄とシルヴィアを、いいのかしらと思いながらクラウディアは追いかけた。


読んでいただき、ありがとうございました。

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