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引きこもり令嬢と呼ばれていますが、自由を謳歌しています  作者: 燈華


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妹との時間

次の日。

クラウディアはシルヴィアに部屋に突撃された。


「お姉様、今日はわたくしと過ごしてくださると約束してくださいましたよね?」


昨夜食堂から兄を追いかけて出る時に似たような約束はした。

せいぜいお茶に付き合うくらいかと思っていたが、もっとがっつりとした約束になっていたらしい。

これは確認しなかったクラウディアの落ち度だ。


「ふふ、お姉様、昨日のお出掛けのお話をお聞かせくださいませ」

「その前にシルヴィアにもお土産を買ってきたから渡してしまうわね」


さっとキティが動き、クラウディアに綺麗なリボンで縛ってある小袋を差し出す。


「ありがとう」


それを受け取ってシルヴィアに差し出す。


「シルヴィアが気に入るといいのだけど」

「お姉様はセンスがいいので大丈夫ですわ」


兄なら首を横に振りそうだ。

今回のお土産も最初は気に入らない様子だったのだ。

何故か途中で心変わりしたが。


「開けてもいいですか?」

「ええ」


いそいそと開けたシルヴィアが中身を見て目を輝かせる。

そして中身を取り出して一本一本眺める。


「まあ、素敵なリボンです! お姉様、ありがとうございます」

「気に入ってくれたならよかったわ」

「もちろんです。大切に使いますね」


また丁寧に小袋に戻したシルヴィアは大切そうに膝の上に置く。それからきらきらする瞳をクラウディアに向けた。


「では、お話くださいませ!」

「そんなに期待するほどのことでもないわよ?」

「構いません」


本当に何故みんな聞きたがるのか。

クラウディアは心の中で溜め息をついて、求められるままに昨日のことを話した。

そして求められるままに買ったものや買ってもらったものを見せる。


「まあ、素敵な耳飾りですね。お姉様に大変お似合いですわ」


アーネストに贈られた耳飾りもつけてみせた。


「ありがとう。アーネスト様はセンスのいい方だわ」

「本当ですね」


クラウディアは丁寧に耳飾りをしまう。


「お姉様、いただいた物は次に会う時に身につけていくのがマナーです。全てではなくていいので、次回はこちらの耳飾りを身につけていかれるのがいいでしょう。ヴィヴィアン様とお揃いの扇も忘れてはなりません」


なるほどとクラウディアは頷く。


「今度はいつ会われますの?」


しばらくはアーネストとヴィヴィアンと出掛ける理由を話してあるからこその質問だ。


「さっきヴィヴィアンから手紙が届いて、五日後がアーネスト様の休日なのでどうかしら? って。だから何もなければ五日後ね」


それまでに刺繍入りハンカチも仕上げておかなければ。


「わかりました。コーディネートはお任せくださいまし。それでどちらに行かれますの?」

「まだ誘われただけだから。どこに行くのか決まっていないの」

「決まり次第教えてくださいね。定番の公園での散歩とかでもいいかもしれませんね」

「ああ、それはいいわね」


心配なのは、公園は誘惑が多いことだ。

興味があちこちに向いてしまい迷惑をかけてしまいかねない。

その心配が出ていたのだろう、シルヴィアが言う。


「普段のお姉様を知っていただくのも大切かと」


今の距離感なら必要ないはずだ。

あくまでもアーネストはヴィヴィアンの兄で兄の友人だ。

クラウディアと出掛けてくれるのは彼の優しさだ。

なのでこれ以上近くなる必要はないのだ。


「必要ないわ」


アーネストと今のように出掛けるのは今シーズン限りだ。

それ以降は元に戻る。

ヴィヴィアンを訪ねた時やアーネストが兄を訪ねた時に少し言葉を交わす程度に戻るのだ。


じっとクラウディアを見ていたシルヴィアが頷く。


「お姉様がそうおっしゃるのでしたらそうなのでしょう」


シルヴィアが一口お茶を飲む。


「この後お姉様は刺繍をなさいますよね? わたくしも一緒に刺繍をしても構いませんか?」


シルヴィアには先程アーネストとヴィヴィアンに刺繍入りのハンカチを贈ることを話してある。


「いいわよ」


断る理由はない。


「シルヴィアは何を刺すの?」

「わたくしもセルジュに刺繍入りのハンカチを贈ろうかと思いましたの。図案はこれから考えますわ」

「あら喜ぶでしょうね」


セルジュはシルヴィアにベタ惚れだ。

シルヴィアに一目惚れして押して押して押して婚約者にまでなったのだ。

シルヴィアの刺繍入りハンカチなど贈ったら狂喜乱舞だろう。家宝にするとまで言いかねない。


「ええ。喜んでくれなかったら困ります」


シルヴィアももちろん婚約者のことは好いていて大事にしているのだが、何故か時々ツンが出てしまうのだ。

セルジュは自分にだけとそれも喜んでいたりする。

可愛いわね、とクラウディアは微笑む。

そこでシルヴィアに伝えておかなければならないことを思い出した。


「そうそう、お昼に食べたレストランが美味しくて今度お兄様に連れていってもらうの。シルヴィアも行くでしょう?」

「まあ、是非! 次のお兄様の休みの日に連れていっていただきましょう!」

「そうね」

「お兄様の今度のお休みはいつでしょう?」


基本は五日行って一日休みのはずだが、兄の仕事は不規則だ。しょっちゅう仕事の日と休みの日が振り替えられている。

繁忙期など休みがなく、あとでまとめて休みになったりする。

どんな仕事をしているのか訊いたことがあったが「雑用だ」としか答えてはくれなかった。


クラウディアも首を傾げる。


「いつかしら?」

「お兄様が帰ってきたら早速尋ねておねだりしましょう、お姉様」

「そうね」


きっと面食らった顔をしながらも頷いてくれるだろう。

同じことを考えたらしいシルヴィアと顔を見合わせて、二人で同時に微笑(わら)った。

読んでいただき、ありがとうございました。

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