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引きこもり令嬢と呼ばれていますが、自由を謳歌しています  作者: 燈華


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買い物前の注意事項

コルム通りの端で馬車を降りた。

ここからは徒歩であちこちの店をのぞく予定だ。


「さて、どこに行こうか?」


アーネストがクラウディアとヴィヴィアンに訊く。

クラウディアには特に思いつかず、ヴィヴィアンに視線を向ける。

少し考えた様子のヴィヴィアンがアーネストに訊いた。


「お兄様、食事する店はどの辺りになりますか?」

「うん? 中央よりやや東側だな」


コルム通りは中央に噴水広場を置き、そこから東西南北に通りが延び、店が置かれている。

店の裏側には従業員の寮や職人の工房があると聞いている。

今いるのは南の端だ。


「でしたらまずは噴水広場を目指しましょう。道中で気になるお店があったら寄るということでどうですか?」

「私はそれで構わないが。クラウディア嬢はどうだい? 行きたい店があるかな?」

「今のところ思いつかないので私もヴィヴィアンの意見に賛成ですわ」

「ではそれで」


それからヴィヴィアンはアーネストを見て真剣に言う。


「お兄様、クラウディアがふらふらとはぐれないように見ていてくださいね?」

「大丈夫よ。アーネスト様の手を(わずら)わせません」

「うん、きちんと見ておくよ。ロバートにもくれぐれもと頼まれたしね」


二人はクラウディアの話を聞いてはくれなかった。


「お兄様が見ていてくださるなら安心ですね。クラウディア、好きに動いても大丈夫よ。お店に入る時は一言声はかけてほしいけれど」

「今日は大丈夫よ。ヴィヴィアンとアーネスト様と一緒に行動するわ」


今日は本当にそのつもりなのだ。

気になるものがあればヴィヴィアンたちに言ってお店に入るか、後日キティを連れて再訪すればいい。


だがヴィヴィアンは生温い微笑みを浮かべた。

さらにアーネストまでもが子供にでも向けるような優しい微笑みを浮かべて言う。


「大丈夫だよ、クラウディア嬢。ロバートから話は聞いているから」


兄は一体どういうふうにアーネストに話したのだろうか。

これは帰ったら兄に確認しなければなるまい。


「本当に今日は気をつけますから」

「そう? じゃあクラウディアを信じるわ。でも、無理はしなくていいからね? 今日はお買い物を楽しみにきたのだから」


もはやヴィヴィアンの笑みは慈愛に満ち(あふ)れていた。


「う、うん」


ヴィヴィアンとも買い物に来ることはあった。

その時に迷惑をかけたのだろう。

思い当たる節しかない。


「ごめんなさい、ヴィヴィアン。いつも迷惑をかけているわね」


ヴィヴィアンは軽く目を見開いてすぐに苦笑した。


「いいえ、迷惑なんてかけられていないわ。わたくしも楽しいし、クラウディアはわたくしの買い物にもちゃんと付き合ってくれるじゃない」

「それは当然でしょう。私もヴィヴィアンとのお買い物は楽しいわ」

「買い物は楽しいのが一番よ。だから迷惑かけているなんて思わないでいいのよ」

「ええ」


ああ、でも、とヴィヴィアンは切り出した。


「それでももしはぐれたら、中央広場の噴水のところを待ち合わせ場所にしましょう」


それはもうクラウディアのための措置だろう。

好き勝手動いてはぐれると心配されている。

そのクラウディアの気持ちを察したのだろう、ヴィヴィアンが言葉を重ねる。


「クラウディア、はぐれた時の待ち合わせ場所を決めておいたら安心でしょう? わたくしが先に行き過ぎて二人とはぐれるかもしれないし、お兄様が仕事のことを考えていてはぐれてしまうこともあるかもしれないし」

「確かに。私やヴィヴィアンがはぐれる可能性もある。待ち合わせ場所を決めておくのは安心だな」

「そうでしょうとも」


二人とも優しい。

クラウディアの負担にならないようにそう言ってくれているのだろう。


「ヴィヴィアンの言う通りはぐれたら中央の噴水のところで待ち合わせにしよう。あそこならわかりやすい。それでいいかい、クラウディア嬢?」

「はい」

「それじゃあそろそろ行こうか」


いつまでもここで立ち止まっていては通行の邪魔になってしまう。

幸い今はあまり通る人がいなかったために邪魔にはならなかったが。


「ええ」

「はい」


そしてようやくクラウディアたちはコルム通りに足を踏み入れた。


読んでいただき、ありがとうございました。


ゆっくりでごめんなさい。次回こそようやく買い物します。

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