地下牢
向こうからやってきた兵隊の一団は、関所で見たのと同様の、いろいろ混ざった軍隊だった。帽章や臂章、そして肩章なんかは明らかにわが王国のものだ。そして、そのなかで一番偉そうなのをよく見る。見分け方はわかっているのだから。それは見覚えのある男だ。確か弟の学友の、ザナンザだったか。なぜあの男がそこにいるのか。不穏を感じて、肌が粟立つようだ。まさか、という不安。しかしそれより我が身も危ない。そうして、囲まれた状態で、てっぽうを向けられたまま、卸下される。御者、というのか運転者というのか、は、なにか書類をザナンザに引き渡していた。荷受け表のようなものだろうか。虜囚など、モノと同じだ。おろされて、王城三の廓に昔からあるほとんど形ばかりの地下牢に押し込められた。
この地下牢はもっと実用性のある牢が2の廓にある以上ほとんど使われておらず、牢の格子さえ縄と竹のしょうもないもので、ある程度安堵できた。どうやらこの行先なら本格的な監禁ではないだろうという期待が抱けたのだ。
しかし、それは誤りだった。あまりにも使われておらず手入れの行き届いていない牢は染み出す地下水によって常に不快なほど湿っており、またどこからか寒風が差し込んでくる。衛兵はいつでも交互射撃のできるように配置され、てっぽうは水平に、要するには不審な動きをすれぼ即座に撃つ構えでいる。戦につかれて抵抗するでもなく、ただただ独房で呆然としている。いったんは逃げようと画策した兵隊もいたけれど、いたぶるように殴る蹴るされて、今やみな消沈している。
寒く暗いここで、目を閉じて壁にもたれて、寝てしまったふりをするようにして何も考えないようにする。兵隊たちからの陰口が染み入るように耳に入る。「お姫様だから殺されないと高をくくっている」だとか、「国を失った王家に何ができる」だとか。
私は、何もできない、何もしたくない。ただ、赦しを待つことだけが、心に住まう。
体調が爆発したのでここまでです
乾燥など頂けたら嬉しいです